空に誓い6 家まで送りとどけられ、寝室に入っても、悟は憂太の腕の中でぐっすりと眠っていた。
かなり強力な麻酔らしいが、それでも三十分程度しか効果はないと教えてくれたのは夏油だ。それほどまでに、悟は強く特別な獣人なのだという。
(……あと、五分)
夏油が麻酔銃を撃ってから、まもなく三十分が経つ。
窓の外はすっかり夜で、カーテンの隙間から十六夜の月明かりが寝室に差し込んでいた。昨夜が満月で、今日はその翌日。だから、昨日よりは悟もマシな状態だ、と教えてくれたのも夏油だ。
(僕は、なにも知らなかったんだ……)
ゆっくりと悟の大きな身体をベッドに下ろし、その毛並みを優しく撫でる。狼、なんて想像の中でしか知らないが、両腕でやっと抱えられるほどの大きな体躯と、鋭くも凛々しい顔立ちは、まさに想像の中の狼の姿だ。
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