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    yoshida0144

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    yoshida0144

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    たきてるとやまちゃん
    やまちゃんはモブじゃねえよ!(店長)

    メイビーベイビー しぱしぱする目に目薬をさした。おかげで多少マシになったけど今日は朝からずっと眠い。母さんが大人買いした少女マンガ全30巻を夜ふかしして読んだせいだ。普段は野球マンガしか読まないけど「やだこれウェェエ」と泣きながら読む姿につられてとりあえず一巻だけと手を取った。そこから一気読み。おかげで夜更かしと流した涙で目がパンパンです。
     あ〜主役のふたり、最後どうなるかと思ったけどくっついてよかったなあ。僕もあんな恋がしたいな。
    「山田先輩そちら引き取りますよ」
    「ありがとう瀧くん」
     余韻に浸っていると正面から現実に引き戻す声が聞こえた。そうだ、ここは男臭い野球部の部室で今は後輩の瀧くんと一緒に当番としてスコア表の整理の真っ最中だった。真面目な瀧くんは自分の持分を終えて僕の担当分に手を伸ばした。
     ちょっと変なところ(主に水をかぶる点)はあるけど真面目で優しい瀧くん。冷静で落ち着いていてモテるのもわかるな。彼女さん7人だっけ。全員小手指なのかな。こっそりチラチラ眺めているとムクムク興味が湧いてきた。
    「ねえ、瀧くんって今まで何人くらい付き合ったりしたの?」
    「え?」
     突然の僕の問いかけに瀧くんはちょっと大きめの声をあげた。
    「あっ、いやごめん。こんなこといきなり聞かれたら驚くよね」
    「いえ……」
    「瀧くん優しいな〜って思って!僕、恥ずかしながら今まで恋人いたことないから、ちょっと気になっちゃって」
     「ああ、いえ大丈夫です」
     過去に苦しいウソをついたチームメイトたちを思い出す。ここは正直に答えるのが正解なんだ。要くんなんていまだにカンボジアの国民性について調べてるし。
    「そうですね……2桁ほどですね」
    「うわあすごい!さすがだね」
    「そんなことないです。最後は必ず自分が振られてますから」
    「え?全員?」
    「はい」
     苦笑いで返す表情には哀愁すら漂っていた。いやいや俄かに信じられない。7人の恋人を平等に愛して全員の理解を得ているのは只者ではないぞ。世にいう「スパダリ」ってやつではないですか。そのスパダリが2桁の彼女に振られているという。シパシパしたいた目をギラギラさせてつい、つい理由を尋ねてしまった。下世話な先輩でごめん。2回目の詫びを告げると瀧くんはまたふんわり笑って大丈夫ですよ、と答えてくれた。
    「気になりますよね。えっと……ちょうど去年別れた彼女はたまたま照夜と誕生日が同じ日だったんです」
    「ふむふむ。え?陽ノ本くん?」
    「はい。照夜の誕生日は必ず一緒にケーキを食べるんです。毎年のことなので彼女とは別の日にお祝いするつもりだったのですが、『いいの、仕方ないよ』と言われて振られました」
    「あ、そっか……そうだね」
     まあね〜。いくら親友の誕生日といえど彼女の自分を優先してほしいよね。瀧くんは友達想いだし仕方ない、のかな?
    「その次の彼女は照夜の紹介で付き合いました。照夜っていう共通の話題があり3人で遊ぶこともあったのですが『私よりてるくんのこと詳しいね。大事、なんだね。悔しいな』って振られました」
    「お、おう……」
     あ〜すっぺええええ!幼馴染をとられた気持ちと彼氏への気持ち両方つらかったんだね!3人で遊んで微妙になるのあるあるだよ。2人だけやたら距離近かったりしてさ……ん?この場合の2人って瀧くんと元カノさん、だよね?ん?
    「あと実は最近1人別れたんです」
    「あ、そうなの!?ごめんねツライこと聞いちゃって」
    「いえ……その彼女はよくわからないですが、先月照夜がインフルになったじゃないですか。俺、毎日見舞いに行ってしばらく彼女に会えなかったんです。そしたら『いいの、陽ノ本くんには勝てないや』って振られました。照夜に勝つって彼女は野球しないので謎なんですが……」
    「んんんん?」
     そういえばそんなことあったかな。部活が終わると瀧くん急いで帰るなと思ってたけど陽ノ本くんのお見舞い行ってたんだ……神奈川まで!?往復でも結構かかるぞマジか!
     というか理由が全部陽ノ本くんじゃないか!?確かに2人はうちの天才バッテリーに負けず劣らずニコイチだけど、これは……。頭が混乱の最中にいるとトントンと部室の扉をノックする音が聞こえた。
    「おーい瀧まだか……あっ山田先輩すみません!」
     扉が開いて陽ノ本くんが顔を覗かせた。一緒に帰ろうと待っていた瀧くんが遅いから迎えにきたのだろう。
    「大丈夫だよ。僕が手伝ってもらってただけから。瀧くんありがとう。あとは僕がやるから先帰って」
    「いえ自分も手伝います!……った」
    「あ」
     僕の目の前に残ったスコア表に手を伸ばした陽ノ本くんが小さく声をあげた。紙で指を切ってしまったらしい。痛々しい赤い血がぷっくり膨らんでいる。
     その瞬間、瀧くんの手が目の前を通り過ぎた。陽ノ本くんの手を取ったかと思えば南天の実をのせたようなその指先を一片の迷いもなく自分の口に含んだ。
    「へ?」
    「ほんと抜けてるな。ほらこれ貼っとけ」
    「うるせーよ」
     ペロリと舐めて口を離し救急箱から出した絆創膏を陽ノ本くんに渡す。さすがリアルアラブの王。ジャパニーズ一夫多妻。友達にまでスパダリモーションしちゃうのか……って!
    「…………っ」
     陽ノ本くん顔真っ赤!血が出たの指だよね?ああ慌ててるからせっかく渡された絆創膏ぐちゃぐちゃになってる。僕がもう一枚渡す?そこ野暮?
     目の前にスパダリとスパダリに翻弄されるヒロインがいる。ヒロイン男だけど、あ〜すっごいあまずっぱ〜い。男くさいむっさい野球部員だけど、たまにはこういうのもいいな。あれ?でもこれって……。 
    「なにこれ僕めちゃくちゃモブじゃん!!」
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