攫い、攫われ①花散らしの雨が降る晩に、あと数日で卒業式を控えた森が、その日には桜は散っているだろうなとか、読むことになってる答辞のことを考えながらコンビニ帰りの夜道を歩いていて、
すれ違った車に見知った顔がいた気がして振り返ると、黒いセダンがカチカチとウインカーを出して山道に入って行った。
芹沢が死んだのは……いや殺したのは、土方の派閥の中では周知の事実だ。
裏で反社会的勢力との深い繋がりがあると裏が取れ、"町の治安を守る為"止むを得ず殺害した。政府との繋がりもある為、容易に逮捕はできない、こうするしかなかった。
「おいおっさん、こんなとこで何してんだ?」
雨が強くなってきた。ここなら散った花弁が誤魔化すだろうとあまり目立たない桜の木の下に穴を掘り、芹沢の死体を放り込んだところで背後から呼び止められた。
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