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    ひぽぽぽ

    @happyhppp

    ルシアダ小説とか、ごくたまにイラストとか描きます。

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    ひぽぽぽ

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    ーーー注意ーーー
    この小説は、同じ出だしから始まる二つのルートのリレー小説です。
    書き手が変わる所には***のマークを置いています。
    ひぽぽぽ→茶筌さん→絵ろうそくさん→ひぽぽぽ→茶筌さんの順で書いています。
    完結しました!どうぞ。
    ーーーーーーーー

    #ルシアダ

    甘い残り香(塩味)アダムはとっくに起きていたがベッドから起き上がれずにいた。
    体が痛いからとかそういう問題ではない。
    ルシファーとやってしまった精神的なダメージで自己嫌悪に陥って動くことができない。
    しかも思い返せば、酒の勢いにまかせてかなり自分からグイグイ行った。
    「うぐ、ゔうううう……!!!!」
    意味もないのに唸ってしまう。
    当然の如くルシファーはいないし、いたはずのところはひんやりと冷たい。
    ああせめて、せめて朝までいろ!
    一夜を共にした最低限のマナーじゃないか!?
    あまりしっかり覚えていないが致したはずだ、胸元に絶対にルシファーのものであろう歯形がくっきりついている。

    ***

    「イッ、」

    それは体を起こせば明白で、アダムは怠そうな声を出しつつ床に散らばった服を拾い上げた。
    瞼が重くて視界が悪いのはきっと寝不足のせいなのだろう。
    ベッドサイドの時計は12時を指している。
    鉛のように思い頭を抑えながらアダムはラウンジへと歩き出した。
    もう直ぐ信頼エクササイズが始まる時間なのだ。

    さて。
    運命に愛されているというか、嫌われているというか。アダムの目の前にはあのルシファー・モーニングスターがいた。娘とイチャイチャしながら屈託のない笑顔を浮かべている。
    どのツラ下げてここに来てンだ…と、モヤモヤしつつ仮面越しに見つめていれば、誰かがアダムの肩をポン、と叩いた。
    悲鳴をグッと堪えて振り返れば、立っていたのはエンジェルダストであった。

    「なんだ。気安く触るな」
    「ンッン〜これはおめでとうっていうべき?」
    「は?」
    「でも少なくともアンタ、昨日王様と…ム!!」

    エンジェルが言いかけた途端、アダムは力一杯彼の口を抑えつけた。それからもの凄く剣呑な目つきで「黙れ」と低い声で言う。
    しかしこれではエンジェルが言いかけたことが全て事実であると証明しているようなものであった。

    「え!?アダム何してるのよ!喧嘩!?」
    「え…アダム?」

    この様子を見たチャーリーがキンキンの声を出しながらアダムとエンジェルの間に入った。「違うよチャーリー。大事な話をしていたんだよ」と言いながらエンジェルがウィンクをして離れる。
    この時にはもうアダムは顔を真っ赤にしていて、口をわなわな震わせていた。しかし仮面のおかげでその〝表情〟がバレることはなかった。

    「何やってる。娘の手を煩わせるな」

    左斜め下から低い声が響く。
    アダムはドキッとしつつ顔を斜めに向ければ、紅く鋭い瞳が向けられていた。

    「話しかけるなゴミ。だるま落としみたいにお前の脊椎をぶち抜くぞ」
    「はー、今日も元気そうでよかったよ」

    ルシファーが帽子の蛇を撫でながら言う。
    アダムはグアッと怒りがわき、猫背になって「なんだその言い草は!」と怒鳴りつける。

    「元気そうってなんだ!?昨日のことがあったとしても、私は何でもないし…お前がどんなつもりだったとしても…」

    それは考えるよりも前に、慌てて言いはじめたため、途中で喉が震えて声が引き攣ってしまった。だんだんと言葉尻が小さくなり、モゴモゴと声が篭って聞き取りづらくなる。
    しかし馬鹿なので、アダムは言葉の代わりにジタバタ音を立てて怒りを表現した。そのせいで辺りが何だ何だと鎮まって二人に目を向けはじめた。

