寝ずの番 呪術界の大家が死んだ。それは御三家にも影響が及ぶほどで、もちろん俺たち高専生も、幸せに心筋梗塞で死んだ彼の実家に通夜に行くことになった。そしてどういうわけか俺は、いや、俺と傑は寝ずの番の一人に選ばれることとなったのだった。
寝ずの番をすると言っても、いっぱいの花に囲まれた彼を見つめる以外にはすることはなかった。あとは輝く刀に自分の顔を映し出したりとか遊ぶくらいだ。葬儀で刀を置くのは、猫を避けるためだそうだ。猫は古代より悪と描かれていて、ちょっとした隙に故人の身体を奪ってしまうのだという。でも、この人の命はまた奪われる。自然死をした呪術師は、身体の一部を奪われたら呪詛師に呼び出される可能性があるため、自然死ではない方法で二度死ぬよう、今は忙しく御三家の呪術師たちが走り回っている。滑稽だ、馬鹿らしい。でも、俺も世話になった人だった、さまざまな呪法に通じたあの人が、誰かに利用されては困る。
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