嘘つき駒鳥、食べられる 初夏の柔らかな光が差し込む自室で、姿見の前に腰掛けると髪がさらりと揺れるのを感じる。
背後に立ったジュードさんは髪を掬い取るとゆっくりとブラシを通した。
恋人たちの時間の始まりだ。
「俺の留守中、一歩も部屋から出てへんやろな」
「……はい。ずっと部屋にいました」
優しくブラッシングをされながら、鏡の中で赤い唇が嘘を語る動きを見つめる。
(クラウンの私室でみんなとお茶会をしたなんて絶対に言えない…!)
そもそも部屋からの外出禁止は一方的な命令であって約束ではなかった。それを言い訳として、堂々と嘘を吐くしかない。
「それならええわ。近頃フォーゲルの奴らがおかしな動きしてはるからな」
「ニカはいつもどおりに見えましたけど」
2019