3コールで出なかったら切る。どうしてもの時は5コール。留守番電話の設定は6コールが終わったら切り替わるのを知っている。
ここ最近、ちょっとばかりタイミングが悪くて、繋がらない事が多かったら『声が聞きたいから、大したことじゃなくても留守電に入れといて』って言われたっけ。 俺だって先生の声が聞きたくて電話してんのに、一方通行じゃ割に合わないから、じゃあ俺の留守電にも入れといてってお願いしといた。
でも先生って、大体俺が電話をとれる時にかけてくるんだよな。だから『留守番電話1件』の表示を見た時に、誰だろ? って普通に再生ボタン押しちゃったんだよね。 『あー、ゴホンッ。……悠仁、愛してるよ』
鼓膜がぞわぞわして、顔に熱が集中したのが分かった。
最初の『あー』は、いつものちょっとおちゃらけた先生の声だったのに、名前を呼ぶ声は、急に落ち着いた優しい声なんだもん。 ドキドキして携帯を離せないでいると、 『悠仁』 って、携帯をあててる耳じゃない方からも先生の声が聞こえて、慌てて辺りを見渡す。すると部屋の入口で、とびっきりの笑顔の先生が俺を見てた。
そりゃそうだ。だってここは先生の部屋。今日は二人揃ってのオフだからって昨夜泊りに来てたのだ。だからまさか留守電の相手が先生だなんて思いもしない。
先生の携帯に入ってる俺の留守電は、今日何してたよーとか、ほんと大した用件でもない些細な会話文なのに。これはどうしたって反則だろ? 抗議の意を込めて、俺は携帯をベッド横に置き、思い切り先生に抱き付いた。