Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    yaginoura0811

    @yaginoura0811

    キショウタニヤマボイスの世界で13年くらい生かされてます。

    雑多なものの基本は総じて右側。推しの移り変わり激しい人間。推しの右側エロ大好き!!!!!!性癖色々。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 58

    yaginoura0811

    ☆quiet follow

    再び声が出なくなるアオイドス。その原因は?

    ラカアオシリアス。モブ女の子騎空士登場。名前はない。

    #ラカアオ
    lacao

    突然、アオイドスの声が出なくなってしまった。
    前触れもなく、本当に当然に。

    歌うことは出来る。何故かステージの上ではいつもの伸びやかな歌声が出た。
    ただ、日常会話をする中での発声は全く出来なくなってしまったのだ。
    人間が自分の意思を伝える上で欠かせない声。

    まるで、ノイズの中で過ごしていた子供の頃に戻ったようだとマネージャーはなんともやるせない顔で言った。
    なんとかこの状況を打開する策はあるのだろうか。

    精神に関わることだとしたら何が原因なのだろう。
    アオイドスはどうするつもりなのだろう。



    「アオイドスさん、お昼にしませんか?」

    ルリアがアオイドスを呼びに部屋まで来ると、その声に手を上げて応えた。
    とことこと走ってきたルリアはアオイドスの手のひらに指で文字を書いて内容を伝えた。
    今日のお昼はオムライスだと。
    アオイドスは笑って分かったと口を動かして答える。
    ルリアがそれを確認して部屋を出て行く。

    普段の日常会話はこうしてやりとりしている。スケッチブックに文字を書いたり短い単語は口を動かして伝えたり。
    なんとかそうやって生活は出来ているものの、アオイドスは人知れず頭を抱える。

    声が出るのはステージ上でだけ。
    練習場では全く喋ることができない弊害で、思ったことが上手く伝えられない。
    練習にも支障をきたしているのは周りも身に染みて分かっていた。
    けれど打開策も何もない中で過ごす苦痛はおそらくアオイドス自身が一番感じているだろう。

    そして脳裏にチラつく残像。受け入れたはずの過去の自分の姿。
    アオイドスは軽く頭を振りかぶって食堂に向かう。
    人が喋る声があちこちから響く中でアオイドスは視線を動かしてある人物を探す。

    漸く見つけた、その後すぐにアオイドスは目を軽く逸らした。

    最近入って来た騎空士の女性の隣にはいつもの分け隔てなく笑うラカムの姿があった。
    食堂の賑やかさと同様にとても楽しそうだった。そう、とても。

    「あ、アオイドスさんこっちです!」

    ルリアに遠くから手招きされて、アオイドスは視線を戻し手を振る。
    ラカムもこちらに向けて手を挙げるが、アオイドスはそちらに視線を送らずルリアの元へ歩いて行く。

    「丁度出来上がったからまだあったかいですよ♪」
    楽しそうなルリアの笑顔にアオイドスも笑って備えてあったスプーンに手を伸ばす。
    いただきます。
    声には出せないが手を合わせてアオイドスも頭を前に倒す。一掬いしてオムライスを口に運ぶとケチャップの香りが口いっぱいに広がった。
    味覚はいつも通りだった。

    「アオイドスさん、新曲出来ました?」

    新米騎空士の女性がそう問いかけて来てアオイドスはまだだと首を横に振った。
    残念そうに女性が眉を下げると、ラカムにしがみつきながら言った。

    「アオイドスさんの新曲、楽しみだなぁーねえラカム♪」

    プレッシャーとも取れるその言葉にアオイドスは上手くご飯を飲み込むことが出来なかった。
    実を言うと、このところほとんどこれといった曲作りが出来ないでいた。
    イマジネーションが湧かないのだ。

    いつもなら出てくるワードセンスも影に隠れて出てこない。
    喋られない事が原因なのもあるかもしれない。

    こういう時にどう伝えるべきか。
    どう伝えれば言った言葉を受け入れてくれるのか。

    日常会話を発する事が出来ない今のアオイドスにとって表現の仕方が不透明になりつつあった。


    「そうだ!ラカム、今度街でパフォーマンスショーやるみたいなの!一緒に行かない!?」
    「パフォーマンスショー?あー俺は艇のメンテナンスで忙しくなると思うから誰かと行ってこいよ」
    「えー!ラカムと一緒がいいなぁー」
    「我が儘言ってると神様に見放されちまうぞ?」
    「私は神様なんて信じてないもーん」

