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    あもり

    @34182000

    二次創作小説置き場です。
    現在格納済み:fgo、遙か3、バディミ、スタオケ、水星の魔女、マギなど色々

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    あもり

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    突然始まって突然終わる、シンドバットとユナンの幕間、ユナン視点。時間軸的には本編開始前のつもりです。シンドリアにふらっと遊びに来てはシンドバットのそばに居たいけどいられないことを痛感して離れる、みたいなめんどくさい猫ちゃんムーヴ的行動を何度かしてそうだなぁ〜と思いながら書きました。この2人もなかなか複雑でいいよね。

    #マギ
    magi

    不変「言った本人は覚えていない軽くて適当な言葉ほど、うっかり他人を救ってたり殺してたりするものさ」
     開放された窓から南国特有の生ぬるい風が流れてきて、適当に括った髪がそよぐ。僕に向き合うシンドバットの顔は無愛想のままだった。何もとって食いやしないのにと思っていると、
    「そっくりそのままお前に返してやる、ユナン」
    「……ふふふ、根に持つなぁ」
    「俺はお前と違って忘れっぽくないからな」
     わかりやすく捻くれて拗ねた事を言うものだから、思わず笑ってしまう。こんな分かりやすく、変なー警戒心と好奇心があいまぜになった顔。人間の表情筋ってこんな複雑に動くものなんだと感心する。
     それに、こんな人間的で複合的な表情はきっと自分以外にシンドバットは見せないだろう。八人将たちには甘えているからここまで警戒の色は混ざらないし、対外的には七海の覇王としての役どころと面の良さを存分に活かしている。かつて興行として舞台に立った経験も織り込んでいるはずだ。
     まぁ、そんなへんてこりんな表情がわざとなのか、気づいていないのか、自分としてはどちらもでもよかった。
    「やだなぁ〜まだ気にしてるの?しつこい男って嫌われるよ?」
    「何、ひゃと」
     クスクスと笑いながら目の前にある頬をつねってみれば、男前の顔が少しだけ崩れる。
    「………、」
    「ひゅなん?」
    「はいおしまいおしまい!」
     慌てて頬を元通りにしてやると、何なんだとこちらを訝しむような目つきで見られる。
    「元気にしてるみたいだし、この辺でお暇しようかな。じゃあね、シンドバット!」
    「ユナン!話はまだ、」

     裾を掴もうとしたシンドバットの手をするりと抜けて、窓の桟から外へと飛び出した。重力に任せてしばらく下降すれば、聞こえてくる声がぐんと近くなる。視線をやれば、夜でも明るい光があちらこちらに煌めいている。シンドバットが作った、彼の国。南の楽園ーシンドリア。
     木々とぶつかるスレスレまでその景色を眺めたあと、杖を握り直して一気に夜空へと急上昇をかけた。あっという間に雲の上まで来ると、初めて僕は大きく息を吐いた。先ほどまであったむせかえるようなざわめきは消え、ただ時折身体に吹き付ける風の音だけが聞こえる。誰もいないことをいいことに、思わず口から言葉が出た。
    「……、やだなぁ」
     頬を引っ張った時、不意に見せた顔があまりにも、あの時のー初めて出会ったシンドバットの子どもの時とそっくりで、驚いてしまった。人間とは変わっていくものだ。環境、学習、遺伝、適応するために変化し続けることで生き延びてきた生物的志向性。変わらずにはいられない。生物としての根本原理であり、種としての生存戦略だ。わかっている。理解している。
     それでも。それでも、変わらないものだってあることをまざまざと見せつけられる。長く生きれば生きるほどに、転生をすればするほどに、王の器の近くにいればいるほどに。先程のシンドバットの中に、まだ幼い彼がいるように。

     そう、シンドバットは優しい人だ。民のことを考え、戦争をなくし、やがて世界を正しく導くだろう。きっと、彼が一番早くこの"世界"が定めたゴールに自力で辿り着く。マギが、僕が側にいなくても。
     だというのに、心の底にいま渦巻くのは何なのか。見出したのは自分だ。けれど離れたのも自分だ。シンドバットではない、自分自身の選択だ。マギなんてもうごめんだと思っていた。だから後悔なんてしていない。
     それでも何かを確かめるように僕は時折、シンドバットに会いに行ってしまう。この習性は何なのか。王の器の側にいたいとプログラムされ、植え付けられたマギの本能ともいうべきものなのか。
     
     マギでなんかいたくないのに、僕をただのマギに戻してしまう。この世でたった一人の人間。だって、今生の僕の、ー………、

     風が強く吹き付け、帽子に縫い付けられた羽飾りが視界をよぎった。僕は深く被り直し、杖を強く握る。
    「だから君の側にはいられないんだ、シンドバット」
     そう呟くと、さらに高度を上げて僕は夜空の中へと溶けていった。
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    あもり

