❏設定❏
・赤ずきんパロディ
・こはね=赤ずきん
・彰人=狼(人の姿に耳としっぽが生えている)
・基本的なストーリーの流れは元ネタと同じ(赤ずきんがおばあさんのお見舞いに行って狼と出会う)
・以下、変更点
・赤ずきんを一人で行かせることを心配したお父さんが、赤ずきんの家で飼っている犬をお供につける
・犬の名前はこはねの家で飼っている蛇の名前
・彰人は狼だけど犬が苦手で、赤ずきんに話しかけた後でお供の犬の存在に気がついて怖がるも、赤ずきんに知られたくないという思いから必死に隠そうとしてしまう
・二人は初対面のため丁寧な口調で喋っている
・内容の一部に元ネタである赤ずきんのセリフの引用あり
・細かい設定は話を進めていくうちに変更する可能性あり
・↑前提で、こはねが彰人に出会い、彰人がお供の犬の存在に気がつく場面から
❏本文❏
彰人「――……っ!?」
こはね「あ、パール伯爵! ダ、ダメだよ、ずきんの外に出ちゃ……」
彰人「……………………」
こはね「……? 狼さん、どうかしたんですか?」
彰人「い、いや……どうもしてないよ。それより、その子は、一体……?」
こはね「あ、えっと……お父さんが一人でお見舞いに行かせるのは心配だからって、お供につけてくれて……本当はお父さんも一緒に行くって言ってくれてたんですけど、私が断ったら、そうなっちゃって……」
こはね(お父さん、すごく心配性だし……おばあさんのお家に行く途中で、やっぱり引き返すって言い出しかねないから……)
彰人「そ、そう、なんだ……」
彰人:警戒したような表情を浮かべて、犬の顔をじっと見つめる
犬「わふっ!」
彰人「……っ!?」
彰人:犬が自分に向かって吠えると、ビクリと肩を震わせる
こはね「あ、パール伯爵、ダメだよ、狼さんを怖がらせちゃ……」
彰人「……あ? 別に、怖がってねえよ」
こはね「へっ?」
こはね(き、気のせい、かな……な、なんだか、急に喋り方が怖くなったような……)
彰人「……それより、なんで犬をずきんの中に隠してたんだよ」
彰人(犬がいるって分かってたら、最初から話しかけることもなかったってのに……)
こはね(や、やっぱり気のせいじゃない、よね……お、狼さんの喋り方、急に怖くなってる……)
こはね「え、えっと……も、森の中に綺麗なお花が咲いてる場所があるって聞いてたのと……この子、お散歩中にお花を食べちゃう癖があって……だから、綺麗に咲いてるお花をこの子が食べてしまわないようにって……」
彰人「……」
彰人:なんだよ、そのくだらねえ理由は……とでも言いたげな表情を浮かべると、こはねの顔をジトリとした目つきで見つめる
犬「わふっ!」
犬:こはねのずきんの中から飛び出して地面に降りると、しっぽをパタパタと振りながら周囲に咲いている花を食べはじめる
彰人「……っ!?」
こはね「あ……! ダ、ダメだよ、パール伯爵……! こ、こんなに綺麗なお花なのに……!」
彰人:犬との距離は十分に開いていたにも関わらず、ビクリと大きく全身を震わせると、後ずさりをするように背後に避ける
こはね「……」
彰人「……」
こはね「あ、あの……もしかして、狼さんって、犬が苦手……」
彰人「は? そんなわけねえだろ」
こはね「……」
彰人「……」
彰人:こはねの言葉にかぶせるようにして、威圧感のある低い声で否定する
こはね「え、えっと……おばあさんのお見舞いに行かなきゃいけないので、私はこれで……」
彰人「……!」
彰人(くそ……赤ずきんも、こいつのばあさんも二人まとめて食っちまおうと思ってたのに……このままじゃ、楽しく会話しただけで終わっちまうじゃねえか……)
彰人:なんとかして、こはねがおばあさんの家に辿り着くまでの時間稼ぎをしようと考えると、人当たりのよさそうな笑顔を貼り付けて口を開く
彰人「赤ずきんちゃん、おばあさんの家に行く前に、周りを見てごらんよ。こんなに綺麗に花が咲いてるし、小鳥も歌ってる。せっかくだから、楽しく遊びながら行ったらどうかな。たとえば、花を摘むとか……って、そういえば、赤ずきんちゃんは、花が犬に食べられるのを心配してたんだっけ……」
こはね「……花? あ! パ、パール伯爵!」
犬「わふっ!」
犬:周囲の花を食べつくして、満足げな表情を浮かべている
こはね「あ……ど、どうしよう……あんなに綺麗だったお花が、ぜ、全部、なくなっちゃってる……」
彰人「……」
彰人:少しでも時間稼ぎをしようと赤ずきんをそそのかそうとした矢先に、その努力を一瞬で無駄にしてくれた犬が満足げな表情で佇んでいる姿を見つめながら、呆然とその場に立ちつくす
彰人(い、いや……ど、どうせ、こいつのことだから、花を摘むのは嫌だって言ってきただろうし……どっちにしろ、この手は最初から使えなかったんだ……だとすると、他の手を考えねえと……)