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    支部作品(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20116054)のR部分を消去して掲載します。

    #虎トウ

    2人だけの世界?全年齢向け「……うおお、すっげぇ!部屋広っ!」
     脱いだ靴を揃え、玄関に荷物を置いてから辺りを見回すとトウマは目を輝かせた。どうやらお気に召したようだ。虎於は内心ほっと胸を撫で下ろす。数ヶ月振りに丸二日間のオフが被った二人は、御堂家が所有する別荘を訪れていた。
    「ここはそこまで広い方じゃないんだけどな」
    「俺からしたら十分広い方なんだって!うわ縁側まである、田舎のばあちゃんち思い出すな〜」
     屈託のない笑顔ではしゃぐトウマを見て虎於も頬が緩まる。車で行ける場所でなおかつ庶民のトウマでも心が安まるところにしようと選んだのは、関東にある小さな日本家屋風の別荘だった。数多くある御堂の別荘でもここまで規模が小さくしかも和室造りのものはここしかないので、なぜ作ったのか幼い頃祖父に尋ねたら、祖母の好みなのだと答えてくれたことを虎於はよく覚えている。五人家族の御堂家で訪れることはあまりなかったが、やはり和室特有の落ち着きがあり、虎於も結構気に入っていた。
    「そんなにはしゃいでもドッグランはこの辺りにないぞ」
    「犬じゃねえ!」
     ガウッという鳴き声まで出そうな勢いで吠えるトウマに笑ってキスを落としたら、それで許されようとすんなと怒られた。最も、その顔は朱に染まっていて言葉も先程と比べたらかなり弱々しかったので絆されているのがバレバレである。
    「と、というか!掃除とかしなくてもいいのか?まぁ、必要ないくらい綺麗に見えるけど」
     あからさまに話題をすり替えたトウマをもっとからかいたい気分ではあったが、これ以上は本当に機嫌を損ねてしまいそうなので抑えた。貴重なオフの時間を喧嘩に割く程、虎於は物好きではない。ここはトウマに合わせてやる。
    「ああ、使用人が昨日の家に掃除してくれたからな。」
     そもそも普段あまり使われていない別荘でも、定期的に手入れはされている。そこら辺の心配はしなくてもいいだろう。最も、掃除しないといけないとなったところで二人に完遂できるのかは不明だが。なんてことを考えていたら、トウマの腹が盛大に鳴る。
    「……悪ぃ、腹減って」
     と照れくさそうに笑うトウマに、虎於も思わず控えめな笑い声を漏らした。
    「確かにそろそろ昼食時だな。外行くぞトウマ。近くにいい店がある」
    「そしたら飯食った後ちょっと散歩しよーぜ。この辺見て回りたい」
     いいな、とトウマの提案を受け入れて帽子を被り、外に出てから虎於はトウマの手を取った。トウマは最初は戸惑っていたけど、人が来たらすぐ離すからな、という条件付きでそれを許した。

     散歩から帰ってくる頃には、午後の二時半になっていた。畳の上で胡座をかいてスマホを眺めながら、トウマは思案する。
    「んー、どうするトラ。またどっか行きたいとこあるなら着いてくしここでゆっくりしても……」
    「……トウマ」
    「ん?……っふ、ぁ」
     ふいに虎於に唇を奪われた。そのまま熱い舌が侵入して来て、粘膜を舐めとるように口内を弄ばれる。今日の最高気温は30度になると朝の天気予報で聞いた。この茹だるような暑さの中舌先を絡めていると、このまま溶けて一つになってしまいそうな感覚に陥る。息が苦しくなってきたところで解放されたのもつかの間、そのままに押し倒された。虎於はトウマの手首を畳に繋ぎ止めるように掴んで、耳に舌を這わす。
    「っんっ……は、トラ、今からやんの……?」
    「……嫌か」
    「そういうわけじゃねぇけど……。まだ明るいから人通ることもあるだろ。ここじゃ声聞こえるかもしんねぇし……。」
     せめて寝室行きたい、と言い終わる前に、トウマの太ももに虎於の硬くなったそれが当てられる。
    「ぅ……勃つの早……。」
    「しばらくここにいるけど人なんて滅多に通りかかってないだろ。そんな見ず知らずの人間より俺を気にしろ」

    〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

     チリン、と縁側に吊るされた風鈴が鳴るのをトウマは深呼吸しながら横目で見つめる。その音は、先程までの情事の熱を一切感じさせない涼やかさだった。
    「……ふは、すごい跡付いてるな」
     虎於がすり、とTシャツの袖に指を入れて畳の跡がくっきり残ったトウマの肩を撫でると、トウマはがばりと起き上がって虎於の手を振り払った後に、自身を抱きしめるかのように両手をクロスさせて肩を守った。
    「っおまっ、誰のせいだと思って……!」
    「悪い悪い」
    「は、反省の色が見えねぇ……。」
     からからと楽しそうに笑う虎於とは真逆のげんなりとした表情を浮かべるトウマに、事後の色気なんてあったもんじゃない。そんなところも愛おしくて虎於は彼を後ろから抱きしめ、もう一度悪いと呟く。二回目の謝罪で許して貰えたのか、今度は腕を振り払われなかった。
    「……まぁ、明日絶対背中と腰痛いだろうけど、俺も結構乗り気だったし。今回は許してやるよ。」
     虎於とトウマは同性にしては身長差があるが、それでも筋肉量では大した差はないと思っている。押し倒された時点で抵抗なり寝室に逃げ込むなりすることはできただろう。でもしなかった。できなかったと言うよりは、しなかったと言う方が正しい。つまりはそういうことなのだ。というか、行為の後半はむしろトウマの方がノリノリだったので、本当に文句は言えないのである。
    「にしても今日のトラ、いつにも増してスキンシップ激しいな」
     こんなあっちーのに、とトウマは着ているTシャツの襟元を掴んで扇ぐが、虎於から離れようとはしない。なんやかんやで虎於の甘えたな部分に弱いのだ。受け入れられている、許されている。それが実感出来て、虎於は息をゆっくり吐いてからトウマの首筋に頭を擦り付けた。
    「……トウマと、二人で暮らしたらこんな感じなんだろうか、って考えたら、ずっと触れていたくなった」
    「お?おー……。そっか……。」
     会話が止まり、風鈴の音だけがやけに部屋に響く。今この家にはもちろん二人しかいない。それはお互いの家に泊まる時だってそうなのだが、別荘という日常から少し離れた空間が、その感覚をより強くしていた。少し古い言い回しだが、二人の愛の巣、という言葉は割と言い得て妙なのかもしれないと虎於は思った。祖母のために祖父が作ったこの別荘。父も新婚時代に母と何度か訪れたことがあると言っていた。そして今は虎於がトウマを連れて来ている。ここは、生涯かけて大事にしたいと思う人が出来たら来るべき場所なのかもしれない。そんなジンクス聞いたことないが、少なくとも虎於はそう思った。長い沈黙の果てに、ここはいい所だな、と虎於が呟くと、トウマはその言葉の真意を何も理解していない顔でああ、連れて来てくれてありがとな、と笑った。そうやって事後の甘ったるい時間を楽しんでいると、トウマがもぞもぞと太ももを擦り合わせ始める。
    「……なぁ、トラ」
    「ん?」
    「……その、俺の勘違いじゃなければ……まだ足りない?」
     当たって、るんだけど……。と蚊の鳴くような声で呟くトウマに虎於は罪悪感を抱いた。最悪だ。
    「……悪い。嫌だったよな。一人で抜いて来るからトウマは休んでてくれ」
     そう言ってトイレに向かおうとする虎於の腕をトウマが掴む。
    「ちがっ、そうじゃなくて……!その、俺も、まだそんな疲れてないから……。」
     だから、もう一回シよ。そう恋人に言われて断れる程、虎於は自制心の強い男ではなかった。

     翌朝、虎於が目を開けると、隣で眠るトウマの肩には、少し薄くなってはいるものの未だに畳の跡が残っていた。実を言うと虎於にもちょっと付いている。あの後トウマが「俺だけ床で腰痛めるとか納得いかねー」とかなんとか言って、虎於を押し倒して上に跨ってきたのだ。騎乗位なんて滅多にしないから最初虎於はかなり面食らったが、まぁ、自分の上で腰を振って乱れるトウマを眺められたのは、悪くなかった。むしろ良かった。もう一回やってくれと言ったら怒るだろうか。その後は汚れと汗を落とす為に風呂に入ってトウマの身体を眺めてたらまたムラムラしてきて抱いた。そして夕飯と朝食の買い出しに行って食事をとった後に寝室でもう二……三回はヤッて、また汗をかいたからシャワーを浴びて就寝し、今に至る。
    「ん……トラが先に起きてんの、めずらしーな……。」
     朝からそんな邪なことを考えていたら、トウマが目を覚ました。確かに夜型の虎於が朝型のトウマより先に起きていることはかなり珍しい。珍しいが、無いことは無いのだ。特に今回のように、ちょっと盛り上がりすぎて何ラウンドもしてしまった次の日は。おかげでトウマは今もまだ覚醒しきれていないし、主に下半身が重だるい。まあ、何回かはトウマの方から誘ったのだけれど。まだ眠ぃ、とトウマがごろごろと寝返りを打ち続けていたら、頭上から一回止まれ、と虎於のテノールが振ってくる。なんだなんだと思いながら大人しく動きを止めると、手を掴まれた。
    「トウマ。これ」
     チャリ、と金属同士が擦れた音がして、トウマの手のひらにそれが乗せられる。手に持って正体を確認すると、それは家の鍵だった。だけどここのものでは無い。どういう状況か分からず首を傾げていると、虎於が痺れを切らしたように口を開いた。
    「相変わらず察しが悪いな。……俺の家の合鍵だ。」
    「へぇー……ってトラの家の合鍵!?」
     突然大声を上げたトウマに虎於は驚き、うるさいと自身の耳を両手で塞ぐ。
    「わざわざそんなにデカい声で復唱することじゃないだろ。……いらなかったか」
    「っいや、そんな訳ないだろ、めちゃくちゃ嬉しいって!なんか実感湧かなかっただけで……。」
     蘇芳色の瞳を輝かせながらトウマは貰った合鍵を指でつまんでまじまじと見つめる。まるでクリスマスプレゼントを開けた時の子供のような反応に、虎於は思わず顔を綻ばせた。
    「そうか、なら良かった。……今度から、いつでも来ればいい」
     くすりと笑って親指でトウマの頬を撫でると、トウマもまた笑みをこぼした。
    「トラから、『もう来んな』って言われるくらい使ってやろーかな」
    「安心しろ、そんな日は来ない」
    「…………そっか……。」
     大事にするよ、とトウマは優しく微笑んで虎於の頭を撫でた。幸せだ、そう思いながら。

     その後は、
    「そういえばトラの家さ、確かに普通の鍵穴もあるけど基本カードキー使ってんじゃん、なんでこっち?」
    「……鍵の方が、なんかいいだろ」
    「トラって結構ロマンチストだよな」
    「悪いか」
    「はいはい、ロマンチストなトラもかっこよくて好きだよ」
     なんて言い合いながら、二人で朝ごはんの準備をした。

     そして、虎於がトウマから合鍵を貰うのは、そのオフからおよそ一週間後の話。

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