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    Hamanokarisuma2

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    Hamanokarisuma2

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    ギリギリの投稿となりましたがバレンタインデーのひいなぎ(なぎひい)です!急いでの投稿なので所々おかしい点があるかもです、ご了承ください

    #ひいなぎ
    eveningCalm
    #なぎひい
    confidential

    特別な日【今年は例年よりも特別なものを…】

    02/14、毎年この日が近付くとテレビ等でチョコレートについてや恋人同士のデートスポットをよく観る。

    「ふーん…」

    アタシとしては正直な話、あまり関係無い様に感じている。だって毎年同じ日はやってくるしテレビでも同じ様な物をやっている。テレビでやってるおすすめのチョコレートだって中々の値段だ。デートスポット…ならまだ緋彩と一緒に行くって事を考えれば良いかな?みたいに思うが

    【続いて気象予報です。東京では昨日から降り続いた雪が…】

    コレだ。窓を開ければ東京ではあまりお目にかかれない真っ白な世界、相棒のバイクも車庫から出せないレベルだ。

    「こんなに積もってたのか…」

    去年みたいにシノとチョコを作ってみたいなことも考えたけどこれじゃあシノの家に行くのにも一苦労だ。そしてシノの家に行くのが大変だとすれば緋彩の家に行くのは最早不可能に近い。

    (本当ならチョコを作って緋彩の所に持っていってやったんだけどな)

    さて、外にも出れないし特段やることもない今日は相棒のチューニングでもするかな…


    「あとはここを…よし、こんなものか」

    カレンデュラを下ろして首と肩をゆっくりと動かす。しばらく同じ体勢を取っていた事もあって骨の節々から音が鳴る。肩や首だけでない、ギターを搔き鳴らしていたから指もケアしないといけない。

    「えーっと…確か緋彩から貰ったクリームはっと」

    本来のアタシはあまり指とかは気にしたことがなかった。精々テーピングとか絆創膏をするぐらいだったけどそんなアタシの指に対する手入れが緋彩の気に触ったみたいでそれはもう口酸っぱく言われた。

    《渚ちゃんの指は綺麗で可愛らしいんだからもっと大切にしてあげないといけないでしょ!?》

    それから色んなクリームを渡されて塗り方まで懇切丁寧に教えられたものだ。

    (いや、教えられたっていうよりも叩き込まれたっていう方が正しいかもな…)

    あそこまで言われてしまうと何も言い返せす事なんて出来なかった。でも今になってみれば緋彩はそれだけアタシの事を思ってくれたんだろうし、心配をしてくれてたって事なんだろうな。

    ふと時計を見てみれば既に17時を周っていた。とカタカタ聞こえてくる窓からの音。

    (なんだ?)

    カーテンを開けてみれば雪が強く吹き付けている。近くの電線も揺れている、知らない間にここまで天気が悪くなっていくなんて思ってなかった。

    今日の判断は間違ってなかった。こんな荒天になってしまっては何処へも行けないし家に帰ることだって出来なかったはずだ。

    (バイクどころか電車だって止まるだろうし信号だって…ん…?信号?)

    アタシはここに来てゾッとした。血の気が引けるっていうのはきっとこういう事を言うんだろうなと思った。この荒天、信号が止まる、それらが《停電》を導き出した。外は暗く、電気が消えれば部屋は暗闇に包まれる。


    それは緋彩が持つ心の傷を再びえぐりかねない。


    気付けばアタシはスマホとヘルメットを持って車庫に駆けていた。雪が積もっているから靴の中に入ってビチョビチョになるがそんなのはあとから乾かせばどうにだってなる。

    「早くバイクを…!」

    車庫に着いてからはいつものようにエンジンをかける。本来なら冷えたエンジンを温めてから出発しないと故障の原因になる、でも今はそんな事を気にしている暇なんて無い!