    「ハァ〜〜〜…」

    ルシファーは深く長いため息をついて帽子を直しながらアダムを見つめる。
    そうして仮面に写る瞳を見ながら

    「なァ。たった一晩寝ただけで意識されても、

    〝困るんだが〟」

    面倒くさそうに顔を顰めながら言った。
    それは周りに聞こえないぐらいに、ヒソヒソとした声であったが、アダムにはこれが試合終了のゴングぐらいよく響いたのであった。

    ***

    アダムはラウンジを飛び出して厨房に篭った。

    〝困るんだがーー〟
    〝困るんだがーー〟
    〝困るんだがーー〟

    ルシファーのつれない言葉が脳内に反響し、それにイラつく自分にもイラつき、アダムは冬眠できない熊のように厨房を歩き回った。適当に戸棚を開けたり閉めたりしていると、インスタントの塩ラーメンがあったので作ることにした。手鍋に水を入れて火にかけ、その間に冷蔵庫から白菜を取り出して刻んでいく。体を動かしていた方がおかしな考えに引きずられなくて済むのだ。
    「悪い子、何作ってるの?」
    背後から稚い声が上がる。アダムの身体はぎくりと総毛だった。今だにこのチビに背後を取られるのは怖い。
    「……急に声をかけるな」
    薄桃色のパジャマに、昆虫を模した人形を右手にぶら下げたニフティーが立っていた。いつもは誰よりも早く起きてチャキチャキ立ち働いているのに、珍しく寝坊した様だった。鬼灯色の単眼がアダムの手元をじっと見つめる。
    「ねぇ、何作ってるの」
    「……塩ラーメン、だけど」
    「ふぅん」
    再びニフティ1は押し黙る。こうなっては言うべきことは一つだった。
    「お前も食う?」
    「いいの?それ、一人分でしょ?」
    わざとらしく小首を傾げる姿に、アダムは思わず笑ってしまった。
    「いいよ、ダイエット中だから」
    「やった!バター入れて!白髪葱も」
    「はいはい、お椀持ってこい」
    ニフティーはスリッパをパタパタ言わせて、彼女専用の小花を散らしたお椀を取りに言った。

    「いただきます」
    ニフティーは箸を器用に使ってラーメンを啜っている。自分を後ろから刺した小悪魔と向かい合って食事をするようになるなんて、天国でふんぞり帰っていた頃は考えもしなかった。ほんの少し牛乳を垂らしたラーメンスープはアダムの心のように薄曇り色だ。
    「なんで一人でご飯作ってたの?」
    小悪魔がラーメンを食べながら聞く。
    「……クサクサしてたんだよ。そういうときは、動いてた方がいいから」
    「何でクサクサしてたの」
    仮面を外したアダムの瞼が少し揺れる。
    「なんか…ある人を困らせちまったというか……でも、あんな言い方しなくてもいいじゃんというか」
    「うん」
    「確かに酒入ってたし、ちょっとグイグイ行きすぎたかもしれないけど…向こうも乗り気だった筈だろ?なのに、まるで私をウブなガキみたいに扱って」
    小悪魔相手に何を言ってるんだと思いながらも、不思議と言葉はどんどん出る。
    「で、ボソっと、困るんだがってさ。無いんじゃないのそりゃあってさ」
    気が付けば、ニフティーは小さいお椀のラーメンをすっかり食べ終わっていた。アダムは急に恥ずかしくなって慌ててラーメンを啜った。

    「アタシなら、ワクワクするけどな」
    「えっ?」
    思わぬ言葉に、アダムの箸が止まる。話聞いてたのかコイツ。
    「アタシ、困ってるトコロみるの大好き。ボスがね、『困りましたねェ、ニフティー』なんて言うと、もう面白くなってきた!って、もっと困らせたくなるの」
    ニフティーは話しながら手際よく自分の箸とお椀を洗っていく。
    「トクに、好きなひとなら、なおさら」

    すっかり片付けを済ませると、ニフティーは弾むように厨房の出口へ向かった。
    「ラーメン、ごちそうさま!悪い子もがんばってね」
    バタン、と厨房の扉が閉まる。アダムの視界には、緋色の残像がまだチラついていた。
    「……そっか、いいんだ、困らせて」

