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    きよせ

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    きよせ

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    ★晶大 一番良い表情(カオ) ※モブ客女達の主張が強いです

    #晶大
    crystallization

    晶がホールでご機嫌な時、お客さんの女性と話してる時、そして晶自身の話をしている時。
    見てるとわかるが、伏せがちの瞼がぱちっと持ち上がり、空間の照明全てを吸収してるのかってくらい目の色がキラキラと変わるし、なんつーか、顔面偏差値の高い男の笑顔って眩しすぎ。あからさまで本当に分かりやすい。
    あんなにも意気揚々と自信満々に話せるとか、自己肯定感の高い人ってまじすげー。天と地がひっくり返ったって俺には無理ですわ。


    「お願いしまーす」
    「はーい」

    配膳口のカウンターで接客中の晶を眺めつつ心の中でぼやきながら手持ち無沙汰にしていると、2人組の女性がこちらに向けて手を振り、声をかけてきた。
    いつも通り気の抜けた返事をして、小言を言われる前に呼ばれたテーブルへとオーダーを取りに足を向けた。

    「暇そうだったから呼んであげた〜」
    「お気遣いあざーす。でも俺、こう見えて結構多忙なんすよー」

    程よくアルコールが回っているのだろうかその女性達はケラケラと楽しそうに笑っている。
    相手の冗談に乗っかって自分の冗談を重ねられるくらいにはすっかり慣れたもんだな、と、まるで他人事のように感心してしまった。まあ、人間って日々成長する生き物らしいすからね。
    どうやら声を掛けてくれた方のツレが有難いことに俺を推してくれているらしく、せっかくだから俺のオススメが飲みたいとの事だった。
    テーブルの上で空になっているのはロックグラスだった。俺推しらしい女性の頬はほんのり赤く、それがアルコールによるものなのかそれとも…なんて自惚れのような思考まで過ぎってきたので少し恥ずかしくなり、振り払うように軽く首を振り咳払いをひとつして誤魔化した。

    「そうすなー、カクテルじゃねーっすけど、タランチュラとか好きっすね。フレーバー付きのテキーラなんすけど」
    「へぇー、飲んだ事ないかも。じゃあ3人で飲もうよ。ね!」
    「まじすか、ゴチになっていーんすか?」
    「もちろん!」


    「なになに〜オレもいーれて!」

    途端ずしっと重みを感じたと思えば、俺にのしかかるように肩を組み笑顔で首を傾げる晶の顔が傍にあった。
    咄嗟に反応出来ずに目を丸くしてしまった俺に「楽しそうだから来ちゃった」なんてウインクして見せてくる晶に、きゃーっと口元に両手を添え先程の俺相手よりも遥かに高揚しているお客さん達の反応。
    さすがだなとも思うし、でも体重をかけられている肩は重いし、美味しいところを持っていかれたようで少しだけ面白くない気もした。

    「つーかあんたさん、あっちのお客さんほっぽってきていーんすか」
    「だってぇ、寧ろ行ってこいって言われちゃって〜」
    「えぇー…」

    呼ばれる前に眺めていた席の方へ目をやると、3人組の女性が俺の視線に気付いたのか嬉しそうに手を振ってくる。いや、俺宛てじゃなくて隣で手を振ってる晶に向けてなんだろうけど。
    わざわざ寄越してくるくらいだから、俺が絡まれるところから見ていたんだろうし、あちらはあちらで盛り上がっているから何かしらの需要があってなのだろうか。それでも意図のわからない俺はすっかり置いてけぼりだ。

    「今大牙と3人でテキーラ飲も〜って話してたんだけど、せっかくなら晶も一緒に飲もうよ〜」
    「いーの?飲む飲む!」
    「ちょ、何勝手に」
    「いーじゃんいーじゃん、今日そんな忙しくないし。こーんな可愛い子たちの誘いを断るなんて野暮でしょ。ね〜!」
    「ね〜!」
    「じゃ、すぐ持ってくるから待ってて〜」

