❏設定❏
・元ネタ→エリア会話「……冬弥、お前か?」より
❏本文❏
~パンケーキのお店[店内]~
新「ほんと水臭いよね、彰人くんって。甘い物が好きなら早く言ってくれないと」
彰人「水臭いなんて間柄じゃねえだろ。つーか、お前もそうだって知らなかったし、いちいち言うことでも……」
新「はいはい、彰人くんは文句が多いね、まったく。そうやって常に眉間にしわを寄せてたら、いつか取れなくなっちゃうかもしれないよ?」
新:彰人の眉間を人差し指でつつく
彰人:ぱしっと新の手を振り払う
彰人「バカにすんな、そんなヤワじゃねえよ」
新「あはは、元は俺から誘ったけど、改めて彰人くんのほうからパンケーキを食べに行こうって誘ってくれた時は嬉しかったのになあ。いまだに壁を感じるのは気のせい?」
彰人「冬弥が甘い物が苦手だから、毎回付き合わせるのは悪いと思ってお前を誘ったんだよ。……それに、過去を持ち出すのは気が引けるが、出会いが出会いなだけに、すんなりと打ち解けられるかよ」
新「まあまあ、そう言わずに、二人でパンケーキを食べる仲になったんだから、これからは仲良くしようよ。……ね?」
彰人「……」
新「ま、今すぐにとは言わないからさ。彰人くんのペースでいいよ」
彰人(前から思ってたけど、結構いいヤツなんだよな、こいつ……)
~店の外~
新「それじゃ、今日は誘ってくれてありがとね、彰人くん」
彰人「おう」
新「……あれ? あそこにいるのって、冬弥くんじゃない?」
彰人「冬弥?」
彰人:新の視線の方向を振り向く
冬弥「彰人、それに遠野さんも……二人きりで会っているなんて珍しいな」
彰人「この間、遠野がパンケーキを食いに行きたがってるから、オレがパンケーキを好きだってお前が言ったのかって聞いただろ。……それで、仕方なく付き合ってやってたんだよ」
新「あのさ、彰人くん。最初に誘ったのは俺だけど、改めて誘ってきたのは彰人くんでしょ? 自分から俺を誘ったって認めるのが嫌なんだろうけど、彰人くんから誘ってきた事実を隠して、あたかも自分は乗り気じゃなかったみたいに振る舞うのはずるくない?」
彰人「……っ!? 遠野、お前な……」
彰人(いいヤツだなって思った矢先にこれかよ)
冬弥「彰人……」
彰人「……? なんだよ、冬……」
冬弥:彰人の腰を抱き寄せてキスをする
彰人「……!?」
新:驚いたように目を見開く
彰人「……っ、冬……やめ……! は……ぁ、ん、んん……っ」
彰人:しばらくされるがままになった後、たまらず冬弥を突き飛ばす
彰人「……っ! 冬弥てめえ、一体なんのつもりだよ!」
彰人:周りをキョロキョロと見まわして、しっかりと通行人に見られていたことに気がつくと、顔を真っ赤にして冬弥の胸ぐらを掴む
冬弥「他人の悩み事や問題はすぐに察するくせに、自分のこととなると鈍感なんだな。それとも、分からない振りをしているのか?」
冬弥:彰人と目を合わせることなく、悪びれた様子もなく言い放つ
彰人「なっ……」
新「えーっと、お取り込み中のところ悪いんだけどさ……君達って、そういう仲だったんだ?」
彰人「……!? ~~~~っ!」
冬弥「……」
彰人:新の存在を思い出すとビクリと体を震わせ、直後に赤面して顔を伏せる
冬弥:新の問いかけには答えずに、新を睨みつける
新「う~わ、怖……いつもおっかないのは彰人くんのほうなのに、今日は珍しく冬弥くんのほうがおっかないや。てゆーか、俺が二人の仲をかき回しちゃったみたいでごめんね。俺はもう退散するし、冬弥くんから彰人くんを奪おうなんて思ってないから安心してよ」
新:その場の空気にそぐわない笑顔で「じゃあね」と手を振りながら去っていく
彰人「……」
冬弥「……」
彰人・冬弥:新がその場を去ると、二人同時に沈黙する