    「早く…うわっ!!」

    なのに焦るアタシをまるでバカにするかのようにバイクがコントロールを失って転倒しかける。

    「こんのぉ…!」

    急いで左足で踏ん張って何とか転倒だけは回避した、早急に体制を立て直して緋彩の家へ向かう。

    (分かってたけど…やっぱり今日は最悪の天気だ!)

    しばらくバイクを走らせて嫌でも分かるこの悪天候と最悪の道路状況と視界。前の車は分かってもその前の車の状態は分からない、雪と水が混ざり合ってバイクのタイヤに絡み付いてくる。

    (何でこんな…!)

    焦るアタシ、そんな中で視界に入ってきた微かに光って見える赤いランプ。見えてきたのはボンネットが大破しフロントガラスが粉々に砕けた車、救急車から隊員が降りてきて騒然としている。

    そんな光景を見て勢いのままに飛び出してきた事を後悔した。頭に過ぎるのは事故、そして死。

    (……っ!)

    引き返す事も考えたがいつものルートを通っているからアタシ自身が今どこにいるのかを嫌でも理解している。今いるこの場所はまさにアタシの家と緋彩の家の中間地点、進むのも戻るのも変わらない。それこそ悩んで立ち止まり続ければアタシにとっても緋彩に取っても悪手になる。

    悩んでいる暇なんてなかった。そうして決断したアタシは改めてハンドルを握り締めて走り出した。もう余計なことは考えられなかった、とにかく生きて緋彩の部屋へ向かう。それだけだった。

    結局、いつもよりも3倍近くの時間をかけてようやく緋彩の住む家に到着した。バイクを停めたアタシは息を切らせながら緋彩の家へ駆け込んだ。

    「緋彩!!」
    「えっ、渚ちゃん!?」

    緋彩の家は電気が付いている。奥からは緋彩が驚いた顔をしてやってきた。

    「良かった…、停電になってなかった…」
    「こんなビショビショになって…ちょっと待ってて!今タオル持ってくるわ!」

    急いでタオルを用意してくれる緋彩を見ていつも通りの緋彩だと確信すると一気に安心して力が抜けた。ヘルメットも落として玄関にへたり込んでしまう。

    「ヘルメット…もしかしてこんな天気の中なのにバイクで来たの!?」
    「居ても立っても居られなくなったっていうのか、もう何も考えられなくなって…」
    「と、取り敢えず私の肩に掴まって!」

    緋彩にタオルで身体を拭いてもらってから肩を借りて中に入る。靴下が濡れていてアタシが歩いた跡には水が。

    「緋彩、ごめんアタシ靴下も水浸しで…」
    「あとで拭いてあげるわ、取り敢えずここに座ってて今温かい飲み物用意してあげるから」

    心配してやってきたのに結局いつもと変わらない状況になっていく。仕方無く濡れた靴下を脱いでタオルで足も拭かないと。

    「…ん?うわぁ!?」
    「渚ちゃん?…どうしたのよその足!!」

    驚きのあまり思わず挙げてしまった声、その声につられてやって来た緋彩も同じ様に反応する。靴下を脱いで顕になったのは腫れ上がっていた左足首だった。

    (もしかしてあの時…!)

    もしかしなくてもバイクと共に転倒しそうになって踏ん張ったあの時のものだろう。落ち着いて心の整理が付き始めた途端、その腫れ上がりに相応しい鈍痛がアタシを襲う。

    「や、やばい、痛い…⊃」
    「し、湿布と包帯と…!!渚ちゃん…!!」






    緋彩を心配して頑張って来たのにいつもと変わらず何から何まで世話をされてしまったアタシ。

    「良かった、足も軽症みたいね」
    「………」


    何やってるんだろうアタシは


    緋彩が不安になってると思ってたのに

    アタシが緋彩を不安にさせた

    緋彩が心配で来たのに

    緋彩に心配をかけさせてしまった


    アタシは…アタシは…!


