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    kapiokunn2

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    kapiokunn2

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    付き合って初めてのデートが見たい!!🐟🐠🐡

    つぐみつぐみ

     お互いの予定は部屋のカレンダーに書き込むことにしてあるので、少し先まで大体把握してる。丞の今日の予定は、客演先での稽古、それが終わったらデートだ。待ち合わせの時間は15時で、多分丞のことだから10分前には着いている。付き合って初めてのデートって、丞でも緊張とかするのだろうか。いや、もういい大人だからきっとそんなことはない。俺なんて、普段と大して変わらない服装なのに、出かける前に何度も鏡を見てしまったりした。若葉色のカーディガンはこの春新調したお気に入り。
     丞のデートの相手は俺なのだ。遅れてはいけないと早めに出たら15分前に着いてしまった。でも遅れるよりはいい。流石に丞はまだ来ていなくて、俺はベンチに座って読みかけの本を開いた。待ち合わせて二人で出かけるなんて別に珍しくも何ともないことなのに、本の内容は少しも頭に入って来なかった。時計に目をやるともう5分前で、丞にしては遅いなとスマホも見た。連絡が来ているのを見逃しているのかもしれない。しかし通知は特に来ていなかった。そして、再び本を開いた時だ。
    「悪い、待たせた」
     丞の声が降ってきた。いつも聞いているのに、いつもと違う。うまく言えない感覚だ。
    「ううん、そんな待ってないよ」
    「そうか? じゃあ……行くか」
     向かうのは地下鉄の駅。肩を並べて歩くと丞の背の高さや肩幅の広さを改めて実感してしまう。俺もそこそこに身長はある方だから見上げたりするほどではないけど、丞とこれまで付き合った女の子からしてみたらすごく大きく見えたはずだ。きっと、すれ違う人の目を引く自慢の彼氏だったんだろうな。
    「紬。おい、紬!」
    「え?」
    「駅着いたぞ」
    「あ、ごめん……」
     気がついたらもう改札で、慌ててパスケースを出した。目的地までは二十分くらい。待ち合わせしていたときは緊張したけど、隣にいるとやっぱりすぐにいつも通りになれた。
    「混んでるかな」
    「いや、平日のこの時間だしな。さっきサイト見たら空いてるって書いてあったぞ」
    「そういうのわかるんだ……便利だね」
    「お前……生徒に呆れられないか?」
    「俺だって最低限のことはできてるよ。それに……」
     乗り換えの駅に着いた。電車を降りてから、途切れた会話をまたつなぐ。
    「丞が調べてくれるなら、俺は困らないし」
    「……まあ、お前に調べさせるよりは」
     でしょ。何で得意げなんだよ。そんないつもの調子で話していたらあっという間に目的地に着いた。それは、駅前の大きなビルの上の方にある水族館。出来ていることは知っていたけどなかなか来る機会がなかった。
     二人で出かけよう、ということになり、まずは行き先の相談をした。観劇は、たまたま二人とも今見たいものがなく、映画も同じだった。いっそ車で少し遠出するか、という話になった時ふと思いついたのだ。
    「こんなとこに水族館あったんだな」
    「そんなに大きくはないみたいだけど、その分展示に凝ってるみたいだよ。カフェもちょっと気になってるんだ」
    「じゃあ後で行ってみるか」
    「ピラルクが食べられるらしいよ」
    「それは別に……」
     展示ゾーンをぐるりと一回りして、やっぱりもう一度見たいところがあってもう一周。ひとつの水槽をのんびりと眺めるのは、平日で空いているから出来ることで、贅沢な気持ちになる。気持ちよさそうに泳ぐ魚やくらげ、揺れる海藻を俺はいつまでも見ていられた。ちらりと横を見ると、丞もじっと水槽を見ていた。
    「面白いね」
    「ああ……水族館なんていつかのイベントぶりだけど、結構楽しいな」
    「あれも楽しかったね」
     鳥や動物も見て一通り楽しんだ後は、カフェで休憩することにした。夕飯に響いてしまいそうだからとピラルクは諦め、コーヒーとカフェオレだけ。窓の外を見ると、空はもう日が沈み始めていた。
    「あっという間に夜だね」
    「水族館にいると外見えないからな」
    「お腹もすいてきた」
    「だな」
     夕飯は外で食べてくると連絡してある。しかし、どこに行くかまでは決めてない。その話になったら、丞の食べたいものがいいと言うことに決めていた。こんなときってやっぱり、彼氏が先に店を予約していたりするのだろうか。俺たちの場合どちらが彼氏とか、ないけど。
    「メシ食うとこ、」
    「うん。丞は何か食べたいものある?」
    「いや……もう決めてる」
    「え……っ、まさか予約とかしてくれてる?」
    「予約はしてない」
     わあ、と俺は思わず口に出してしまっていた。
    「すごい。なんかデートっぽい」
    「何だそれ」
    「だって……待ち合わせして、水族館行って、夜は一緒にご飯食べて……それから」
    「は?」
     俺は持っていたカップを落としそうになった。それから? それからに続けて何を言うつもりだったのか、自分でもわからない。いや、いい歳をした大人たちなのだから、何が続こうが別に恥ずかしいことなんてないのに。しかし俺が何も言えずにいると、丞の指先が、とんとんと俺の爪の先を叩いた。
    「……俺は今日、帰るつもりないぞ」
     俺は思わず口元を覆ってしまった。丞が、照れている。至くんに言わせたらきっと、スペシャルウルトラレア、みたいなあれだ。今日待ち合わせ場所で丞と会ってから感じてた、むず痒いようなくすぐったい感覚の正体がわかった気がする。きっと、これが恋愛をしているということなんだと思う。
    「うん。俺も丞のこと帰すつもりないよ」
    「何だそれ」
    「いいじゃない。俺たちっぽくて」
     藍色の空の下を二人で歩く。お腹も空いたし、もっと触りたいし、触ってほしい。恋愛は忙しい。嬉しいことも悲しいことも、時には憤ったりすることもきっとある。でも俺は、俺と丞は、お互いを選んだんだ。
     軽くぶつかったふりで丞の指先に触れた。好きだって気持ちが、少しでも伝わるように。
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    Replies from the creator