    ***

    リビングに戻れば当然ながらエクササイズは終わっていて、ルシファーはもう居なかった。チッと大きく舌打ちをすると、カウンターで足を組んで座っていたエンジェルが振り向き、ウワッと気まずそうな顔をする。
    「お、おかえり〜…」
    「ルシファーは帰ったのか」
    「あ〜〜、うん、そう帰った。なんかその、ごめんね?」
    「何がだ」
    「いやほら、おめでとうじゃなかったみたいだからさぁ?」
    「…黙れと言っただろう。次は殴るからな」
    「だからごめんってば、痛っ!」
    宣言通りエンジェルの細い肩を殴り、アダムは怒りを露わにドカドカとホテルから出て行った。

    酔った私を抱いておいて、隣にもいなくて、その上意識されても困るだと?何様だ!?
    あんな屈辱的なことを言われて、なぜ私が引かなきゃいけない!
    考えれば考えるほど腹が立つ。
    ああ言えば私が傷ついて引くとでも思ったのだろうか。
    「……、っ、ふざけんなよ……」
    ほんの一瞬悲しくなって、でもすぐに怒りで塗りつぶした。

    ーー

    ルシファーは大変イラついていた。
    昨夜はチャーリーから助けて欲しいと連絡があってホテルに行ったのだが、アダムがベロベロに酔っ払ってロビーを占拠し、通るもの全員に絡みまくっていた。
    もちろん私も被害を受けている。
    アダムは私を見るなり甘えるように抱きついてきて、チャーリー含めホテルの者たちが全員居るのにメチャクチャに迫ってきたのだ。
    「はぁ〜〜〜……っ」
    早急にアダムを客室にぶち込んでベッドに乗せてやったのだが、帰ろうとするとグズって離して貰えず、ぐいぐいと体を密着させられて……結果あぁなった。
    熱いくらいの体温やサラサラの皮膚の感触が生々しく残っている。私は悪くない!

    ドンドンドン!
    「何だうるさいな!!」
    門の方から乱暴にドアノッカーを鳴らす音が聞こえたが無視していると静かになり、直後にドカンと爆発音がした。
    「ーーな……!!?」
    こんなタイミングでルシファーの城に攻め入ってくる身の程知らずは一人しかいない。
    ブーツで階段を上がる音がする。

    「よぉ、クソ野郎」
    「…困ると言ったはずだが伝わらなかったか?」
    「聞いたさ、それで?だから何だ?好きなだけ困れよ」
    べぇっと舌を出し中指を立てて、アダムはルシファーを見下ろした。怒りを含んだ挑発的な目線は昨晩の態度と大違いだ。


    「お前の態度が気に食わない、謝れ」
    「謝る理由がない」
    「山ほどあるだろうが」
    「そんなことを言いに来たのか、わざわざ?こんな面倒な奴だったとは」
    「お前の立ち回りのせいだ、王の癖にスマートさの欠片も無いのが悪い」
    怒りに任せて乗り込んできたが、ルシファーのそっけない態度に気持ちが揺れる。
    気合を入れないと眉毛が下がってしまいそうで、アダムは眉間に力を入れてルシファーを睨みつけた。
    「スマートさねぇ……」
    ルシファーは揺り椅子から立ち上がり、ゆっくりとアダムに近づいてくる。
    威圧感にゴクリと唾を飲み込んだ。
    ーー大丈夫だ。困らせていい。
    実際困らせてるというか怒らせてるに近い気がするが、とにかく私が気を使う必要などない。…それでもほんの少しだけ怖気ついた。
    「なぁアダム、私に何を謝らせたいんだ?なぁほら言ってみろ」
    「……、全部だろ!」
    「具体的に言え。それとも、扉を壊した罰が先の方がいいか?」
    「っ…、私は、」
    既に昨晩迫っているわけで、今更気持ちを隠しても意味がない。
    意味は無いが……
    惨めで、言いたくない。
    「……とにかく心から謝れ」
    「ッカァーーー!そうかそうか!いいさ!そっちがそのつもりなら言わせてやろう!!」
    「なにっ、うわぁ!?」
    ルシファーがバチンと指を鳴らすと突然落下して、ベッドに落ちてバウンドした。
    「突然何するんだ!」
    「さぁ何を謝らせたい?ルームサービスを頼んでおかなかったことか?それとも起きて独りぼっちだったことか!?」
    「こ、の…!!痛ッ!」
    殴ろうと振りかぶった腕を押さえ込まれ服の上から肩を噛まれる。布を挟んだ鋭い歯が皮膚を突き破らないギリギリの強さで食い込んだ。
    「それとも、まさかこの私が噛んでやった事を言っているのか?」
    「か、噛んで、やっただと…!?」
    傲慢な物言いに顔を顰める。掴まれた腕を振りほどきたいがビクともしない。ルシファーは怒って目を赤く変化させていた。
    「そうだ。お前があんまり求めてくるから応えてやったんだ……、感謝するべきだろう、そう思わんか?」

