何度目かの絶頂を迎え、空間は熱、湿度、互いの乱れた呼吸で満たされていた。
晶の首へ回していた腕を解き、大牙はシーツの上へ肢体を放り投げる。胸を上下させながら荒い息遣いを整える大牙の姿を見下ろしてくる晶は、ぼんやりと余韻に鈍る思考回路でも艶やかで、整っていて、今まで抱かれてきたであろう女の気持ちがわかるような気がしてしまったところでそれを遮断すべく目を閉じた。
晶は大牙の左腕を退けるとその空間へ転がりこみ、白濁を吐き出したコンドームを慣れた手つきで外し、処理をしていく。口を縛り、ティッシュで丸め、ベッド傍に備えておいたゴミ箱へと放り投げると、吸い込まれていくかのように華麗なシュートが決まった。
「っしゃ!」
目を閉じていても上機嫌なガッツポーズが脳裏を過ぎり、まだ気怠い瞼を持ち上げると目を細める晶の姿が大牙の目の前に飛び込んできた。
汗で顔に張り付いたままの乱れた髪を整えるようにかきあげられ、その手つきがあまりに優しく感じてしまい、照れくさくなった大牙は目を泳がせる。
その反応があまりに初心に見え、晶は思わず吹き出した。
「ぷっ、何恥ずかしがってんの?もっとスゲェ事してたってのに」
「いや、それとこれとは話が別っつーか…」
「ふーん」
「てか、そんなに見なくていっすよ!」
「だぁって、お前の顔面白いんだもん」
「人の顔を面白いって、失礼すぎやせんか」
ケラケラと笑いながら頬を摘んでくる晶に大牙は顔を顰めるが、それがますます晶を喜ばせるだけで羞恥を煽られた大牙は片手で目を覆い視界を遮った。
「隠すなよ」
離れたと思った手は顎を捕え、晶は鼻先へ軽く歯を立て甘噛みをした。
驚いた大牙が慌てて覆っていた手を退けると、今度は唇同士が重なり、ちゅっ、と音を立てて啄まれる。
晶が大牙の反応を面白がって仕掛けてきているのは明らかなのだが、それが本当に嫌かと問われたら否であり、寧ろ心地よささえ覚えてしまっているのはきっと今まで何度も行為を重ねてきてしまったせいだ。
大牙が離れかけた唇をちろりと舐めると、晶は鼻で笑い、誘いに応えるように再度口付けてくれる。それがまたあまりに心地よく、同時に背筋をゾクリと快感が走った。
数度口付けを交わし、ゆっくりと離れていくと物欲しそうな大牙の眼差しに晶がにんまりと笑う。
「あーあ、このままじゃ大牙は一生童貞だな〜」
「晶のせいじゃないっすか、責任取ってくだせぇよ」
「なに?俺の事抱きたいの?」
「え……あー…、いや」
責任、とは言ったものの、咄嗟に出た言葉への返答に大牙は目を瞬かせ、首を傾げる。
「だよね〜俺も大牙に抱かれるのは想像つかねぇわ」
「そっすか」
ヒラヒラと手を靡かせて否定する晶に、大牙は諦めたかのように吐き捨てる。
晶のこういうところがデリカシーがない陽キャだなと思うものの、だからこそこの関係が成り立っているのだろうとも大牙はぼんやりと納得していた。
「ってことで、もっかいすっか」
「いやいやどういうことっすか、まぁ、いいけど」