初めの1枚は3人揃ってその日、ロナルド吸血鬼事務所は久しぶりに定休日となっていた。
「事務所使っちゃって良かったの?」
ロナルドの誕生日だからパーティーしようと先週カメ谷と半田からLINEが送られきた時、ロナルドはまた騙されるのか?と不安に思ったが杞憂に終わった。集合場所は遊園地で遊んでから夜にどこかでパーティーしようという計画だった。
その日は定休日にするからと事務所でパーティーにしようと提案したのはロナルドだ。
「いいんだよ、ドラルクもジョンも今日出かけてて居ないし」
「床下の副隊長も仕事があるから居ないぞ」
「そもそも床下に部屋がある事に対してはツッコミしないからな」
ドラルクが作り置きしていった料理を机に並べパーティーの準備を3人で進めていく、ロナルドは半田へ誕生日パーティーの反省を生かし、ミラーボールは封印した。
「2人が買ってきたケーキはどうする?」
「あれはアイスケーキだから食べる時まで冷凍庫かな」
「既にケーキは冷凍庫に冷やされているぞロナルド!」
「俺が把握するより先に行動されてる……でも、今回は勝手に冷凍庫使った事に対しては不問にする」
まだまだ暑い日が続く、アイスとケーキが合わさっているなら最強だなとロナルドはウキウキしながら席に着いた。
「「ロナルドお誕生日おめでとう」」
「あ、ありがと」
ロナルドは2人から祝わわれる事が分かりきっていたのに少し気恥ずかしくなってしまった。
「もっと喜ばんかバカめ」
「なんだよ、気恥しいんだよ」
「この歳になってちゃんとしたパーティーしようとかあんまりないしな」
ほら半田の誕生日の時は面白誕生日パーティーだったしとカメ谷はその日の出来事を思い出して笑っていた。
「あれは……あれはなんだったんだろうな」
主催したロナルドでさえ自分の奇行に関してよく分からなくなっていた、あの時の自分はどうかしていたのだ。
「俺は貴様の醜態が見れて嬉しかったが?」
「それはお前が特殊なだけだろ」
「あれは連写するほど面白かったと思う」
「カメ谷」
いつもの居酒屋で話してる時と同じなんでもない会話が続いた、3人で話しながら食べているとあっという間にドラルクが作った料理が無くなった。
「そろそろアイスケーキでも出してくるか」
「おー、よろしく……って半田!お前ケーキにセ%&"@とかし込むなよ」
「俺が見はるから大丈夫だって、ロナルドは待っててな」
半田とカメ谷はアイスケーキの準備に冷凍庫のある住居の方へ向かった、ケーキが楽しみなロナルドはまたソワソワしながらセ%&"@が出てこない事に疑問を感じていた、これまでの経験上半田がロナルドに会う日にセロリを仕掛けない事は真面目な仕事以外では無かった、ロナルドの誕生日といえど仕掛けてくる可能性はある。
ロナルドは立ち上がり警戒態勢に入った、きっと2人の事だからアイスケーキの上にセロリチョコ等載せているに違いない。
しかし、ロナルドの予想は外れていた、事務所の方に入ってきた2人は普通のアイスケーキとどこかに隠していたプレゼントを持って入ってきた。
その様子にロナルドは中腰の警戒態勢でポカンとしてしまう。
「フ、ハハハ、な、何をしているのだロナルド」
片手にプレゼントを持った半田は器用に片手でロナルドの写真を撮り始めた、今日一の満面の笑みだ。
「う、うるせーー半田が準備するって言うからセ%&"@が出てくるかと思ったんだよ」
「いや、俺が見てるっていったじゃん」
「そうだけど……うぅ」
「貴様のそのマヌケな姿、撮ってやったわ」
「あーーもーほらアイスケーキ食べようぜ」
「はいはい」
アイスケーキの箱を開けてロナルドは目を輝かせた、小ぶりだが好物のミントアイスのアイスケーキに"お誕生日おめでとう 木下日出男くん"と書かれたチョコプレートが乗っている。
「アイスケーキ頼めるお店にミントアイスのケーキを特別に作って貰ったんだけど、どう?」
「プレート部分はチョコバナナ味にしたぞ」
「なんで半田が偉そうなんだよ……めっちゃ嬉しい早く食べよう」
「あ、その前にプレゼント渡すから待ってロナルド」
「アイスケーキは室内気温で5分解凍と書いてあったぞロナルド」
「2人とも先にそれ言えよ」
「まぁまぁ、ほらロナルド俺らからの誕生日プレゼント」
カメ谷と半田から渡されたのは厚みのあるフォトアルバムだった。
「これ開いて大丈夫なやつ?」
「大丈夫、大丈夫セロリ仕掛けてないの確認済だしこれは見て楽しむものだから」
「見て楽しむ?」
フォトアルバムの始めの数ページは高校時代の写真だった、カメ谷が撮った写真以外にもある様で3人で写っている写真が何枚かある。
「この頃の俺たちバカだったよな」
「今でもだろう」
「今でもだな」
「"俺たち"って言ってんだから2人もだからな」
高校時代の写真の後は新人の頃からロナ戦を出し始めた頃のロナルドの写真、これは週バンでボツになった写真が入っているからこれはカメ谷が撮ったものだろう。
「わ、懐かしい」
「この時の週バンの売上良かったやつだ」
ドラルクと組む事になった時の週バンの写真の次のページからは3人の新横怪異ハンティングの写真だった。
「ねぇ、この写真のあっちゃんはいつものあっちゃんだよな?」
「多分、そうだろう」
何も見えないけど黙っておこうとカメ谷は心の中で呟いた。
「「マッシーくん探しの時だ」」
「マッシーくんおじさんだったよな?」
3人で怪異探しを始めたてからまた3人での写真が増えていた。被写体のロナルドと半田だけのものも多いがカメ谷も自分自身にカメラを向けたり3人で撮ったりしている。
「この間の半田の誕生日のもあるんだな」
「原出とイタンカとの5人の写真だし入れたかったから」
半田の誕生日の後の数ページは何故か黄緑色に縁取られていたそういうページの作りなのかと疑問も抱かずページをめくるとロナルドの変顔と醜態写真があった。
「そこからは俺セレクトの貴様の変顔、醜態写真の数々だ」
「この数ページ全部かよ無駄な事すんなや」
「あ、セロリは写ってないから安心しろよ〜」
「いや、面白がってないで半田の暴走をとめてよ」
数ページの変顔、醜態写真の後はまた縁どりが白色に戻っていた、まだ写真は入れられて無い。
「ロナルド、このアルバムいっぱいになるまで3人で新横怪異ハンティング続けるからな」
「俺も貴様の醜態写真をこれからもとり続けるわ」
「カメ谷のお誘いは嬉しい?……嬉しいけど半田は撮らなくていいからな」
これからも3人で思い出を撮ってアルバムに写真を増やしていくのだとロナルドが嬉しく思ったのは本心だ。
「じゃあ、今日の記念に3人で写真撮るぞー」
「あ、アイスケーキそろそろ食べないと」
「ウム、そうだな」
「じゃあ切るぞ〜」
後日、アルバムの新しいページには3人の笑顔の写真が追加された。