    「…渚ちゃん?」
    「ごめん…」
    「え?」

    「ごめん…!アタシは…緋彩が心配で…一人で心細いんじゃないかと思って…!」
    「……」
    「緋彩が…暗い場所駄目だから…だからアタシが近くに居てあげないとって…!なのにアタシ…!緋彩に迷惑かけて!」
    「渚ちゃん…ありがとうね」
    「全然何も出来なくて!何とかしてあげたくて!!でもアタシ迷惑で!!」
    「ううん、迷惑じゃないわ。だって渚ちゃんがいてくれるんだもの」
    「緋彩の!ために!!」
    「分かってるわ渚ちゃん。私が暗いところが駄目なのを知ってくれてるんだものね。一人だと心細いのも分かってくれてるから来てくれたのよね?」
    「緋彩が、かわいそうで!だから!!だからぁ!!」
    「ありがとう、渚ちゃん」
    「わああああああああああああああああああああああああああ!!!」















    どれほど泣いたんだろうか分からない、だけど泣いても泣いても情けないアタシに変わりはなかった。緋彩はそんなアタシをずっと抱きしめ続けてくれた。涙で服が濡れても離すことはしないでずっとずっと抱きしめてくれている。

    「渚ちゃんは優しい娘だもの」
    「……」
    「自分が危ない目に遭うって分かっていても私達の事を優先してくれる優しい娘よ」
    「……」
    「ケガをしてもそれを言い訳にしない、自分の痛みよりも私達の痛み、苦しみを理解して心配してくれる気持ちを持ってる」
    「……」
    「でもね、渚ちゃん」
    「……」
    「渚ちゃんが私達に対して思ってくれているのと同じぐらいに私達も渚ちゃんの事を思ってるの」
    「……」
    「渚ちゃんが危ない目に遭ってたら私達も渚ちゃんの為に動くし渚ちゃんの為に出来る手助けをしてあげたい」
    「……」
    「渚ちゃんが何かに苦しんでる時は私達も一緒になって助けてあげたいの」
    「……」
    「だって皆渚ちゃんが大好きだもの」
    「…!」
    「それは私も同じ…ううん、椿ちゃんにも葵依くんにも負けてないわ。私が…いっちばん渚ちゃんの事を思ってる」
    「ひいろ…」
    「だからお願い…、もう…もうこんな無茶はしないで…!」

    そう言うと緋彩もまたさっきのアタシと同じ様に、はたまたそれ以上に泣きはじめた。緋彩の絞り出す様な声には重みがあった、他の誰よりも思ってくれるその気持ち。緋彩からの涙ながらの訴えにアタシは改めて自分が今回やった過ちの重さを理解させられた。











    「はい、渚ちゃん」
    「ありがと、緋彩のヤツも出来たぞ」
    「ありがとう」

    時刻は22時を過ぎた。アタシはあの後緋彩のご飯を食べた後、折角のバレンタインデーと言うことで互いに互いのココアを淹れ合う事にした。

    「あー、やっぱりこの味だなぁ」
    「うん、美味しいわよ渚ちゃん」

    アタシがいつもの味に落ち着けば緋彩もまたアタシの作ったココアに喜んでくれる。天気は相変わらず荒れ模様、これじゃあ当然ながら家なんかに帰れるはずが無い。となると必然的にアタシは今日は緋彩宅で一泊だ。

    「ねぇ、渚ちゃん」
    「ん?どうした緋彩?」
    「私、今日は少し心細いかも?」

    嘘だ、緋彩からは余裕の雰囲気が漂っている。それなりに付き合ってきたから少しずつ分かってきてる。本来ならアタシが仕方無いなって言って一緒に寝るパターンになる。

    だけど今日は…

    「奇遇だな、緋彩。今日はアタシも緋彩と一緒じゃないと寝れないんだよな」
    「え?」
    「だからアタシの手を握ってさ、一緒に寝てくれないか?今日ぐらいはいいだろ?だって…」




    今日は特別な日なんだから
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