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    チンジャオロース

    ワンドロとか用

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    POIPOI 12

    @dk_60min
    #dnkbワンドロライ
    お題 if

    If「負けてしまったなぁ」
     オレンジの空を見上げぽつりと呟く。
    10年間頂き続けた王冠が地に落ち、背負っていた重たいマントも、もう俺の物ではなくなった。
    ここ数日間で起きたことは紛れもない現実で、後始末の慌ただしさが去った後ダンデに残されたのはどう扱えば良いか分からない大量の時間だけだった。
    今までずっと走り続けていた。
    ずっとずっと、ひたすらに前だけを見つめて。
    沢山の人が俺のもとを去り、残ったキバナでさえ
    俺が負けてしまったばかりにあの日から新しいチャンピオンのライバルになってしまうのだろう。
    「嫌だなぁ……。キバナ君だけはずっと俺の、俺だけのライバルでいて欲しかったのに」
     もしも、あの時負けなければ
    もしも、あの時ローズさんにしたがっていれば
    もしも、キバナの言う通りチャンピオン戦を延期していたら
    沢山のもしもが頭に浮かんでは消えていく。
    やらねばいけない事が沢山あるうちはよかった。
    その全てが終わって、沢山の時間がある今、なにもすることが出来ない今、忘れようとしていた後悔や、悔しさが吹き出して心を滅多刺しにしてくるのだ。
    「いっそガラルを出てしまおうか?」
    ガラルのみんなで強くなるという夢も手放して、パートナー達と自由に旅をして……
    そうすれば俺はダンデのライバルではないキバナを見なくて済むし、俺がいなくても新しいチャンピオンがガラルを引っ張っていってくれるだろうし。
    「それも良いかもしれない」
    でも、俺がガラルを去った時だれも寂しいて思ってくれなかったら嫌だな……
    どうしよう、これから俺はどうしたらいいんだろう?
    見上げた空がいつの間にか滲んで揺らめいて、ダンデの頬を濡らす。
    「もしも……」
    「もしも……何?」
    突然後ろから聞こえたキバナの声に驚き急いで涙を拭い振り返る
    「キバナ……君、なんでここに」
    「安静第一のはずのだれかさんがワイルドエリアにいるって通報が入ってな」
    そういってキバナが俺のとなりに腰をおろす。
    「いつからいたの?」
    「…………さっき来たばっかだぜ」
    泣いていることを気付かれたくなくて、うつむきながらそう返せばそう返せば、グローブ越しではないキバナの手が俺の頬をつつむ。
    俺の顔を覗き込むキバナは淡い笑みを浮かべ
    「嘘つけ、頬っぺた真っ赤じゃねえか。しかもこんなに冷えてるし風邪ひいちまうぞ。」
    といった。
    そして俺が何かを言う前にキバナがそのまま俺を胸の中に抱き寄せる。
    温もりと、キバナの鼓動に包まれると止めようと努力していた涙が止められなくなりあとからあとから溢れてしまう。俺の涙が次から次へとキバナのパーカーに吸い込まれ、彼の胸元を濡らしていく。
    「……っキバ、キバナ離してくれ」
    そういってキバナの腕から抜け出そうとすれば俺を抱き締める力が更に強くなる。
    「やだね、絶対に離してやんねえ」
    そういって意地悪に笑うキバナが少し憎らしくなって
    「何でそんな意地悪を言うんだ」
    と言えばなんでもないように
    「だって、こんな時じゃねえとお前の弱みに付け込めないし」
    と返ってきた。
    「は?」
    「いや、普通に考えろよ。誰が好きでもないやつをこんなクソ寒いワイルドエリアに探しに来るんだよ。そこまで俺様お人好しじゃないんだけど」
    「…ぇ?」
    「なぁダンデ」
    「…………何だ?」
    「もしも……なんか考えるなよ。それにそんなこと考える男じゃないだろお前。お前はなんにだって、いつだって全力で立ち向かって、全力で走って来た男だろ?」
    「……………………」
    キバナの言葉に黙り込めば優しく大きな手が宥めるように背中をぽんぽんと叩く。
    「ダンデ……ダンデ揺らぐな。お前が成したことを、お前が過ごしてきた日々をお前自身は絶対に疑うな。もしもなんて言葉でお前の誇りを汚すんじゃない。例えお前自身だとしてもキバナの愛したお前を汚すことは絶対に許さない」
    「…………なんだよそれ」
    「それだけキバナはダンデを愛してるってこと」
    「なんだよ……っなんだよそれ。わけがわからないぜ、俺は……俺は君にそんな風に思ってもらえる男じゃないのに……俺は……」
    この先は嗚咽に呑まれ言葉にならなくて、キバナの優しさが、思いが温かくて、嬉しくて子供のように彼の大きな身体にしがみついて声をあげて泣く。
    そんな俺をみてキバナは
    「…………ははっ、なんだよその下手くそな泣き方」
    と言って、俺が泣き止むまでいつまでも、いつまでも優しく背中を撫で続けたのだった。
    どれだけ泣き続けたのだろう?
    すっかり空には星が煌めいている。
    ズッと鼻をならしキバナの腕から抜け出し空を見上げれば、同じ様にキバナを視線を空に向けた。
    「…………なぁダンデ」
    「……なんだキバナ?」
    「綺麗だな」
    「そうだな」
    「………………………………なぁダンデ」
    「……なんだ?」
    「ただのダンデになったお前は明日から何になるんだろうな。ただのダンデってことはさ、何にも縛られてないってことだろ?」
    「………………」
    「なぁダンデ」
    そういってキバナが立ち上がり星空に手を伸ばす。
    「お前、今ならなんだって出来るし、なんだって掴めるんだぜ?例えばあの星だって」
    楽しみだな。明日からのお前が何になって、何をなして、何を掴むのか。
    そういって笑うキバナを見上げ、そっと手を伸ばし開いている方のキバナの手を握りしめる。
    そして驚いたような顔をしてこちらを振り返ったキバナに
    「じゃあ俺は……俺は君の隣に立てる男に、君にふさわしい男になりたい。いや、絶対になってやるから待っててくれ」
    と言ったのだった。














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