共感覚双子誕生日話。
【共感覚】
あれはカガリが4歳の誕生日を迎えた日の事だ。
『おとうさまー! どうしてわたしにはおとうとがいないの!?』
あの日の私は、今まで感じていなかった違和感を覚えた。
『いきなりどうしたのだ、カガリ。それに何故弟なのだ?』
父が不思議そうな顔をして、乳母のマーナと顔を見合せる。
突然言われた言葉に困惑する2人に、カガリは力強く答える。
『だってみたんだ! ちゃいろいかみで、目がムラサキでキレイだった!』
具体的な特徴を伝えると、困惑していた父の顔色がサッと青くなった。
『どこで見たんだ?』
真剣な眼差しで聞いてくる父に、カガリは言葉を詰まらせた。
『えーと……ユメで……みた……』
正直に答えると、父ははぁーと息を着いてから苦笑を浮かべ、カガリの頭を大きな手で撫でて来た。
『……そうか。夢か……』
どこか安心した様な寂しい様な、そんな表情を浮かべた父は、カガリの言葉を否定しなかったものの『すまないが、この話はこれで終わりだ』と誤魔化され、それかは父にもマーナにも“弟”の話をしなくなった。
直接会った訳では無いし、夢の中でその姿を見ただけだ。
(やっぱりあれはユメで、わたしにはおとうとはいないのかな……)
子供のカガリにこれ以上出来る事はないのだと諦め、オーブの獅子の娘としての日々を過ごして行った。
そして暫くはその夢の事を忘れていたが、ヘリオポリスでキラと出会った時、喪失感が埋まった感覚がした。
* * *
2人の誕生日の日。皆から祝われ、パーティが終わりを迎えた頃、カガリ、キラ、アスラン、ラクスの4人が会話を楽しんでいる中、カガリが懐かしむように話をしていた。
「という事があったんだ。あの頃はキラの事を知らないはずだったのにな」
誕生日前夜の夜、忘れていた記憶が夢として現れ、その懐かしさから3人に話していた。
「カガリも? 僕も似た様な事あったよ?」
キラが4歳の誕生日に不思議な夢を見た事を思い出した。
「あまり覚えては無いけど、一緒に手を繋いで遊ぶ夢を見た事がある。その子がカガリだったのかは分からないけど、カガリと同じ金髪の子だったと思う」
まさかのキラも同じ頃夢を見ていたのだと知り、カガリは驚きに目を見開く。
「不思議ですわね。双子ならではの共感覚というものでしょうか?」
「そうかもしれないな。思い出したが、幼少期のキラが変な事を言ってた事があったな」
「え? 僕何か言ってた?」
「あぁ。カリダさんに、なんで僕に妹いないの? って言ってた事がある」
あの時カリダさん困ってたぞ。とアスランは話すも、キラにはその記憶は無いようだった。
「妹? 姉じゃなくて?」
「ふふ。カガリさんは姉の立場を譲りたくないんですのね」
「勿論だ。だって私が姉に決まってる!」
絶対姉のポジションは譲らないと言い張るカガリに、キラは苦笑した。
「双子だし、どっちが上とか下とか関係なくない?」
キラはどっちが上でも一緒だと言う考えの様だが、カガリはそうでは無い。
「双子でも姉弟関係はあるんだぞ?」
だから私が姉なのは譲らないと言い切るカガリに、アスランも同意するように頷いた。
「俺もカガリが姉でキラが弟だと思う」
「えー。アスランもそんな事言うの?」
「そうですわね。キラは兄属性より弟属性だと私も思いますわ」
「ラクスまで……」
皆からキラは弟だと言われて複雑そうな顔をしていたが、最終的には諦めたように苦笑する。
「……まぁカガリがお姉ちゃんでもいいけどさ……」
「よし。キラも認めた事だし、お姉ちゃんである私からキラにプレゼントだ!」
嬉しそうに笑うカガリは、予め用意していたプレゼントをキラに渡した。
「……ネックレス?」
「あぁ。お前用に作ったハウメアの守り石だ。大切にしろよ?」
「……ありがとう。僕もカガリにプレゼント用意したんだ」
今度はキラからカガリへプレゼントを渡す。
「これ……」
箱に入っていたのはトリィとは色違いのロボットだ。
「ブルーと同じで僕が作ったんだ。名前はピィだよ」
まさかのネーミングセンスに笑いそうになったが、起動させると“ピィ”と鳴いた為納得した。
トリィにブルー、そしてピィは仲良く部屋内で飛び交った。
「ありがとう、キラ。大切にする」
「カガリさんともお揃いになれて嬉しいですわ」
「私も少し羨ましかったから嬉しいよ」
仲良く飛び交っていたトリィとブルーを見て、良いなぁと思っていたのだ。
まさかキラが作ってくれるとは思っておらず、嬉しいプレゼントになった。
「改めて誕生日おめでとう、カガリ」
「キラも。誕生日おめでとう」
お互いに祝いの言葉を伝え合い、アスランもラクスも微笑みながら2人を祝ったのだった。