    捨て身で城に攻め込んできたくせにビビっているアダムに腹が立ち、口から少し火まで吹く。
    こいつは勢いばっかりだ。
    酒の勢いで私を誘い、怒った勢いで扉を破壊した。おまけにその場のノリで私を挑発してこんな状況に追い込まれている。
    全て自分で勝手にやっていて、自業自得だ。

    ***

    ……そう。自業自得なんだ。

    「そ……それは違うぞ」
    「ーーは。」
    「たとえ……私が何かをねだったとして、お前がそれに答える義理はないはずだ。お前は自分で”困りごと”の種をまいたんだ」

    アダムが金の瞳を震わせて言う。ベッドに組み敷かれ、肩の痛みに耐えながら。
    あくまで自分は被害者だと言い張るアダムを見て、ルシファーはすさまじく不愉快そうな顔をした。
    白い所のない真っ赤な瞳は虫のようで、黒く長い尻尾は槍のように尖っている。
    掴まれた腕がトン、トン、鋭い指先で叩かれた。未知の言語を聞いたAIみたいにジッと固まるとルシファーはそのまま黙り続けた。

    「ッ…………」

    アダムはだんだんと怒らせたことを後悔し始めていた。
    見覚えのある風景である。まだ記憶に新しい光景だ。
    また殴られたいわけではない。
    アダムは人の当たり前として「こ、怖い…」と思っていた。
    何をされるか分かったものではない。
    ただ、困る"というコイツの発言にここまで心が乱されるなんで思ってもいなかった。コイツからどんなに酷い罵倒を受けたって私どうも思わない。しかし私はあの時、明確に傷ついたのだ。

    「…おい、痛いんだが……」

    赤い大きな丸に見下ろされる。
    何かは知らないが、考えているのだろう。
    言えばルシファーは操り人形みたいに体を起こして、アダムの少し上あたりにプラン…と、天井から吊られた死体みたいに浮かび上がった。
    アダムはこれを見た瞬間「ば、化け物っ…」と思って息を吸い込んだ。コイツはただ言葉に反応して退いただけで、状況は何一つ変化していないのだ。

    「お前にとっては化け物だ。見ればわかるだろ」

    長い沈黙を破って、ルシファーは口を動かさずにはっきりと言った。
    その瞬間アダムは意味もなく口を覆う。思ったことが口から出ていたらしい。

    「……そうか。誰でもいいんだなお前は」
    「は?」
    「誰でもいいから、私でもいいんだろ」
    「まて、何の話……」
    「白々しい。私のベッドに居座り続けてそんな態度をとるなんて。お前ぐらいだぞ。私をここまで不快にさせて生き残っているのは。だがその審美眼の高さは誉めてやろう。確かにこの地獄で相手を見つけるのは簡単だが、お前の肉欲に応えられるのは私ぐらいだ。ああだが、私はルシファー、堕天使でみんなの嫌われ者で、お前の妻を二回も寝とったクソ虫だからな。その点でお前の判断に誤りがあったともいえる」
    「スッ……すげえ鬱になってる…!」
    「腹が立つ腹が立つ。だが、なぜこんなにも腹が立つのかわからない。いやわかっている。お前の昨日の態度が気に障るのだ。誰のものにもならないくせに、いや私のものになる義理何てそれこそあるわけがないが、それでもこの地獄において私以外の者を選ぶなんてありえないだろ。ありえないというか耐えられない。ああわかっている。それこそ自業自得だ。私は私の身勝手で自滅しているだけなんだ…わかっている、わかってる…わかっているけどやめられない!」
    「うわ、びっくりした……」