    こっちはこっちで既に意気投合してるし、肩が軽くなったかと思えば珍しく自ら動く晶の姿が不可解過ぎて、自分でも眉間に皺が刻まれていくのがわかった。

    「今日運強すぎじゃない?わたしたち」
    「まじそれ!」
    「そっすかー?」
    「そうだよ〜!この前も大牙が黒曜にサボりバレてスマホ取り上げられててめっちゃウケた〜って話聞いたけど、大牙って晶に可愛がられてるよね」
    「は?可愛がられてる?」
    「だって大牙の話してる時の晶の顔、なんかきゅ〜ってなるんだよね」
    「わかる〜」
    「いやいや、全くわかんないんすけどー…」

    だって晶って自己アピールしてる時が1番楽しそうでしょ。俺の話なんてわざわざお客さん相手にするんすか?たまたまぽろっと話した話題がこの人たちのおメガネに叶っただけかもしれない。つか、きゅ〜ってなる顔ってなんすか。

    そうこうしているうちにトレンチにオーダーのドリンクを乗せて晶が戻ってきた。

    「はーいお待たせ!こっちはきみ、こっちのはきみね。はい、こっちはオレとお前」
    「あざーす」
    「あとこれも」

    ショットグラスを手渡しでそれぞれに配膳し終え、添えるようにチェイサーを2人分テーブルへと並べられた。
    親指と人差し指で足りてしまう小さなショットグラスの中で、グラスと共にしっかり冷えた水色の液体が鈍く揺れている。

    「綺麗〜!晶の髪の色みたい」
    「わーいうれし〜褒められた〜」
    「てか、テキーラとしか言ってなかったのによくこっちってわかったっすね」
    「だってこれだろ?大牙が好きなやつ。てか温くなる前に早く飲も〜!カンパーイ!」
    「カンパーイ!」

    ツッコミを入れる間もなくはぐらかされるようにグラスが掲げられるものだから慌ててそれを追いかけ、カチンと4つのグラスがぶつかり甲高い音を鳴らした。
    一口でグイッと飲み干すとスーッとシトラス系の清涼感が喉を下り、流れた後はアルコールでじわじわと温かくなっていく。
    仕事中に飲む酒の味ってなんでこんなにも背徳的で美味しいのだろう。慌ただしかった情緒が一気にどうでもよくなり、落ち着きを取り戻していく。

    「くーっあま〜!でも女の子ならこういうの飲みやすいかもね」
    「確かに普通のテキーラよりこっちのが好きかも」
    「ちなみにこっちはアズールっていうやつなんすけど、同じくらいの度数でストロベリーもあるんでそっちもオススメすわ」
    「そうなんだ〜。今度はそっちも飲んでみようかな」
    「まーでも、俺はアズールの方が好きっすねー」

    知識という程でもないが、好きな話題で饒舌になるのはオタクならではあるあるだろう。
    お客さん達は感心して話を聞いてくれていて、ふと大人しくなった晶の方へ目をやった。目を細め、あまりにも穏やかな優しい表情でこちらを見ているものだから、幻かなにかを見ているのかと思い慌てて目を逸らした。

    「あっ、ごめーん呼ばれちゃった。また話そーね」

    先程のテーブルから晶を呼ぶ声が聞こえ、大袈裟に残念そうに首を傾げる晶は、普段通りのチャラくて軽薄な様に戻っていた。ごちそうさまでした〜と1人ずつへグラスを当てて挨拶をしていくと、ヒラヒラ手を靡かせてその場を離れて行った。
    テーブルへ残されたトレンチへ空になったグラスを回収して乗せていると、お客さん2人からの視線があまりに真っ直ぐ突き刺さってくるものだから耐えられずに顔を上げれば、にまにまと満足気な表情で、「愛されてんなぁ」なんて言うものだから間際の晶の表情が脳裏を過ぎり、いやないないと片手を振って見せた。

    「ごちそーさまでした。またなんかあったら呼んでくだせー」

    何事も無かったかのように平静を装い、チェイサーだけを残してテーブルから離れた。
    見送ってくれるお客さんが一層嬉しそうなのは多分、俺の顔が少しだけ熱い気がするのと関係があるのかもしれない。きゅ〜ってなる顔って、あれか?見間違いではなく、自惚れでもないのなら。
    それをちょっと悪くないとも思っている自分が意味わかんなくて、盛大にため息を吐き出した。


    晶はどうやら、俺の話をしている時もご機嫌らしい。
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