魅了ってネタとしてはいいよねって話犬神が何かを唱えると、落雁の動きが止まった。
「どうしたの!?」
異変に気づいた水無月が声をかけた瞬間、緑色の髪が飜る。
「うわっ!」
落雁の霊力を込めた拳が水無月の顔を掠めた。
直撃していたらタダでは済まなかっただろう。出会ったときに食らった一撃とは比べ物にならない力の気配に、彼女は本気なのだと悟る。
そして、なぜそうなっているのかも。
落雁の瞳は虚だった。まるで自我を失っているかのように。
「魅了か…」
水無月は落雁と距離を取り、彼女の背後から迫る化け狸に攻撃を飛ばす。
「…っ、落雁ちゃんしっかりして!」
援軍を望めない状態でのこの状況に、水無月もさすがに焦りが隠せなかった。
なおも続く落雁からの猛攻。加えて、化け狸たちも攻撃のタイミングを窺っている。
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