    kapiokunn2

    REHABILI二人は俺の推しCP。的な感情の至視点の同棲丞紬です。
    春も嵐も。 遊びに行くのは二回目だった。一回目は、二人が引っ越してすぐ。あの時はまだ開けていない段ボールがいくつかあったけど、あの二人のことだから今はすっかり片付いているだろう。シンプルで無駄なものがなくて、でも所々にグリーンやちょっと独特のセンスな雑貨が置いてある、それぞれの譲れないところがよくわかる部屋。駅からの道は何となく覚えている。わからなくなっても地図アプリ使えばすぐわかるし、と俺は記憶を頼りにぶらぶらと歩いた。ぶら下げた保冷エコバッグの中には大量の差し入れ。ここに来る電車の中では、カレーのにおいが車内に充満してしまわないかとちょっと不安だった。
     確かコンビニがあったはず、と角を曲がった。記憶は間違っていなかったようで、すぐ先にコンビニがあって、そこからまた少し進んだところのマンションの前で俺は足を止めた。エントランスの脇に小さな花壇があり、カラフルな花たちがそこを彩っていた。片手に持っていたスマホで電話をかけた。着いたよ、と伝えてエレベーターで三階へ。三階くらい階段上れ、と誰かさんには言われそうだが俺はなかなかに重い差し入れを持っているのだ。許されたい。廊下の突き当たり、一番奥の部屋。思えばもうそれなりに付き合いの長い友達の家なので緊張するのもおかしな話なのだが、インターホンを押すのはちょっと勇気が必要だった。そういえば俺、友達の家に行くとかもほとんどなかったし、一応付き合ったことのある彼女の家なんて一度も行ったことない。きっとここに住んでる二人は、お互いの家もまるで自宅みたいに行き来していたんだろうな。よし押すか、と俺は人差指でインターホンのボタンをロックオンした。するとだ、押してないのにドアが勝手に開いた。俺もついに不思議な力に目覚めたのかと思いきや、ドアの向こうから現れたのは家主の紬だった。
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