初恋が泣いている「結婚するんだ」
丞には、半年くらい前に恋人ができた。二回、舞台で共演した一つ年上の女優さんだった。
俺たちは再会したときに既にいい歳だったし、それから何年も経っているのだから、良い恋愛をして結婚なんて何もおかしくはない。それに、長年の付き合いの幼馴染が結婚するなんて喜ばしいことだ。式は挙げなかったけど入籍はして、丞は俺とルームシェアしていたマンションを出て行った。部屋が片付き次第新居に遊びに行かせてもらうことにして、俺は丞に花束を贈った。引っ越し祝いに何がほしい? と聞いたら、「お前が選んだ花がいい」と言ったのだ。
「意外だね」
「……花、飾ろうと思ったら片付け早く進むだろ。そこだけでも」
丞らしい理由に笑ってしまった。だからよく足を運ぶ花屋さんに行って俺は花を選んだ。大切な人の佳き日に贈る花を。
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