花火色「あ、花火」
祭莉の声に振り向くと、ちょうど夜空に大輪の花が咲いたところだった。一拍遅れて、どんっ、と重たい音が鳴り響く。
「あー、そういえば、今夜は花火大会だったっけな」
「綺麗……」
俺の話を聞いているのか、いないのか。祭莉の目は花火に釘づけだ。
きらきらと瞳を輝かせて夜空を見上げる横顔がなんだかまぶしくて、俺はそっと目を逸らした。
「……近くだし、見にいくか?」
「えっ?」
「花火」
「いいのっ?」
「ああ」
「行く! ありがとう、陽!」
「……どういたしまして。ほら、行くぞ」
思いがけず向けられた笑顔に、顔が熱くなる。
そのことに気づかれないようにと、慌てて踵を返した俺を不審がることもなく、祭莉は楽しそうにあとをついてくる。
「……来年も」
「うん?」
「来年も見られたらいいな、花火」
俺の唐突な言葉に、祭莉は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにこくりとうなずいてくれた。
「来年も、陽と一緒に見たい」
ぽつりとつぶやいた祭莉の頬が赤く染まっていたのは、花火に照らされたせいなのか、そうじゃないのか。
(勘弁してくれよ……)
こっちはずっと我慢してるのに……そんな顔されたら、期待するしかないだろう?