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    Asahikawa_kamo

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    Asahikawa_kamo

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    四神パロ。モブ旅人(性別不問)が四神の治める国を旅する話です。今回は青龍編。前の話を読まないと分からないです。
    モブが主人公のためとにかく喋るし出張ります。あと特殊設定の嵐。

    ##四神パロ

    旅人と四神 二、青龍 朱雀領南西部に位置する商街、桔梗の市。朱雀領の中でも一番に大きく、また長いとされているその商街は南北、表通りと裏通り、そして昼夜で様々な色を粧し込んでいる。
     南の表通りは新しく港から取り入れられた輸入品や様々な食材、生活雑貨、衣服を売る店が立ち並び、飲食店も多い。対して裏通りは領から認可された店のみが賭博場を経営しており、その賭けごとも多岐に渡っていた。
     通りを北に遡っていけば領の名にもなっている氏神、朱雀の居住地として据わる霊山である朱明山の麓へと繋がっており、そこにはこれまた朱雀領では観光地の一つとなっている温泉群と宿集落が軒を連ねていた。お土産屋や一服のための茶屋などが並んでいる表通りもまた、南と同様観光客や旅人の行き交いが多い。そんな北の裏通りに繋がる道はたった一つの大門だけで、日の高いうちは静かに門を閉じているが、日が暮れると大人のみが訪れることのできる遊郭街に通ずる唯一の道となる。絢爛豪華で華美な服を纏い、眩しいほどの簪を挿し込んだ人々が妖艶に笑みつつ、店の窓際で手招きをするのだ。
     港前の宿で一夜を明かした旅人は、丁度桔梗の市へと運ばれる予定だった荷物を積んでいる行商へ荷積みと荷下ろしを手伝うことを条件に、彼の地まで馬車に乗せてもらう算段を取り付けていた。中身は他国で採れた珍しい果物群と香辛料が主のようで、よく働く旅人に気を良くしたのか、行商はその果物のうちの一つの袋からころりと淡赤色の果物を寄越してみせた。

    「これは?」
    「なんだ、リェンウーを知らんのか」
    「リェンウー……?」
    「蓮の霧と書くんだよ。綺麗な布で拭いて食うといい、そのまま食えるから」

     積み荷の合間で、然程多くもない自分の鞄を足元に挟みながら齧ったその果物は、林檎にも梨にも似て、さくりという軽快な音と共に爽やかな甘酸っぱさを口いっぱいに広がらせた。故郷にはない果物だが、どこの国のものだろうか。そんなことを考えながら、旅人はがたんがたんと揺れる荷馬車の後ろで過ぎ去る港を眺めていた。
     水平線に広がる船を見つめつつも、荷馬車は海を離れていく。整備された道には時折人や荷物を載せた馬車がすれ違い、人が行き交っていた。そういえば昨日、自分へと宿を教えてくれたあの美しい羽織りを肩に引っ掛けていた男は、結局どこかの貴族か商人だったのだろうかと過ぎらせながらも揺れに身体を預けているうちに、気付けば桔梗の市へと辿り着いていた。
     本来であればこの桔梗の市も隅から隅まで見回り、この記憶へと焼き付けておきたいと旅人は思っていたが、どうやら聞く話によると桔梗の市周辺の宿屋というのはどこもかしこも観光客向けのせいか値が張るらしかった。潤沢に金を持っているならば旅人も好きに豪遊するのだが、何せ今回はこの国をすべて回る予定だったため、財布の紐は締められるならば締めておきたい。馬車から荷物を卸す仕事を手伝い、どうやら旅人を気に入ってくれたらしい行商からいくつかの果物や香辛料を少しばかり譲ってもらった後に、北の端にある温泉街へと足を運ぼうと歩き出した。
     未だ午前の日頃だというのに、街には沢山の人が行き交っている。流石朱雀領一の商街だと鮮やかな色合いを瞳の奥に映しつつ、その店の合間から見える裏通りの賭博店などは今度ゆっくり見て回ろうと胸の底に決め込んで北へと進む。次第に温泉街へと近付くうちに食べ物の露店やお土産屋が増えてきた辺り、これまた朱色の大きな門の向こう側で立ち昇る湯気とその向こう側に見える山々に気付いた旅人はその門を潜らずに手前の方で道を折れて曲がっていく。先の方の門横では少しの人だかりと大型の馬車が停まっていた。

