あの目まぐるしい一夜は色んなものを代償に明けることができた。
KKが訪れたのは暁人と麻里が暮らしていた家。あそこで自分も成仏すると思っていたKKは自分の身体が戻り、生きれると分かった瞬間、暁人を真っ先に探した。
そしてようやく見つけた暁人の家、自分が元刑事で良かったと思える。
暁人も予想外だったらしく目を見張って驚いていたがお構い無しとばかりに強く抱き締めた。
「お前がいなきゃもう生きてはいけない」
そう呟いた。それは暁人だって同じだった。誰もいなくなってしまった渋谷の街を得体の知れない者が占領し、そこに1人だけ投げ出されたようなものだった。体を乗っ取るつもりだったとはいえ、KKがいなかったら自分はあの事故で生きていたとしても、霧に襲われてもっと早くに死んでいたに違いない。
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