2人だけの世界?全年齢向け「……うおお、すっげぇ!部屋広っ!」
脱いだ靴を揃え、玄関に荷物を置いてから辺りを見回すとトウマは目を輝かせた。どうやらお気に召したようだ。虎於は内心ほっと胸を撫で下ろす。数ヶ月振りに丸二日間のオフが被った二人は、御堂家が所有する別荘を訪れていた。
「ここはそこまで広い方じゃないんだけどな」
「俺からしたら十分広い方なんだって!うわ縁側まである、田舎のばあちゃんち思い出すな〜」
屈託のない笑顔ではしゃぐトウマを見て虎於も頬が緩まる。車で行ける場所でなおかつ庶民のトウマでも心が安まるところにしようと選んだのは、関東にある小さな日本家屋風の別荘だった。数多くある御堂の別荘でもここまで規模が小さくしかも和室造りのものはここしかないので、なぜ作ったのか幼い頃祖父に尋ねたら、祖母の好みなのだと答えてくれたことを虎於はよく覚えている。五人家族の御堂家で訪れることはあまりなかったが、やはり和室特有の落ち着きがあり、虎於も結構気に入っていた。
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