ニコセイがお祭りではぐれてしまう話仮タイトル:甘くて赤い、りんご飴(ニコセイ)
セイジがネットニュースで見つけたお祭りの屋台のこと。ニコに話せば食いつきがよろしく二人で食いだおれデートをすることに。日が暮れて沿道に並ぶ提灯の明かりが灯り出すころにはニコの両手には沢山の戦利品が。見かねたセイジが「一回この先の広場で食べちゃおっか」と言って二人はそこへ向けて歩き出す。
広場を目指し歩みを進めると、人が増えてきた。すっかり夜の帳が降りて、屋台の明かりがなんとも幻想的な時間だった。隣を歩くセイジが「人、増えてきたね」と思わず零してしまうほどだ。短い返事を返しながらニコは右手に持ったかき氷のライトブルーの雫が零れてしまいそうで、少しだけ氷の山を齧ってしまおうかだとか、袋に入れてもらった焼きそばのパックが縦になっているな――なんて考えてしまって。「……逸れないように手を繋いでもいい?」とセイジが言いかけた所で二人は互いに人の波に攫われてしまった。
「ニコ……ってあれ、いない?」
辺りを見渡してみてもニコはもちろんいない。お祭りに来ている人を驚かせるといけないからニコのヒーロー能力は使わないようにする話をしているから、すぐに見つかる見込みもなくて。セイジが端末機で連絡をとろうとポケットに手を伸ばした時――。「オニーサン、一人?」と随分と慣れた軽薄な声が聞こえて少しだけ視線を上げた。人が良すぎるセイジはこれがいわゆるナンパだとは気が付かなくて素直に連れとはぐれてしまったことを言ってしまう。「お連れサン見つけるの大変でしょ? オレらと一緒に回ろーよ? 探してあげるよ?」と言われてもちろんそれは丁重にお断りをしたのだが、相手が引かない。ふとセイジの肩に腕が回される。ぞわりとした感覚にセイジの身体は硬直してしまって、「あの……えっと」と返す言葉に迷ってしまう。男の一人がセイジの腕を掴もうとした瞬間に「セイジ、探した」とその声を聞いて緊張が解ける。男の腕を払いながらセイジの手をとるニコ。そのまま男達を無視してセイジを連れ出したかったのに、男達がニコをからかう様に「弟クンかな、悪いけどオレらお兄ちゃんに用があんだよね」と言いたかったようだが、ニコが鋭い眼光を向けるとそれ以上は言えないようで。逆に「このオニーサンはおれの。だから盗らないで」なんて言ってセイジの腕を引いてその場を離れた。
黙ってニコに連れられるまま歩いた先で「こんなことなら最初から手を繋いでおけばよかった」とニコがため息をついた。「……うん」「セイジほっぺたが――」「えっ、なに……っ!!」かぷり、ニコに頬を食べられてしまう。
「に、にににニコ!?」「りんご飴」「えっ?」「セイジの頬がりんご飴見たいで美味しそうだったから」「お、いし――ッ!!」「あ、ほら。また」
一度はやんわりとニコの胸を両手で押したセイジのその両手(手首)を片手でまたセイジごと引き寄せて。
「ねえ、味見――してもいい?」
わなわなと唇を震わせるしかできないセイジは、「いただきます」と口にしたニコに――食べられてしましそうになる。