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    nekononora

    94。書くのも読むのも雑食でいきます。逆、リバ、R、G、などなど書きたいように書き散らかします。
    なぜかもう一個のアカウントがよく弾かれるようになったので、こっちで上げる。
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    nekononora

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    クラ→→←←←←ノスです。
    誕生日の話です。
    当社比、独占欲が強くて嫉妬深いノスで。

    #クラノス
    kranos

    毎年の予約をしよう「私はお前の誕生日を2月11日と決めている。何か欲しい物はないか?」

     ノースディンはふよふよと浮かび、組んだ足に手を乗せ、練習した台詞を音にした。
     練習では緊張から何度か噛んだか、スムーズに言え、声も震えていない。表情も緊張から引き攣ってないし、平静を装えたはずだ。
     視線を外した事が功を奏した。
     クラージィの写真を使っての練習でも、顔を見なければ勝率は高かったのだ。
     さて反応はと、心臓を太鼓のように打ち鳴らしながらベンチに座るクラージィを見やる。
     彼は少し呆気に取られた顔をしていたが、読んでいた本をパタンと閉じると、彼の横、ベンチの空いている部分を手で軽く叩く。
     ここに座れという事か。
     浮いたまま、すーと移動し、クラージィの横に収まる。いつでも戦略的撤退をできるように、念動力で少し浮いた状態だったのだが、クラージィが横を向いて膝に置いていた私の手に左手を重ねてくるものだから、驚きで思わず念動力を解除してしまった。
     正確には手を重ねられた後、逃げられないようにだろう、手首を掴まれたのだが、まぁ誤差だ。
    「く、クラージィ?」
    『ノースディン、まだ日本語が正確ではないので、こちらの言葉で尋ねるが、』
     クラージィの口から母国語が漏れる。日本語の少し高く慣れていない口調もいいが、母国語の重みのある低音は耳に心地良い。
    『決めている、とは?』
    『……』
    『ノースディン』
     優しく名を呼ばれ、
    『人間どもとは決めたのだろう?』
     紙に書いては消して書いては消してと台詞を考えた時に、消した言葉が口をついてでる。
    『だったら私は私が決めた私だけのクラージィの誕生日を私だけが祝いたい』
    『…………』
     クラージィは何やら言いたげな顔をしたが、少しため息をつき、それから優しげに微笑んだ。
    『ノースディン。次からは決める前に言ってくれると助かる。一緒に決める時間も楽しいものだ』
    『それはーー』
     ーー人間どもとそうして楽しかったからか。
     そんな言葉が喉から出そうになって、必死に押し込めた。これはあまりに嫉妬にまみれている。
     最近、どうにも余裕がない。
     再会したばかりの頃は、会えて話せただけで喜び、あの人間どもの仲もクラージィが楽しんでいるのなら、どうせ後百年もすればと見逃せていたというのに。
     押し黙った私に、クラージィは辛抱強く待った。
     口を引き結んで、真摯な瞳をこちらに向けて。
     五分、十分、二十分で、とうとう私が折れた。
    『人間どもと一緒に決めて楽しかったから私とも決めたいと? 人間どもと楽しそうにするのも、人間どもと初めての体験をするのはかまわない。いやかまうが、かまわない。だが今後も続く悠久の生で、毎年、人間どもと決めた日付にお前の誕生を祝いたくはない』
    『……ノースディン』
    『ハッ、なんだ? 吸血鬼の執着が怖くなったか? それとも私の、』
    『分かった。2月11日は毎年、お前に祝ってもらう日にしよう』
    『嫉妬深さに呆れ……………………毎年?』
     勢いを無くし、呆然とクラージィを見れば、彼は深く頷いた。
    『あぁ、毎年だ。その日はお前と過ごし、お前に祝ってもらいたい』
    『…………そうか、それは、ふん、なかなかいい提案だ。毎年か、ふふ、毎年一緒に……』
     頬が緩まないように必死に表情筋に喝をいれる。
     ニヨニヨしかけた口元を空いている手で隠せば、『それで』とクラージィが続けた。
    『何か欲しいものだが……そうだな、私が今からする問いの返事が欲しい』
    『そんなものでいいのか?』
     欲の無い奴だとは知っていたが、質問の答えとはいくらなんでもなさすぎではないだろうか。
    『猫グッズでもいいんだぞ? お前が気に入っていたクッションでも』
    『それは魅力的だが、今の私にはその問いの答えが一番欲しいものだ』
    『そうか……』
     コイツがそんなに欲しがるものとはなんであろうか。
     貢ぐ機会が失われた事は惜しいが、来年も、再来年も、その先もずっとあるのだ、一回ぐらいはかまうまい。
    『……いいだろう。問うてみろ。答えてやる』
    『では』
     手首を掴んでいた手が、手の上に移動する。私達と同じになった赤い目に真っ直ぐに見つめられ、薄い唇が開く。

    『ノースディン、私はお前を愛している。伴侶となり毎年、誕生日を祝ってくれないだろうか?』

     低く、耳に良い声が言った事を、一瞬理解できなかった。
    『は?』
     と音を返せば、フッと微笑まれる。
    『返事は2月11日に』
     その後、どうやって屋敷に帰ったか覚えていない。
     気がつけば自室にいて、パソコンで結婚式場を調べていた。
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