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    9s0z9

    @9s0z9

    ちょそ推し五悠狂い

    ついったしたごゆの壁打ち置き場にしたくて。

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    9s0z9

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    11月毎日何かの記念日月間!!
    と、勝手に思い付いて、今日はダーツの日だそうで。(11/1です。寝落ちしたらすっかり過ぎているw)
    毎日やれたらいいなぁなんて考えてたけど、正直そんな場合じゃない。ばちこいの原稿終わってない。

    そんなダーツの日ネタは先生と生徒のデート話です。

     ガヤガヤと騒がしい店内は、平日の昼間だと言うのに外よりも暗く、壁一面に並ぶダーツマシンが煌々と主張をしていた。
     今日は久しぶりのデート。映画を見に行く予定が、昨晩少し張り切り過ぎた所為で寝坊してしまい、本来見る筈だった時間に間に合わず今に至る。次の回まで何をして時間を潰そうかと思案していた所、悠仁に誘われやってきたのはここ、近くにあった漫画喫茶だった。
    「おっしゃー! やったー見て先生! 真ん中当たった! 五十点!」
     三投目を投げ終わり、嬉しそうにはしゃぎながら振り返り僕の元へと悠仁が駆け寄る。
     何やら前に恵達と一緒にラウンドなんちゃらに行ったらしく、色々遊べて楽しかったんだとか。ここの漫画喫茶もパソコンが使える個室の他、カラオケやビリヤードといったアミューズメントが併設され、暇つぶしにもってこいの場所だった。
    「お、流石悠仁。初球から調子いいね。これじゃあ僕も負けてられないな」
    「ふふん。俺、初めて先生に勝てちゃうかもね」
     愛らしい悠仁をずっと見ていたいが次は僕の番。バトンタッチをしてスローラインの前に立ち、軽く背伸びなんかしてみたり。
     背後では余裕そうに腕を組んで僕を見つめる悠仁が、斜め前のガラス越しに薄っすら映ってみえた。僕はそのままフラットな姿勢で十二時方向真ん中のトリプルの枠に三本連投し、ドヤ顔で振り向けば、悠仁は目をぱちくりさせて僕と点数ボードを往復させている。
    「え? 先生、真ん中じゃないのに百八十点って……」
    「真ん中は確かに五十点だけど、二十点のトリプルなら六十点で一番の高得点になるんだよ悠仁」
    「なるほど……って、こんなちっちゃい場所にこんな上手く当るなんて先生術式使ったろ!」
    「んな訳ないでしょーが。言い掛かりはよして欲しいね」
    「あー分かった! 腕の長さズルいじゃん!」
     そう言って僕の腕に自分の腕をピタリとくっつけて長さを比べようとするが、肩の位置が合わないからって、指先からくっつけて測ろうとしてるのは可愛すぎるだろ。
    「確かに僕の方が長いけど、そんなのこの距離からじゃ誤差だろ? だいたい長さじゃなくて僕の腕がいいからでしょ。ほらほら、次は悠仁の番だよ」
    「くっそー。ぜってぇ負けねえ」
     負けん気の強い可愛い恋人の頭を一撫でして、僕はダーツを回収し悠仁の背後にまわった。
     フォームを整えた悠仁が一呼吸してダーツを投げると、僕を真似て狙ったであろう痕跡が垣間見えつつも、残念ながら隣のシングル的へと刺さる。
    「惜しいね。もう少し右」
     振り返りこそしないが、僕のアドバイスを受けさっきよりほんの少し手首を右に傾けた二投目。
     ラインは良かったものの、またもシングル的へと刺さり、悠仁の背中は落胆の色を見せる。
    「ラストだよ悠仁」
     ハイテーブルに置かれたドリンクを一口飲みながらエールを送れば、悠仁は最後のダーツを前後に揺らし、タイミングを計って指から離れた放物線は吸い込まれるようにダーツ中央、ブルへと刺さった。
    「っああ! でも真ん中当たった!」
     悔しそうな声を漏らすも、ブルは高得点。初めてやる人間が連続で当てるには難しい。体を使った、ましてや勝負事とあらば流石悠仁といったところか。
     ダーツを回収した悠仁が苦笑いで戻って来たので、僕はそのまま捕まえて一緒にスローラインへと立つ。
    「え、ちょ、先生?」
    「多分僕、何回やっても全部トリプルに入れちゃうと思うんだよね。それなら今度誰かと来た時アッと言わせるのに、悠仁を強くしてあげようと思うんだけど、どう?」
     そんな機会があるかは知らないし、もっともらしい理由をかこつけて、悠仁とイチャイチャ出来るなら楽しいひと時だ。悠仁は二つ返事で目を輝かせた。
     文字通り悠仁の手を取り足を取り。この辺の角度でこのくらいの力加減で、視線はここ。なんて何本か投げていたら、まだ数ゲーム残っているところで悠仁が突然リセットをかけた。
    「先生、ちょっと休憩しに別のとこ行こ」
     そう言って腕を引っ張られ、ダーツ場を後にする。先行く悠仁の背中を見ながら、僕はどうしたって綻ぶ頬を律する事は出来なかった。
     僕が最初にスローイングした時から、否、むしろダーツ場に来た時から周りが少し騒がしかったのは知っていた。
     僕のこの見目だ。女の子から声をかけられるのはよくある事。これが夜なら酒も入ってる連中も居たりして、肝を据えた女が馴れ馴れしく声をかけてくる確率は高いが、今日はまだ昼間。客層もサボりの学生やカップルなんかだったのだが、チラチラと視線が忙しなく交差していたのは嫌でも気付く。
    「ゆーじ」
     ほんの少し歩幅を広げるだけで、悠仁を抱き締めるのは容易い。
     個室が並ぶ通路。人気もなく立ち止まれば、悠仁も向き合って抱きしめ返してくれた。
    「急にごめん。でも先生、カッコイイんだもん」
     恋人の急なデレに、思わず胸がギュッと締め付けられる。そりゃ僕だって男の子ですから。好きな子にカッコイイって言われたら、嬉しくて赫が発動しそうになる。しないけど。
     しかし抱き合ったのは一瞬で、ポツリと零し終えた悠仁はすぐに僕から離れ、何事もなかったかのように再び前を歩き出す。
     映画までまだ時間がある。
    「次はカラオケ入ろうか。ダーツは僕の勝ちだから、罰ゲームにモノマネね」
     そう声をかければ、悠仁はすっかりいつもの調子で僕の隣に並んだ。
    「えー! あんなんほぼ勝負じゃねーじゃん」
    「いや僕の勝ちだろ? んー……まぁある意味悠仁の勝ちだったかもしれないけど」
     悠仁が投げた愛の矢は、余すことなく全部僕の真ん中に刺さっているのだから。
     
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