彰人「とりあえず……店の前に突っ立ってると迷惑だから、どこかに移動するか……」
冬弥「ああ……」
~ひとけのない公園~
彰人「……」
冬弥「……」
彰人・冬弥:ベンチに座っている
彰人「さっきは、急にどうしたんだよ」
冬弥「……」
彰人「オレと遠野の間には、お前が心配するようなことは何も……」
冬弥「分かっている」
彰人「じゃあ、なんで……」
冬弥「……」
彰人:黙り込む冬弥を見て困ったように後ろ頭をかくと、冬弥を抱きしめる
冬弥:驚いたように目を見開く
冬弥「彰人?」
彰人「あのな、いくらオレとお前が相棒同士でも、言ってくれなきゃ分かんねえことだってあるだろ」
冬弥「……」
彰人「それに……オレは他人のことには敏感でも、自分のことには鈍感だって、さっきお前が言ったんだろ」
冬弥「……」
彰人「言えよ、なんであんなことをしたんだ」
冬弥「……」
冬弥:一瞬考えこむような表情を浮かべた後、ゆっくりと口を開く
冬弥「彰人と遠野さんの間に何もないことは分かっている……だが、俺が知らない間に二人の関係が深まっている光景を目にした瞬間……彰人と遠野さんの間には俺が知らない時間が流れていて、俺が知らない言葉を交わしているのだと思ったら……つい体が動いていた」
彰人「……」
彰人:ゆっくりと体を離すと、冬弥の顔を真正面から見つめる
彰人「バカだな、お前」
冬弥「ああ、俺もそう思う……」
彰人「そんなの、お前だって遠野の相棒……颯真さんといつの間にか仲良くなってたんだから、おあいこだろうが」
冬弥「すまない……本当にその通りだ……」
彰人:落ち込んでいる様子の冬弥の頭をぽんぽんと軽く撫でる
冬弥「!」
彰人「さすがに、さっきみたいなことを今後もされると困るが、普段感情を表に出さないお前が嫉妬してくれたことは普通に嬉しかった」
冬弥「彰人……」
彰人「だから、その……」
冬弥「……?」
彰人「もっと、お前の気持ちをオレにぶつけてこいよ。例えば、お前が今したいこととか……」
彰人:だんだんと恥ずかしくなってきたのか、頬を赤らめながら視線をそらす
冬弥「今、したいこと?」
彰人「~~っ! だから! ここなら人がいねえだろって言ってんだよ!」
冬弥「……彰人、それは誘っているのか?」
彰人「いちいち言わせようとすんなよ、ったく……こんなことお前にしか言わねえし、キスするのも、抱かれるのも、お前じゃなきゃイヤだ」
冬弥「……っ」
彰人「どうだよ。こんなこと言われたら、もう二度と嫉妬なんかできねえだろ。もしも、また嫉妬した時はもう一度言ってやるから……だから……」
冬弥「……」
彰人「なにグズグズしてんだ、バカ……早くキスしろよ」
冬弥「ああ……」
冬弥:彰人の頬に手を添えると、ゆっくりと顔を近づけて唇を重ねる
彰人:目を閉じてキスを受け入れる
冬弥:ゆっくりと唇を離すと、彰人を見つめる
彰人:ほんのりと赤く染まった頬を隠すように目を伏せる
彰人「そういえば、さっき遠野がオレをやり込めようとしてきた時、やっぱりいけすかねえヤツだなって思ったんだけどよ……その後、お前と色々あった時はオレ達に気を遣ってすぐにその場を離れてくれたし、やっぱりいいヤツ……」
冬弥「……」
冬弥:じとりと彰人を睨み付ける
彰人「な、なんだよ……」
冬弥「さっきあんなことがあったばかりだと言うのに、もう俺の前で遠野さんのことを褒めるのか? ……やはり、彰人は自分のこととなると鈍感なんだな」
彰人「うっ……」
冬弥「冗談だ」
彰人「……っ!? 冬弥、お前な……!」
冬弥「彰人、さっきは俺がしたいことを何でもしていいと言っていたな」
彰人(何でもとは言ってねえが……)
彰人「ああ、言ったな」
冬弥:彰人の服の中にするりと手を滑り込ませる
彰人「……!?」