「あう……」
困りきった声が聞こえて、フェイスはヘッドボードに預けていた上半身を起こした。
「グレイ? どうしたの?」
視線を向けた先、床に置かれた大きくて柔らかいクッションで、六つ年上の恋人が俯いて震えているのが見える。つい先ほどまで真剣な顔でゲームをしていたはずなのに、一体何があったのだろうか。
「大丈夫?」
言いながらベッドの上から身を乗り出すと、そろそろと顔を上げたグレイが、あう、と小さな呻き声を零した。切れ長の目にはうっすらと涙が浮かんで、形のいい眉がへにょりと下がっている。本人は何か大変な様子だが、いかにも憐憫を誘うその顔は、フェイスにとっては少し目の毒で、もっと正直に言うならばかわいくて仕方がない。
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