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    パイプ

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    パイプ

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    会話しだすと途端に文字数が多くなる...ので!捜索パートまだつづきます...
    ※私の創への解釈は一般より歪んでいる認識があります。どちらかと言うとアンデクライベの偽物の方が自己解釈にぴったり当てはまるようなイメージです。

    #ひよジュン
    Hiyojun

    九尾の日和と人の子ジュン———声が、聞こえる。
    寂しい。ここはどこ?みんなに会いたい。早く帰らなくちゃ。・・・寂しい。

    ここは、どこだろう。確かオレは今、おひいさんとおひいさんが昔住んでいた社に泊まりに来ていて。そうだ。ここは、村。たしか、ここは村長さんの家。どうしてここに?社の日和の部屋であの人にぎゅうぎゅう抱きつかれて眠ったはずなのに目を覚ますとそこに日和の姿はなく、景色も眠る前とはがらりと変わっていた。これは、夢?混乱するジュンの視界の隅で影が動く。
    「誰か、そこにいるんすか?」
    恐る恐る発声するが返事はない。
    「あのぉ、います・・・よね?」
    もう一度暗闇に問いかけると昼間に聞いた小さな声がはじめて返ってきた。
    「えっと、そうです。ぼく、ここにいます。」



    「毒蛇。きみに少し聞きたいことがあるね。」
    夕刻、社に帰ってきてから茨のつくった夕食を食べながら、今日の出来事を簡単に報告して、凪砂と茨のいる手前、二人で一緒にお風呂に入ることをやたらと恥ずかしがるジュンを強制的に風呂場に引き摺り込み、布団に一緒に入って抱きしめてやれば、緊張の糸が解れたのか疲れていたのか、すぐに眠りについてしまったので日和はジュンの眠る布団をそっと抜け出して茨の元を訪れていた。

    「いらっしゃると思っておりました。さ、どうぞこちらへ。お茶でも準備いたしましょう。」
    「いいね。いらない。そんなことより、今回の件できみが本当に呼びたかったのはぼくではなくジュンくんだね?」
    日和の問いかけに茨の動きが一瞬、ぴくりと止まる。その動きに当たってほしくはなかった推理が当たったと確信した日和からため息が漏れる。
    「・・・どこで、きづかれました?」
    「悔しいことについさっきだね。恐らくうさぎは天敵であるきみのことを恐れているね。捕まったら丸呑みにされちゃう〜と思ってるんじゃない?それでも出してやりたいときみは思った。———そこにどんな思惑があるのかまではぼくには分からないけれど。で、出してやる為には自分以外の第三者が必要だと考えた君はちょうど良く凪砂くんからぼくたちのことを聞いて、コレだと思った。ちがう?」
    「さすが殿下!厳密に言うと"出してやりたい"ではなく"出さなければならない"という使命感の元の行動ですが、それ以外に大方間違いはありません。さすが閣下のご友人!少ない情報でここまで言い当てられるとは、動揺を隠せませんな!」
    態とらしく、大袈裟に驚くそぶりをする茨に日和はここにきて何度目かのため息をつく。
    「これで終わりじゃないね。ぼくが怒ってるのはむしろここからだね。」
    「おや?気付かぬ間に殿下の気分を害してしまっていたとは。それは誠心誠意、謝罪せねば。」
    「思ってもないことはいちいち口に出さなくていいね。・・・ぼくたちの存在を知ったきみはうさぎを捕まえるのにぼくでは"弱い"と考えたね。釣り餌としての機能に欠けると言うべきなのかな?だから、きみの本当の目的はジュンくん。非力なうさぎとはいえ、きっと人間のジュンくんを捕まえて人質くらいにはできるね。きみは、ジュンくんを餌にうさぎを誘き出そうとしている。話してるだけでも腑が煮え繰り返りそうだね。」
    「使える手は全て使い、作戦成功を掴み取るのが自分のやり方でして。人間は餌としての使い勝手はいいのですが、たかが一人いなくなっただけでアイツら騒ぎやがるんですよね。その点、既に行方不明者として人間界との繋がりを断絶しているジュン氏はいいんですよ。作戦中の殉職・・・なんてことになっても人間が捜索などと宣って山を荒らしにくることはないのでね!」

    「・・・日和くんと茨、いつの間に仲良しになってたの?」
    二人の間に燃え上がっていた炎は突然ひょっこりと現れた凪砂の一言によって一瞬で消化された。仲良しなわけないよね!?と否定する気力さえも吸い取られたような感覚に陥る。それは茨も同じだったようで、昼間は逆毛をたてて怒っていたのに、今はぽけっとした表情のまま無抵抗に凪砂に撫でられている。
    あぁ、凪砂くんってこういう子だったな。と、懐かしいような唖然としたような気持ちになる。
    「凪砂くん、どうしたの?ぼくに会いに来てくれたの?あ、それとぼくと茨は全く持ってなかよしなんかじゃないね。」やはり大事なことなので否定しておかなきゃとひとこと付け加えておく。
    「・・・あれ?そうなの?二人がたくさん話していたから仲良くしてるのに邪魔しちゃいけないなと思って暫く見ていたんだ。・・・仲良しなわけじゃないなら早く声をかけた方がよかったかな。」
    ごめんね?と首を傾げる凪砂の隣で茨が完全に頭を抱えた。
    「閣下。今日は歯磨きの後、部屋から出ない約束でチョコレートを一粒多く食べられたのをお忘れですか?」
    「・・・ううん、覚えているよ。だから私は茨の側で本を読まずに寝室で大人しくしていたんだ。」
    目の前で繰り広げられる会話と凪砂の「えらいでしょ!褒めて!」と言わんばかりの顔に日和は目眩に襲われる。なんて俗物的で躾の行き届いた神なんだろう。チョコレート?歯磨き?目の前で繰り広げられる会話の内容は五歳児と母親のものであるのに、目を開けて現実を見てみるとそこには大の男が二人しかいない。
    あまりに平和ボケしたやりとりに今日はもう話し合いは無理だねと席を立とうとしたところに凪砂からの声がかかる。
    「・・・日和くん。ジュン、いなくなっちゃったみたい。」