    ルシファーが、今度ははっきりと口を動かして吠えた。
    見れば赤い瞳から火花が散っていて、キラキラ光る梢煙のようなものが上がって天蓋に溜まっていた。
    人外だけができる独特な泣き方にアダムが顎を引く。
    何に機嫌を悪くしているのかと思えば、鬱になって泣いている。
    アダムは「情緒がジェットコースターだから娘にもリリスにも呆れられて、天国から嫌われて、地獄で友達の一人もできないんだろうが。このカスボッちが。」と思ったが口を手で塞いでいたおかげで、言葉にはならなかった。
    さて、今度はアダムが困ってしまった。
    ルシファーは未だ浮かんだまま、目からキラキラの煙をあげている。
    カスボッちが言ったことを反すると、どうやらこいつは私に対してではなく自分に対して鬱になっている
    らしい。

    「行かなければよかった…いやでも腹が立つじゃないか。引き剥がせばよかったでもチャンスだと思ったし…ああでもそれが身の程知らずというやつなのか…ああ…」
    「おおお、」
    見下ろされながらよくわからない言葉をかけられる。
    アダムは流石に気まずくて肩をさすると噛まれた場所を擦ってしまい、「イッ、」と声が漏れ出た。
    「見せてみろ」
    「ウオ、」
    「私に・・・・こんなに噛ませて・何のつもりなんだ・・・ッ」
    ルシファーは糸が切れたようにドスン、とアダムの上に落ちて被さった。
    顔が近いのが嫌で、アダムが限界まで顔を引く。ルシファーは赤く見開いた眼から煙を出しつつ、アダムの肩に触れた。

    「虚しいよ…自分のせいだからさ…本当に嫌なんだ…こうなるから嫌だったのに…私が悪いよな…私だけが悪いにいきまっているんだ…こんな自己中心的な爬虫類を誰が…ああ、すごく虚しい…塵になれるなら塵になってしまいたい…」
    「お前…怖いぞ、」
    「あぁ、アダム。だから困る”と言っただろう…」
    「?」
    「なぁにそのお顔?お前そんな顔して地獄で遊んでるのぉ?」
    「はぁ?お前何か勘違いして、」
    「いや、とやかく言う権利は私にない…好きにおしよ。自由に飛べる翼を持っているのだから」
    「……」
    「はぁ。やめられない。やめられないよだって、アダムのこと、楽園の時からずっと見ていたから…」
    「!」
    うん…困るから…困るからサぁ…もうやめてね…お前のこと好きなのやめるから…やめて…ね……」

    ルシファーはボソボソ話すと、ガクッと脱力してアダムの肩口に顔をうずめた。
    その瞬間、湧き出ていた煙が巻き上がってアダムの顔に思いきりかかった。
    舌先にしょっぱいものが触れる。
    アダムが恐る恐るルシファーの方を見れば、化け物は両目を閉じたままスウ、スウ、と寝息を立てていた。
    「……」
    確かに自分が反対の立場であったら、朝まで一緒のベッドで過ごさず、何事もなかったかのように振舞ってごまかすだろう。
    ただ、

    「ハ。困れ、困れ。これからも大いに困らせてやる……」

    アダムはルシファーを片腕で抱きしめると、適当に足元の布団を蹴り上げて被せた。こんなカスボッち、ずっと困っていればいいのだ。困って真実がまろびでるなら儲けものである。
    「は~こりゃ、私の方がやられているな……/////」
    言いながらアダムは手で顔を覆った。
    しかし片手では隠せないほど、顔は真っ赤になっていた。

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