    女性は可愛らしく頬を膨らませ言うと、ルリアに神様の存在するか否かを力説していた。

    確かに、神様がいるなら自分がこうして喋れない事に対して悩む日々を過ごすような試練は化さない。
    いるなら答えて欲しいくらいだ。

    自分はどうすればいいのか。
    どうすればこの苦痛から解放されるのかを。


    「ねぇラカム!艇のメンテナンスが終わったらでいいから私と付き合うっていう返事聞かせてくれない?」
    「はわっ!?ラカムさん、いつの間にそんな事をお話したんですか」
    「ち、ちげぇって!これはこいつが勝手に…」
    「もぉー恥ずかしがっちゃうラカムも可愛いんだから!」

    肘で小突きながら猫撫で声を発しながら擦り寄る姿にルリアははわわと慌てふためいた。
    アオイドスはオムライスを半分食したところで御盆を持って席を立った。
    そして持っていたメモに「曲作りに戻る」と書いて机に置いてその場を去った。


    女性の手を振り解き、ラカムも食堂を後にする。
    半ばアオイドスを追いかける形でついていく姿を女性が密かに奇妙な眼差しで見ていた事は気付かれはしなかった。











    あれは夕時だった。
    アオイドスは街を溢れる音に触れるために外に出ていた。
    路上で音を奏でている人もいれば買い物を済ませて手を繋いで帰る親子の声だったり、酒場で飲んでいる人の楽しそうな声が溢れていた。
    一つ一つに耳を傾けるのは難しかったが、ふと聞き覚えのある声が耳に入って来てアオイドスはそちらを振り返った。
    すると、メイクを施した女性とラカムが歩く姿が目に入った。
    何やら談笑しているように見えた。
    女性はラカムに押し迫り何かを口にしている。そして。

    最初に触れたのは一瞬だったが、2度目に触れた時には女性の唇は確実にラカムの唇に重ねられていて。
    その瞬間、街の声が掻き消えた気がした。
    目を逸らせない。
    その間にラカムはそっと目を閉じ、女性の肩に手を伸ばして引き離して彼女の目を見つめていた。

    今でも瞼の裏をチラつくその光景を振り払うようにアオイドスはその場を後にした。







    「おいアオイドス」

    ラカムの呼び声に足を止めずに歩くアオイドスを追いかけてラカムが再度名前を呼ぶ。
    それでも反応する事なく部屋に籠ろうとするアオイドスの手をラカムが強く引っ張り、動きを制止させる。
    振り向く素振りさえ見せないアオイドスにラカムは痺れを切らせて中に連れ込んで壁に身体を押し付けた。

    「なぁ、なんで避けるんだ?お前が喋れなくなっちまったのは知ってるが、それでも今までと反応違うよな?俺に、何か不満でもあるのか?」

    声が出ないと分かっていてもラカムはもどかしさと怒りで口調が少しずつ荒くなってくる。
    アオイドスはふるふると首を横に振るが、ラカムは煮え切らないといった様子で迫る。

