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    あきら

    怪文書量産型

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    あきら

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    ヌヴィフリ続き。
    フォンテーヌ女子3人組好きなので登場させました。今回はセリフにもこだわりました。

    #ヌヴィフリ
    NeuviFuri

    ヌヴィフリ 終わりよければ全て良し②旅人とパイモン、ヌヴィレットがフォンテーヌ廷で出会った頃。
     ナヴィアとクロリンデはレインボーローズが入った籠を抱えながら、フォーンテーヌ廷の北側にある水辺を歩いていた。ナヴィアはレインボーローズを1輪取り出し、鼻に近づける。優しくて甘い香りが鼻腔をくすぐり、ナヴィアは満足げに微笑んだ。
    「ふふ、大量〜♪探索大成功ね!」 
    「いくら何でも取りすぎだろう。こんなに取って使い切れるのか?」  
    「大丈夫!今度の新作は渡したい人がたくさんいるから、これでも足りないくらいよ」 
    「まったく……休日に突然やってきてをレインボーローズ摘みに行こうだなんて。レインボーローズはフォンテーヌ廷でも買えるだろう?」
    「やっぱり自分の目で見てしっかり選びたいじゃない?それに次のレインボーローズをイメージした新作マカロンは旅人にも贈るものだから、こだわりたいの」
    「はいはい、ナヴィアは本当に旅人が好きだな」
    「あ、もちろんクロリンデにも贈るからね」  
    「それはどうも……ん?」
     クロリンデは足を止め、海辺の方を見た。視線の先にはヤドカニ型の原海アベラントがおり、青い何かを囲んでいた。
    「あれって……重甲ヤドカニよね?何だかたくさんいるみたいだけど、どうしたのかしら」
    「いや、待て。あそこにいるのは――フリーナ様!?」
     青い何か――いや青の装束にシルクハットを被った少女――フリーナは岩の上に登り、必死に重甲ヤドカニを追い払おうと剣を振っていた。しかし剣を見た重甲ヤドカニは逆に興奮し、ハサミを宙に掲げてフリーナを威嚇している。
    「ほ、ほら!あっちへ行くんだ!君たちと遊んでる暇はないんだから!って何をするんだい!や、やめてくれ――」
     一際大きな重甲ヤドカニがハサミを岩に叩きつける。ドスンッ!大きな衝撃と共に岩が大きく揺れ、フリーナは体勢を崩した。
     重甲ヤドカニ達はその隙を見逃さず、一斉にフリーナに襲いかかろうとしたその時、
    「ファイアー!堂々不意打ちよ!」
    「はあ!フリーナ様、お下がりください!」 
     ナヴィアの大砲が重甲ヤドカニ達を遥か彼方まで吹っ飛ばした。その間にクロリンデはフリーナの前に立ち、剣を構える。
     懐からサングラスを取り出したナヴィアはサングラスをかけて仁王立ちすると、
    「相手なら私達がするけど、どうする?」
     ナヴィアの大砲とクロリンデの剣が太陽の光を浴び、キラリと光る。 
     二人の鬼気迫る気迫に押され、重甲ヤドカニ達は一目散に逃げていてった。
    「やっほーフリーナ!大丈夫だった?」 
     尻もちをついて呆然としたフリーナにナヴィアが声をかけると、フリーナの肩がピクリと震えた。
     コホンとわざとらしく咳をしたフリーナは、ゆっくりと立ち上がって服の埃を払いながら、
    「や、やあ君たち。こんなところで会うなんて奇遇だね。僕に何か用かい?」
    「用ってわけじゃないけど、フリーナがヤドカニ襲われてたから心配になったのよ」
    「ええ。ですが、フリーナ様がフォンテーヌ廷を離れるとは珍しいですね」  
    「そ、そうかな?」
    「確かにそうね。ここは特に何かあるってわけでもないし。何か用事でもあったの?」 
    「ええっと、大した用じゃないんだ。ちょっと水を汲もうと思って。そしたらアベラント達の住処に入ったみたいで……」
    「水?」
     フリーナの予想外の返答に二人は首を傾げ、顔を見合わせた。
    「水ならフォンテーヌ廷でも手に入ると思うけど?」
    「そ…それはそうなんだけど…僕が欲しいのはとびきり美味しい水というか、フォンテーヌ廷では手に入らない特別なものというか……」
    「フリーナ様、何かお困りでしたら仰ってください。我々が力になります」
    「そうよフリーナ、遠慮しないで。だって私たち、友達でしょ?」
    「と、友達…!そ、そうだよね。友達……えへへ」
     フリーナは照れくさそうに笑う。その愛らしい様子にナヴィアとクロリンデもつられて微笑む。
    「実はある人へのプレゼントを探してて……」 
    「ある人ってヌヴィレットのこと?」 
    「え!?な、何で分かったんだい!?」
    「プレゼントで水といえば、ヌヴィレット様しか思いつきませんよ、フリーナ様」
    「た、確かに……。こほん、とにかくヌヴィレットへのプレゼントを探していたんだ。けど……」  
    「けど?」 
    「……僕はスターだからね、プレゼントを貰うことには慣れているけど、プレゼントをあげるなんてことはなかったからね!いやあ、人気者は辛いよね!ははっ!」