    DOODLE突然始まって突然終わる、シンドバットとユナンの幕間、ユナン視点。時間軸的には本編開始前のつもりです。シンドリアにふらっと遊びに来てはシンドバットのそばに居たいけどいられないことを痛感して離れる、みたいなめんどくさい猫ちゃんムーヴ的行動を何度かしてそうだなぁ〜と思いながら書きました。この2人もなかなか複雑でいいよね。
    不変「言った本人は覚えていない軽くて適当な言葉ほど、うっかり他人を救ってたり殺してたりするものさ」
     開放された窓から南国特有の生ぬるい風が流れてきて、適当に括った髪がそよぐ。僕に向き合うシンドバットの顔は無愛想のままだった。何もとって食いやしないのにと思っていると、
    「そっくりそのままお前に返してやる、ユナン」
    「……ふふふ、根に持つなぁ」
    「俺はお前と違って忘れっぽくないからな」
     わかりやすく捻くれて拗ねた事を言うものだから、思わず笑ってしまう。こんな分かりやすく、変なー警戒心と好奇心があいまぜになった顔。人間の表情筋ってこんな複雑に動くものなんだと感心する。
     それに、こんな人間的で複合的な表情はきっと自分以外にシンドバットは見せないだろう。八人将たちには甘えているからここまで警戒の色は混ざらないし、対外的には七海の覇王としての役どころと面の良さを存分に活かしている。かつて興行として舞台に立った経験も織り込んでいるはずだ。
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    あもり

    PAST24年3月17日春コミで出した、無配ペーパーの小話再録です。そのに。
    2のこちらは、ムーとティトスです。新刊準拠の話ですが読んでなくても「本編最終章終了後、ジュダルが行方不明になったので単独で白龍がレームへ訪問しにきた後の二人の会話劇」とさえわかってれば問題ないです。
    私の割と癖が強く出た話となりました。こっちはしっとり目です。ノットカップリング。
    受け継がれるもの 練白龍が去った後、次の面談先へと元気よく歩くティトス様とは裏腹に、色々と考えあぐねてしまう自分がいた。練白龍は割合、裏表がない青年だ。今回の訪問もどちらかと言えば公人としての彼ではなく、私人としての立場に近いのだろう。だからこそ、あそこまでさらけ出したともいえる。しかし、自身が腹の内を掻っ捌いたようなものだからと言って、それを、同じだけのことを相手に求めさせるのはあまりにもリスクが高すぎる。落ち着いたと思ったが全くそんなことはない。やはり練家の男だと、かつての紅炎を思い出す。
    「ムー」
     くるりとティトス様が振り返った。丸い瞳をこちらに向けてじっと見、そして俺の顔に手を伸ばそうとしていたためすぐに屈む。なんでしょう、と言えば少しだけ笑って口を開いた。
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    あもり

    PAST24年3月17日春コミで出した、無配ペーパーの小話再録です。そのいち。
    アラジンと白龍、2人のデリカシーゼロな話です。
    カップリング要素は白龍とジュダルですが、この話にジュダルは直接出てきません。あとアラジンと白龍はカップリングではありません。2人は飲み友マックスハート!って感じです。そうかな?
    めちゃくちゃ楽しく、カラッとかけました。
    デリカシープラスマイナス お酒というものは、人が普段理性で押さえている様々な箍を外してしまいやすい。アラジンは滅法それに強かったが、対面に陣取る白龍はめちゃくちゃに弱かった。お酒の席はある程度まではご愛嬌。その中で繰り広げられる、馬鹿らしさも面倒くささも、味ではあるのだが。

    「白龍くん飲み過ぎだよ」
    「今日は全然飲んでませんよ」
    「後ろの空の酒樽みてから言ってくれる?」
    「大体こんなに飲みたくなるのはあいつが悪いんです」
    「ジュダルくん?」
    「そうです」
     また勢いよく杯を空ける。あーあーと思いながらも、アラジンは黙って眺めていた。ここまで勢いに乗った白龍の、お酒を止める方が面倒だと経験則でわかっているからだ。
    「俺はずっとアイツがいつ遠征から帰ってきてもいいように色々と準備をしていたんですよ、こっちは!それなのにアイツときたら勝手に色々と初めておいて、」
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    あもり

    PAST先日のたかやま先生ぴくちゃ~日向南ズが空港だったこと、自分が同人誌に書きおろし収録した日向南のふたりの話の舞台も空港で、おまけに「これからの始まりにワクワクするふたり」だったよなあと…。終わりに向けての書き下ろし絵が日向南の2人が空港だったこと、たまたまの巡りあわせですがぐっと来たので期間限定で再録します。当時お手に取っていただいた方、そして今から読む方もありがとうございました!
    ホームスタート、隣には 窓の下、鮮やかな夕日が静かに夜へ落ちていく。小さい窓に張り付いている幼馴染の肩越しにその光を見たとき、ああ僕らは故郷を出ていくんだと実感した。

    ***

     やっとのことで地元の空港のチェックインカウンターに辿り着いたのは、予定時間ぎりぎりのことだった。いざ出発するとなったらどこから聞きつけてきたのか、高校の同級生やら近所のお好み焼き屋のおばさんやらであっという間にわいわいと取り囲まれて、遠慮なく別れを惜しんでくれた。といっても本拠地は相変わらず日向南だというんだけど、みんな勘違いしてないかこれ。そのうち単位交換ではなくて転校したという話に切り替わってそう、というか後半そんな感じで近所のおじさんに言われた。ただもう説明する回数が多すぎたので最後の方の対応はもう拓斗にやや放り投げてしまった。
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