『LOVE GAME』 押し込められたトイレの個室。器用に後ろ手で鍵を閉めながら不躾に唇を塞がれる。
見知った顔と鉢合わせたくらいで驚きはしないが、出ようとした所で急に腕を引かれてこの有様。抵抗するにも、がっちり腕を掴まれ、どうにも弄ばれる。元よりライブを終え興奮した身体に刺激的なキスは快楽を呼んだ。
「ちょ、おま」
「ふふ。かぁわいい。でもこれはお仕置きだから」
ギラギラと青い目を光らせた目の前の男は、さっきまで一緒にステージに立っていたギタリスト。余裕ぶった笑みの奥で、焦燥感が見え隠れするのが俺には分かる。お仕置き? どうせ俺とベースの絡みに嫉妬しての事だろう。
笑ってしまいそうになるのを必死にこらえ、平然を装い睨み返す。
「ここトイレなんだけど」
「だから? 悠仁は別にどこでも誰とでもそうやってキスするんでしょ?」
ほらやっぱり。っつーかそもそもさっきだって、顔を覗き込んだだけでキスしてないし。角度的にそう見えたんだろう。
メンバー同士の絡みなんてお客さんを喜ばせるパフォーマンス。本気のキスを客にまで見せてあげられる程、俺は安くない。
そんな事もこの男は分からないなんて可愛いじゃないか。
「そう思うならそれでもいいけど。そんな俺とキスしたいの?」
思わず顔が破綻する。ついでに胸倉を掴み引き寄せて、舌なめずりでもしてやれば、喉仏を上下させ生唾を飲む音が間近で響く。
『待て』の号令などしていない。伺うように青に見つめられた後、噛みつくように唇が塞がれた。
歯を割りそっと侵入する舌が伺ったのは最初だけ。一気に奥へと伸ばされ、舌の付け根の裏側からなぞるように撫でまわす。勝手に出て来る唾液が、ぬるぬると互いの舌を絡め合い、水音、吐息が個室に響けば、突然ドアが開く音と足音が響いた。
他者の存在を認識してもなお、止めようとしない男を睨みつつ、気付かれないようにとすればする程自身も興奮していく。
早く立ち去ってくれと祈りながら、他人の放尿に耳を澄ませるなんて。むしろその音に俺達の存在が守られていると言っても過言ではない。
不意に股間を撫でられ、あらぬ音が口から洩れた。——絶対にバレた。どれだけ睨んでもこの男を悦ばせるだけ。それならと我慢するのを止めてやる。
上辺のお望み通り、聞かせてやろうじゃないか。
窮屈そうな股間を大きな手にこすりつければ、演技じゃない声が漏れる。個室の外の事なんてもう知らん。目の前の快楽に溺れるように男の首に両腕を回し深く口づけると、——コンコン。
「悟、TPOくらい弁えな。あと多分誤解してるだろうから言っておくけど、悠仁とのキスは未遂だよ。私は本当にしてもよかったけど」
「˝あ?」
——バタン。
漸く唇が離れれば、どすのきいた声と人の立ち去る音が同時に響く。首を斜め後ろにして吠えた男は、ゆっくりと俺の方へ向き直ると、少々罰が悪そうに、へらりと笑った。
「ゆーじがちゅーするのは僕だけだもんね? でもあんなえっちな声他人に聞かせたらダメでしょ?」
非を認めず、むしろ責任転嫁。っつーか後半から目が笑ってないんだよなーなんて見上げながら、首に絡めたままの腕を引き寄せ、顎に小さくキスを落とす。
「そっちが煽ったんだろ? ってかコレ、責任とってくれんの?」
視線の先。膨らむ自身の下半身の前方にも、同じく主張する雄の姿。互いに視線が絡めば、にんまり笑みが浮かぶ。
「口と手どっちがいい?」
「悟も辛いだろ? 兜合わせで一緒にイこ?」
「ライブ後の悠仁ってホントエロすぎっ!」
「そんな俺が好きなんだろ?」
「好き! だからいい加減僕と付き合ってよ!」
「んー、……ほら早くシよ?」
狭い個室の中、がさごそとボトムを下げ互いの熱を癒す。
十分後、スッキリした顔で一足先にトイレを出た俺は、乱れた服と、入口に置かれた清掃中の立て看板を綺麗に戻した。
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って言う両思いだけど付き合ってはいないごゆ^^
僕のモノになって!と、俺は皆(ファン)の悠仁だから♡の攻防。
でもゆじはちゃんと悟が好きだし、実質付き合ってるみたいなもん。
ゆじは途中加入。前ボーカルは彼女を悟に取られて(浮気したのは彼女。悟は誘われたからヤッたまで)脱退。メンバーになる前に、悟の素行(ワンナイトフィーバー)は聞いていたのもあり、付き合わないのは一種の懲らしめ的な。悟が今は自分に一途な事は分かってるつもりでも、本当に好きだから怖くて一歩踏み出せないのも事実。
そんな五悠とかいいんじゃない??