メニューをひらいて 全体的に大雑把でひやひやしたものの、確かに基本はできているのだった。一応それなりに。賢者の魔法使いに選ばれて、初めて顔を合わせた頃を思うと感慨深いものがある。カインはしみじみと嬉しい気持ちで無茶苦茶な「店員」を見上げた。
北の魔法使いであるミスラは、突然に気まぐれを起こして殺し合いをしてばかりいた。この男のコミュニケーションといえば和やかな会話を交わすのではなく戦闘で相手を叩きのめすことだったのだ。
そのミスラが、丁寧さとは程遠く、現在シャイロックの元で接客中のオーエンを褒めるようなことをヒースクリフはカインが口にしたから対抗心を燃やしたのが理由とはいえ、店員の真似事を「これくらいできます」と得意げにやってみせるのだから信じられない。丸くなった、なんて表現すれば嫌がるだろうけど、明らかに変わった。本人からすれば複雑かもしれないものの、いい方向に変化した。
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