    「ふうん……そうなんだあ」
     突然フリーナの演技しているような大げさな態度をとった。照れくさいのか、上手く話せなかったのか。どちらせよフリーナは演技で誤魔化そうとしている。
     ナヴィアは大きくため息をついた。そしてクロリンデと息を合わせて、
    「フリーナ様」
    「それでね、フリーナ」
    「「本当は?」」
    「うぐっ……」」 
     二人に言い寄られ、フリーナはたじろいた。頬を赤らめるとゆっくりと話し始める。
    「実は明日ヌヴィレットが僕に会いに来るんだ。何でも定期視察とか何とからしくて」
    「なるほど、ヌヴィレット様はフリーナ様が心配なのですね」
    「フリーナって食事に関してはズボラで毎食パスタにしてそうよね」   
    「そんなことは……あるけど!」
    「あるんだ……それじゃあヌヴィレットさんも心配になるでしょうね」  
    「と、とにかく!ヌヴィレットが僕に会いに来るんだ。わざわざ来てくれるんだから、何か贈り物をしようと思って……うう、贈り物なんて簡単だと思ってんだけど…考えてみたら、彼の好きなものなんて何にも分からないんだ」
    「確かにヌヴィレットの好みって謎よね。私もよく知らないわ」 
    「それでパレメルモニアで働いてるメリュジーヌのセドナに聞いてみたら、ヌヴレットは水が好きだって言うんだ」 
    「ヌヴィレット様は水にこだわりがあると聞いたことがあるが……あの方のことだ、他国の水は既に味わっているだろう」
    「そうなんだ……だから何を贈ればいいのか分からなくなって……」 
    「それでパニックになって水を汲んでたわけね。うーん、そんなに悩まくていいと思うけど」
    「何を贈ればいいのか分からないっていうのも、もちろんあるさ。でも僕は何より……」
     フリーナは俯き、言葉を濁らせた。しばらくの静寂の後、絞り出すような小さな声で、
    「僕はそれなりに長く一緒にいた。それなのに僕は彼のことを何も知らない……はあ、僕はヌヴィレットのこと何も分かってなかったと思い知らされてるみたいで…」
     ポツリと呟き、フリーナは俯いた。
     フリーナとヌヴィレットにとって、互いは単なる同僚でしかない。だからこそ互いに干渉しなかった。だからこそ互いに何も知らない。
     そのことが重く冷たい泥のように、フリーナの心に燻っていた。
     すると、
    「私もフォンテーヌ廷で働いていますが、フリーナ様のことを何も理解していませんでした。あなたが嬉しいと思うことも、悲しいと思うことも、長年の苦悩さえも、私は『予言』の件が終わるまで知りませんでした」
    「クロリンデ……」
    「ですが、今は違います。あなたと友として卓を囲むようになってからは、あなたのことが少しずつ分かってきました。甘いお菓子が大好きなこと、怖がりなこと、体重を気にしていること……他にもたくさん、あなたのことを知ることができました」
    「体重のことは言わなくてもいいだろう!?」
    「あはは!そうね、私もフリーナのことよく知らなかった。でも、友達になって少しずつ分かってきたよ。だから、ヌヴィレットさんのこともこれから知っていけばいいよ」
    「そう…かな…」
    「ええ。仕事上の付き合いだけでは分からないこともありますから」
    「……そう、だよね。うん、そのとおりだ」 
     ヌヴィレットのことはよく知らない。知ろうともしてこなかった。
     『予言』に関する事件が終わると、フリーナがヌヴィレットと会うことはほとんど無かった。ヌヴィレットには仕事があり、神を降りたフリーナにはパレ・メルモニアに行く理由がない。だから会う必要も意味もない、そう思っていた。
     だが、今は違う。
    「ヌヴィレットが僕に会いたいと手紙を送ってくれたんだ。僕が元気かどうか確認するために。……全く、お節介な奴だ」
    「ふふ、確かに少しおせっかいかもね」
     不満げに語るフリーナに、ナヴィアは優しく微笑みかける。
     何でも見通しているようなナヴィアの瞳に見つめられ、フリーナは頬を赤くした。そして軽く深呼吸すると、力強く言う。
    「でも――嬉しかった。僕に歩み寄ろうとしてくれるのが、嬉しかったんだ。だから僕も歩み寄りたい。ヌヴィレットのこと、知りたい」   
     それは嘘偽りのない、フリーナの気持ちだった。ヌヴィレットのことはよく分からない。だからこそ、知りたいと思う。
     ナヴィアとクロリンデは互いに顔を見合わせ、軽く頷いた。どうやら考えていることは同じだったようだ。
    「そっか――それじゃあヌヴィレットのことをよく知ってる人に会いに行こっか!」
    「ええ、彼女なら適任でしょう。今日はフォンテーヌ廷に来ていると聞いています」
    「え?そんな人いるのかい?」  
    「正確には人じゃないけどね♪さ、行きましょ!」 
     ナヴィアは戸惑うフリーナの手を掴み、フォンテーヌ廷へと向かって歩き出した。その後ろをクロリンデは優しく笑いながらついていったのだった。
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