    触り心地のよさそうなもふもふのうさ耳を生やした青年は紫乃創という名前らしい。茨が一度だけ見かけたことがあるといっていた綺麗な水色の髪の特徴もあっているので、探し人はこの青年で間違いないとジュンは思う。
    「あの、えっと、いくつか聞いてもいいですか?」
    どこから出してきたのか、上等な湯呑みに汲まれたお茶を一口のんだジュンが緊張の解けない声で話しかける。創はジュンのいきなりの発声に驚いたようだったが、そのあとすぐににこりと愛嬌のある笑みをつくって「ええ、どうぞ」と答えてくれた。
    「えっと、まずここって村長さんのお家ですよね?オレ、社で寝てたと思うんすけどどうしてここに・・・?あと、夕方ここで泣いてたのは、えっと、紫乃さん・・・?です?それから、」
    「ふふ、気になること、沢山ありますよね。これ以上聞いちゃうとぼくも分からなくなっちゃうので、先にぼくから話させてくださいね。」

    それから、創と名乗るうさぎは自分がいつもは四人で旅をしている旅うさぎであること、珍しいお花が咲いてるなと思ってふらりと近寄るとここから出られなくなってしまったこと、ここには怖そうなヘビさんがいて罠にはまった自分を食べようと毎日探しに来ることを教えてくれた。・・・いや、あんた、この人のこと食べるつもりだったんですね。と内心で茨にドン引きしつつ、創の話に聞き入る。
    ジュンがここにいることについては、創もなんと説明したものかと悩んだのち、「空間に穴を掘ってここまで連れてきちゃいました。ごめんなさい。」と茶目っけたっぷりに笑った。日和といると自分の持つ少ない常識では考え及ばないことが多いので、分からないことには慣れているジュンが「そうなんですね」と余りにあっさり受け入れるものだからこれには創の方が驚いてしまった。
    「他には何か聞きたいことはありますか?」
    創のトークスキルはなかなかのもので、途中からは本題を忘れて酷く穏やかな時間を過ごした気がする。ほかに、ききたいこと?そういえば、どうして、だめだ。あたまがぼーっとしてきて、なんでオレは「ここに、」

    全身が弛し、糸の切れた操り人形のように卓に伏せってしまったジュンを心底申し訳ないといった表情で創が見つめる。数瞬してジュンが動かないことを確認すると、その視線をジュンの飲んでいたお茶へとずらす。ジュンの飲んでいたお茶は創が調合した眠くなるものだった。途中からは聞き上手なこの人につい、楽しくなって話し込んでしまったが、元の目的はお茶の効果が出て眠るまでここにいてもらうことだった。
    「ごめんなさい。でもこうするしかなかったんです。ぼくは、みんなの元に戻らなきゃいけないんです。」
    せめてもと家で見つけた保存状態のよい着物をその肩にかけ、空間に穴を掘ってジュンを隠す。
    「あなたのことを傷つけたりはしないので、どうか少し眠っていてくださいね。」
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    パイプ

    PROGRESSお久しぶりです。
    久しぶりすぎてこの世界観に帰ってこれてないかもしれない...
    今回、一旦最終章となります。
    生きる時間の違う九尾と人の子は果たして同じ時間を同じ気持ちで生きていくことはできるのでしょうか?
    九尾の日和と人の子ジュン「燐音先輩。」
    「きゃはは!どうしたァ?ジュンジュンちゃんよお。そんなマジな顔しちまって。遂に俺っちにホレちまった?」
    「人の子って大人になっても変化していくもんですよね?」
    「は?」

    日和が会合とやらで出掛けていると風たちが噂しているのを聞き付けた燐音がジュンで遊んでやろうとこの家に遊びに来たのが凡そ一時間前。ところが今日のジュンはどこか浮かない顔をしていて、いつもならやれやれと言う顔をしながらも燐音の悪戯や遊びに付き合うジュンだが今日はそれさえもなく、やっと口を開いたかと思いきや先の一言だ。

    「ナニそんな当たり前のこと聞いてンだ?成長して老化して死んでいくっしょ?ニンゲンなんてモンはよォ?」
    その当たり前さえコイツは知らないままここに来たんだっけかと燐音が思い直しているとジュンは「そっすよね」と知っていたような口ぶりで返して視線を完全に窓の外へとやってしまった。
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