「本日はお忙しい中有難う御座いました。特級呪術師様に来て頂けるなんて……」
インタビューもあらかた終わり、記者が締めに入ろうとしている。
「ほんとだよ~? 僕はとっても忙しいんだからね。でもまぁたまには皆にサービスしないとねぇ」
五条は深く腰掛けたまま身振り手振り雄弁に語ると、隣に座っている虎杖がヒョイと身体を乗り出す。
「サービスって?」
「雑誌で僕を見れるんだからサービスでしょ?」
「ふむふむなるほど?」
「はい悠仁、そこで首傾げない!」
一室に笑いが連鎖する。
今日のインタビューを完遂出来たのはこの虎杖のおかげと言っても過言ではない。
以前単独で五条に取材をした時はあからさまな早くしろオーラとつっけんどんな物言いに、インタビュアーは胃に穴をあけて帰ってきたと言われている。そのまた昔五条が高専生だった頃取材をした時は、皆ヤンチャと言うかやりたい放題というか。普段は残るケータリングはおかわりを要求されたあげく、どこぞの何の方が美味いからそれを持ってこいだのと、一回の取材に莫大な費用がかかったという逸話もある。
そんな話を聞いていたので今回の取材班は入念な準備をし、皆構えて今日の日に挑んだ訳だがとんだ拍子抜け。
時折ピりつきそうになる場面があれど、先のような虎杖の何食わぬファインプレーで、いとも簡単に五条を笑顔にしてみせるのだ。
「お二人は本当に仲が宜しいんですね」
「先生って先生に見えないでしょ? 先生みたいな先生俺初めてだし、先生といるとめちゃくちゃ楽しいんだよね。あ、でもちゃんと尊敬してます。さっきも言ったけど先生には助けてもらってばっかでさ。今はまだ全然だけど早く先生に楽させてやりてぇし、近くで吸収できるものは吸収したいんで。って、なんかハズっ」
「聞いた? ほんと僕の悠仁っていい子なんだよ~」
五条のスラリと伸びた腕が横に伸び、脇の下に虎杖の首を捕まえてわしゃわしゃとじゃれ合っている。
終盤ともあれば当初貼られたバミリの位置から二人の椅子はだいぶ近づいていた。
「じゃあ最後にもう一枚、お写真いただきたいので……」
カメラを縦に構えたカメラマンを見た虎杖がすかさず立ち上がり、五条の椅子の背後へと回る。そのまま椅子に隠れて腕を伸ばすと、五条の頭から指が生えているような悪戯をしてみせた。
記録としてのカメラがシャッターを切る。
「ふふ、いいですね。でもそれだと虎杖さんの顔が映らないので」
「じゃー超仲良しアピール!」
そう言って背凭れからとび出た五条の首に腕をまわし擦り寄ると満面の笑みをレンズに向ける。
「全世界に僕等のラブラブっぷりが知れ渡っちゃうけどいいの?」
「え、なっ」
シャッターが一定に切り続けられるなか、五条の冗談にちょっと慌てた虎杖が五条から手を離した。
「ラブラブなお二人の写真も良かったんですが、出来ればあまり重ならないで頂けると助かります」
「あ、はいっ。じゃあ先生ちょっとそっちずれて」
「ひどい悠仁くん、サトコが邪魔だなんて」
「言ってねぇ。ほら先生撮るんだから前向いて」
「やだ。カメラより悠仁を見たい気分なんだもん」
「もんって。ほら皆困っちゃうだろ」
やはり五条の傍若無人な態度が出たかと取材陣は少々ヒヤヒヤしつつ、虎杖に心のエールを振りまくる。
「終わったら先生の好きなモン何でも付き合うからさ」
「何でも?」
「何でも!」
「ほらゆーじ、いちたすいちは~」
「「にー!」」
オワレ
勿論美味しく頂かれたのはゆじくんですし。色々撮った写真は全て五条がチェックしました。不意の抱き付き写真はタブレットのデスクトップにもした。(のちのちゆじにバレる)