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    kapiokunn2

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    秋🍁

     茹だるような暑さはいつの間にか消え去り、夜と朝は涼しくなったと思ったら、もうすっかり空は秋だった。少しひんやりして澄んだ空気は、外で思い切り体を動かすのに丁度いい。丞にとっての秋は幼い頃からずっと、「スポーツの秋」だ。そして、スポーツなら年中楽しんでいるだろうと幼馴染はきっと言う。そんな幼馴染は今、美術館で『芸術の秋』を楽しんでいる。誉が出版社からいま人気の展覧会のチケットを貰って来たのだ。丞も声を掛けられたが、あまり性に合わないので遠慮しておいた。丞は今日は予定がなかったので暇を持て余していたところ、監督が買い出しの人出を募っていたので、隣町のホームセンターまで車で行ってきたところだ。本格的な紅葉にはまだ早いが、銀杏並木は少しずつ黄色を帯びて来ていて、運転中も目を楽しませてくれた。
     寮に帰るとちょうど紬からLIMEが来ていた。どうやらこの後暇らしい。天気も良いし、どこかでコーヒーでも飲むかということにたった。
    「監督、ちょっと出かけて来る。また何か必要なものあったら連絡くれ」
    「ありがとうございます。夕飯は食べますか? ちなみに今日はチキンときのこのカレーで……ほら、秋ですし!」
    「ああ、飯は食う」
     ここに住んでいると、カレーの具材でも季節を感じられる。監督曰く、季節ごとにスパイスの配合も変えているんだとか。残念ながらそのこだわりまでは丞の舌では感じられなかった。まあ、作る側が楽しめてるならそれで良いのかもしれない。紬との待ち合わせは駅前なので、歩いて向かうことにした。秋の午後の日差しはぽかぽかと穏やかで心地良い。決して急かすことはなく、軽く背中を押して足取りを軽くしてくれるようだ。今日の天気なら、晴れた空の下でコーヒーを飲むのも良いだろうか。
     平日の午後は街を歩いている学生も多い。商店街で買い食いしたり、公園のベンチで話し込んだり。自分と紬もよく同じようなことをしてたな、と微笑ましい気持ちになった。そして、よく高校の頃二人で読み合わせや、それだけでは済まずもはやストリートACTのようなことをしていた公園を通りかかった。ここは小さいが紅葉も綺麗で、一休みには丁度良い。
     普段は何事もなく、懐かしいと時々思うくらいで通り過ぎるのだが、今日は思わず足を止めた。通りから見えるベンチに、あの頃の自分たちがいるように一瞬見えた。勿論そんなはずはなく、学ランを着た高校生の二人組が仲良く肩を並べて座っているだけだった。どちらも笑顔だ。何か楽しい話でもしているのだろうか。片方は高校生にしては体格がよく、もう片方はひょろりと痩せているのも自分達によく似ている。
     再び歩き出して丞はふと思い出していた。紬がこの町を離れていた時のことだ。天鵞絨町のあちこちに、丞は紬の面影を見ていた。さっき足を止めた公園。二人でよく行った劇場や映画館。紬がお気に入りだったコンビニ。
     あの頃は自分が紬に抱いている感情が恋愛感情だとは少しも気がついていなかった。紬を突き放したのは丞なのに、勝手に面影を探して寂しがるなんて女々しいなと自分自身に腹立たしく思うことさえあった。もう会うことはないかも知れないと思いながら、一秒だって紬のことを忘れたことはなかった。

    「丞!」
     待ち合わせの場所で紬が小さく手を振っていた。煉瓦色のカーディガンはこの秋新調したお気に入りらしい。
    「ねえ、何かいいことあったの?」
    「いや。何もない」
    「そうなの? 何だかそんな風に見えたから」
    こうして二人で過ごす時間を作れたのが十分「いいこと」ではないだろうか。言うつもりは全くないが、結局見透かされているようで気恥ずかしい。紬はそんな丞のことなど全く気にせず、あっちに行きたい店があるのだと勝手に歩き出した。風がふわりと丞の背中を押した。
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    kapiokunn2

    REHABILI二人は俺の推しCP。的な感情の至視点の同棲丞紬です。
    春も嵐も。 遊びに行くのは二回目だった。一回目は、二人が引っ越してすぐ。あの時はまだ開けていない段ボールがいくつかあったけど、あの二人のことだから今はすっかり片付いているだろう。シンプルで無駄なものがなくて、でも所々にグリーンやちょっと独特のセンスな雑貨が置いてある、それぞれの譲れないところがよくわかる部屋。駅からの道は何となく覚えている。わからなくなっても地図アプリ使えばすぐわかるし、と俺は記憶を頼りにぶらぶらと歩いた。ぶら下げた保冷エコバッグの中には大量の差し入れ。ここに来る電車の中では、カレーのにおいが車内に充満してしまわないかとちょっと不安だった。
     確かコンビニがあったはず、と角を曲がった。記憶は間違っていなかったようで、すぐ先にコンビニがあって、そこからまた少し進んだところのマンションの前で俺は足を止めた。エントランスの脇に小さな花壇があり、カラフルな花たちがそこを彩っていた。片手に持っていたスマホで電話をかけた。着いたよ、と伝えてエレベーターで三階へ。三階くらい階段上れ、と誰かさんには言われそうだが俺はなかなかに重い差し入れを持っているのだ。許されたい。廊下の突き当たり、一番奥の部屋。思えばもうそれなりに付き合いの長い友達の家なので緊張するのもおかしな話なのだが、インターホンを押すのはちょっと勇気が必要だった。そういえば俺、友達の家に行くとかもほとんどなかったし、一応付き合ったことのある彼女の家なんて一度も行ったことない。きっとここに住んでる二人は、お互いの家もまるで自宅みたいに行き来していたんだろうな。よし押すか、と俺は人差指でインターホンのボタンをロックオンした。するとだ、押してないのにドアが勝手に開いた。俺もついに不思議な力に目覚めたのかと思いきや、ドアの向こうから現れたのは家主の紬だった。
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