    「何もない訳ないだろ?だって…お前、今どんな顔してるか自分で分かってるのか?」

    そう言われてアオイドスはくっと口を閉じ、ラカムから視線を外す。
    ラカムの言う自分の表情がどんな表情なのかは痛いほど分かってしまった。

    苦しい顔だ。
    息をする事さえままならない苦しさだ。

    「俺は…アオイドスが今どんな気持ちなのか知りたい。そんなに悲しい顔させるようなことしたか?俺。だったら謝る。謝るから」

    違う。君は謝らなくていい。
    だって女性に好かれて口づけを交わし合う程の幸福を手にしているだけなんだから。

    そう思うのに、アオイドスの心はざわざわした。

    そんなだから、そんなに優しいから君はダメなんだ。
    勘違いしてしまうから。
    今まで自分に向けられていた顔は幻だったのか感じてしまうから。

    「俺は…アオイドスの声が出なくなってずっと思ってた。お前の声が…あんなに恋しいなんて思いもしなかった」

    その瞳は実に真っ直ぐで、だけど悲しくも瞳が揺れている。

    「観客のみんなは歌声を聴けるのに、俺はなんでアオイドスの言葉を聞けないんだろうって。正直ずっと気が狂いそうだったんだ」

    そんなに悲しい顔をしないでくれ。
    今君は幸福なんじゃないのか?
    それでいいはずなのに、どうして君は悲しい顔をしているのだろう。

    「…なぁ…俺の事、いつもみたいに好きって言ってくれよ…」

    言いたいさ、俺だって。
    でも声が出ない。
    声で伝えられなきゃ、意味がないじゃないか。

    「…俺は…好きだ…好きだから…ちゃんと…聞きたい…アオイドスは俺の事好きか?」

    切実に返答を求めるラカムにアオイドスは口を開こうとする。
    無駄だと分かっていても伝えたかった。

    「好きだ…アオイドス」

    知っているし、信じたかったさ。
    だって俺は君のことが。

    「好きだって…言ってくれよ…」

    そうじゃない。俺は。


    「…………ぃ……る」
    「……アオイドス?」

    アオイドスの喉から微かに聞こえてくる声らしき音にラカムが必死で逃すまいと視線を送りながら耳を傾ける。
    そしてそれを逃さずアオイドスは霞みそうな中で言った。


    「愛、してる……ラカム」
    「……ッ…」

    言ったんじゃない。
    自然と今まで溜まっていた想いが声になって自然と漏れていた。
    何より一番、声が出るようになったら真っ先に伝えたかった事を。

    それに応えるようにラカムはアオイドスの頬を両手で触れて望んだ以上の言葉をくれた口に優しくキスをした。
    そしてやっと掴んだ欲しいものを仕舞うように掻き抱いた。











    柔らかな光に導かれ、ラカムが目を覚ます。
    瞼は重いものの、妙に心地よい感覚に近くにあった温もりの存在を瞳に映した。
    嘘のない透き通った顔を眺めて慈しむようにその顔に手で触れる。
    ピクリと瞬いた目が開けられて、虚ろながらしっかりとラカムの姿を映している。
    目覚めの言葉よりも先にラカムは枯れるほど愛の言葉をくれたアオイドスの唇に身体を起こして噛み付いた。
    ゆっくりと伸びたアオイドスの手はしっかりとラカムの首筋に絡んで、求めるように甘く鼻にかかる声を漏らしてきつくその身体を抱き寄せるのだった。








    声が出る様になってから数日後。
    ラカムと楽しそうに話していた女性騎空士の女性とすれ違った。

    「…あ、アオイドスさん、おはようございます。良かったですね、声が出る様になって」
    「ああ、お陰様で。心配をかけたな」
    「いいえ。一番心配してたのはラカムだったですけど」
    「……そうだな…随分と心配をかけたがもう大丈夫だ」
    「…はぁ、なんだか嫉妬しちゃうな」

    天を仰ぎ女性が呟くと、アオイドスの顔を覗き込み言った。

    「実は、私本気でラカムと恋人になろうと頑張ったんだけど…ダメだったみたい。なんて言ったって敵が敵だもの。勝てっこない事は分かってました。でも、負けたくなくて最後まで粘ってみたけどダメでしたね」

    意外とカラッとしたトーンで告白する女性に対してアオイドスは何一つ動揺する事なく答えた。

    「俺は、君と勝負をした覚えはないが?」
    「……ふふっ…そうですよね。本当にそう。勝てっこないですよ、貴方には」

    女性の顔はどこか晴れやかで、アオイドスの潔さに深く納得した。
    またアオイドスも晴れやかな笑顔で恋人の満面の笑みを思い浮かべるのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    yaginoura0811

    DONE再び声が出なくなるアオイドス。その原因は?

    ラカアオシリアス。モブ女の子騎空士登場。名前はない。
    突然、アオイドスの声が出なくなってしまった。
    前触れもなく、本当に当然に。

    歌うことは出来る。何故かステージの上ではいつもの伸びやかな歌声が出た。
    ただ、日常会話をする中での発声は全く出来なくなってしまったのだ。
    人間が自分の意思を伝える上で欠かせない声。

    まるで、ノイズの中で過ごしていた子供の頃に戻ったようだとマネージャーはなんともやるせない顔で言った。
    なんとかこの状況を打開する策はあるのだろうか。

    精神に関わることだとしたら何が原因なのだろう。
    アオイドスはどうするつもりなのだろう。



    「アオイドスさん、お昼にしませんか?」

    ルリアがアオイドスを呼びに部屋まで来ると、その声に手を上げて応えた。
    とことこと走ってきたルリアはアオイドスの手のひらに指で文字を書いて内容を伝えた。
    今日のお昼はオムライスだと。
    アオイドスは笑って分かったと口を動かして答える。
    ルリアがそれを確認して部屋を出て行く。

    普段の日常会話はこうしてやりとりしている。スケッチブックに文字を書いたり短い単語は口を動かして伝えたり。
    なんとかそうやって生活は出来ているものの、アオイドスは人知れず頭を抱え 4545