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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    呪専
    投げ掛けられる視線と受け取る視線。俺、天使なんかじゃないよ
    GEGO DIG. SUMMERでpixivにて展示した短編集より。

    #夏五
    GeGo

    【白】 スノーエンジェル いつからかなんて、知らない。
     でも、なぜかは、わかるかも、しれない。
     
     学食のごはんも慣れてこれば、おいしく食べられるようになった。そもそも温かいものは温かく、冷たいものは冷たく出してくれるのだけでも、おいしく感じられる。育ち盛りだと大盛にしてくれたハンバーグ定食を持って傑を探せば、天ざる定食を持った傑と視線がぶつかった。
     探していたと顎で身近なテーブルを指し示せば、軽く手を上げた後、ひょこひょことこちらまで歩いてきた。
     そんな事が何度か繰り返されるうちに、探さなくても傑が見つけてくれるようになった。怪訝そうにしていたのか、そんな簡単なことと、当然のように表情も変えずに彼曰く
    「悟は頭一つ出るから、探さなくてもすぐにわかるよ」
     確かに、そうだよな。
    「飢えて死にそうなんだけと。コンビニ寄っていこうぜ」
     すっかり同級生ふたりのお蔭で買い食いすることを覚えれば、任務で出掛けても、遊びに行ってもつい、コンビニにふらふらと吸い込まれていく。新商品のジュースだったり、アイスだったり、季節限定のスイーツだったり、そんな魅力的な商品に意識を奪われて、顔を上げるとふっと視線を外した先に傑がいたりする。
     視線が絡まってから気付いたように、驚いて視線を反らすこともあった。見守るような眼差しを向けられて、照れくささと煩わしさを足して割ったような気分になる。
    「そんな甘いもの、ふたつもみっつも、よく食べられるね」
     呆れたような口調は、すでに馴染んだ親友のそれで、だから俺も当然のように言い返す。
    「今週出たばっかの新商品だから、ぜんぶ食べたいんだって。傑みたいにおっさんじゃないしぃ」
    「失礼だな。私の方が若いんだけど」
    「言ってろ。手に持ってる酒はいいのかよ」
    「ふふ」
     いたずらっ子のように含み笑いで誤魔化す傑は、存外可愛らしい表情になるけれど、それは俺といる時だけ、偶に硝子もありかな、だって最近気が付いた。普段はゆとりの優等生ズラしているからなあ。
    「ひと口やるから、味見」
     なんて言えば頷いてくれるから、いつも舐める程度なのにおねだりをする。本当は、一緒に食べたいだけだけど、それは言わぬが花だ。
     
     ふわりと漂うような、吹けば飛ぶような視線は、山間にある校舎にも風花が舞うようになれば、気温に反比例して熱を帯びてきた。ふとした瞬間に絡む視線は不自然に反らされ、団子にまとめ上げた長い髪に隠されることなく晒された首筋を朱色に染めた。
     それでも、ふざけ合い、笑い合い、偶にアラートが鳴るほど喧嘩をして、任務に出れば共闘し、心強い相棒で親友だ。それはどちらも初めて俺が手にした関係で、失くしたくはない、大切な存在だ。
     でも。
     大小の切り傷と、乱れた制服と髪、それで済んだのだから、見渡す限真っ白な雪原に立っている今、叫んでもいいはずだ。
    「俺たち最強じゃん」
     喜色に誇りを含んだその声に、隣で荒い息を整えた傑が最強だよと応えてくれる。向き合えば、自然と笑い声がどちらともなく湧き上がり、肩を震わせ笑い合い、肩を寄せ合い、ついでに肩を軽くこずいた。
    「あっ、悟、両手広げて、肩の高さ」
     急に何を思い出したのか、顔を綻ばせたまま言われた。指示通りに動きつつ何と問い返す間に、両手で胸をとんっと押され、そのまま重力に引かれて積もったばかりの新雪に埋もれるように倒れ込んだ。おっ、やるかっと起き上がる前に、すぐ横に傑が声と共に降ってきた。
    「起きないで」
     ぶわあっっと一瞬、目の前が白くなった後、隣に視線を移すと、楽し気に目を細めた傑が目に入った。広げた手の先に、同じように腕を広げて倒れた傑がいる。
    「これで足は開閉して、手も伸ばしたまま上下に動かして起き上がると、天使の出来上がりらしいよ。知ってた、悟」
    「何かと思っただろ」
    「聞いたらさ、悟にやって貰いたくて」
     静かな声が、見上げた真っ蒼な空に昇っていく。
    「……。 俺、別に天使じゃないし」
     そんな風に思われていたのかと思うと、無性に腹が立った。それと同時に鼻の奥がつんと痛い。怒ったつもりが、雪に溶けて消えてしまいそうに弱々しくて、己にもムカつく。俺たち、親友だろ。
    「あっ、ごめん。そういう意味じゃないんだ」
    「じゃあ、何だよ」
    「悟はさ、天使でもないし、悪魔でもないよ。私と同じ、未成年の学生だよ」
    「……。 」
     そんな事、いわれたこと、ない。
    「まあ、黙っていれば見た目は天使だけどね。でも、こうして任務に出れば尊敬するところもあるし、羨望もある。悔しさもあるけど、親友だよ、天使なんかじゃない」
     天使だと思うのは、私だけでいい。私だけの天使でいてくれればいい。君は天使でも神でも、仏でもないんだから。
     そんな声が、聞こえた気がした。
     横を向けば、綺麗に微笑む傑がいて、誇らしげなにのにくしゃりと泣き出しそうにさみしげで、思わず腕を伸ばした。天使とやらに形作られた雪形は手を繋いでいるのに、後、僅か、後少しで、手が届かない。
    「オマエ、なんて顔してるんだよ」
     零れた言葉はかそけき音で、傑に届くことなく、雪に溶けた。
    「傑、腕、伸ばせ」
     想いっきり伸ばした指先は、空を掻いた後冷たいけれど、よく知った感覚に、傑の指先に触れた。重なった瞳の奥に、真っ白な大地と真っ蒼な空が広がる。
     伸ばせば、届く。
     それならば。
     確かめたい。
    「届いた」
    「届いたね」
     俺の思いも、おまえの思いも、届く。
     つながる。
     伝わる。
     それなら。
    「すぐる」
     呼び掛けた声は、何時になく優しくて甘くて、真摯に響いて、絡まったままの視線の先に届く。
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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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