    「すみません、この馬車って青龍領行きであってますか」
    「ああ、旅人さんかい? 合ってるよ。ちょっと順番待ちしてるけどね」

     丁度役人のような風貌の男へと馬車の行き先を聞けば、若干の苦笑を見せながら列へと視線を向ける。どうやらここに並んでいる人々はすべて青龍領行きの相乗り馬車に乗るために集まっているようだ。まだ午前の内だというのにと旅人は思いながらも、馬車へ乗るためにその列へと並べば案外早いうちに旅人の順番はやってきたようだった。
     ぎい、と重たそうな音を立てつつ、馬車がゆるやかに走り出す。桔梗の市は朱雀領の南西端に位置しているため、隣である東の青龍領に行くためにはひどく遠回りになってしまう。しかし桔梗の市自体が朱雀領では観光地となっているので、直接青龍領の主要街までの相乗り馬車が出ているのだ。勿論昨日旅人がいた港からそのまま真っ直ぐ青龍領へ向かえば早いことは確かなのだが、それでは旅の意味がないなと旅人は思い、わざわざ桔梗の市までやってきていたのだ。つまるところ、遠回りをしたかっただけである。
     今朝の荷馬車よりは然程揺れの少ない馬車が、小気味良い音を立てながら朱雀領を横断していく。少なくとも九時間ほどはかかるという話であるからか、馬の休憩も含めて時々停まるという話だった。国の中でも三番目に領土が小さいとは言えど、この国自体が広いためにやはりそこそこに時間はかかるようだ。
     この国には他国と比べ広大な土地と多くの人口が暮らしているが、その半分以上がこれから向かう青龍領に集中しているらしい。次に多いのがここ、朱雀領。そして次点で白虎領、玄武領となっている。が、実際領土としては青龍領と玄武領がほぼ互角で広く、次に朱雀領、一番小さいのが白虎領だ。白虎領に関しては基本的に政と学を主としていることもあってか、土地の狭さと相俟って人口密度が多いという話だ。とはいえ、この国一の繁華街である朱雀領ほどではないだろうが。
     朱雀領に分布している幾つかの観光地を巡るように、馬車は様々な市場を経由していく。その揺れからか、旅人の眠気も波のようにこくりこくりと寄せては返す。ふと、落ちかけた意識の際で誰かが自分の隣に座った気配がして顔を上げると、そこにはおよそ十代後半ほどの、しかし妙に小綺麗で高そうな衣服をまとった青年が番傘を手に座っていた。
     ぱちり、とその新緑を思わせる双眸と目が合った旅人は、ゆるやかに会釈をする。と、何度か目の前の青年は瞬きを繰り返した後に、ああ、と少し高めの声を滑り出させた。

    「ふわっちに会ったんですか」
    「え?」
    「あー……赤い服を着て、色付きの靉靆をかけた男です。髪に紫と赤の色を差し込んでいる……」
    「……ああ! 港で会った方ですか。はい、少し立ち話させてもらいました」

     一瞬、青年が誰のことを指しているのか分からずにきょとんとしてしまった旅人だったが、特徴を挙げられてようやくそれが先日港で出会った陽気な男であることを思い出した。何故そんなことを突然、と不思議そうに首を傾げた旅人へ、青年は相槌を打つように「聞いたんだよ、彼から」とこれまた不可解な返事を寄越す。

    「商人と旅人の国の人ですよね、君」
    「え、ええ……そうですけど」
    「彼、あの国好きだから」
    「だからあんなに気さくに話しかけてくれたんですね、成程……」
    「……まあそれだけじゃないとは思いますけど」
    「……ええと?」
    「まあいいか。この後は何処まで?」
    「私ですか。青龍領の稲荷大橋までの予定です」
    「ああ。なら僕と降り先は一緒ですね」

     どうやら青年も行き先は青龍領のようだ。旅は道連れだなんて言葉もあるかと、旅人は何処か他国の話を聞きたそうにしているその青年が問うまま、自分の故郷の話題をと口を開く。思えば目の前の青年の服装も、どこか先日会ったあの赤い服の男と似た系統の恰好を彷彿とさせ、もしかしたら何か同じような組合にでも所属しているのだろうかと今更ながらに気付きはしたものの、あくまでこの国には観光と旅を目的として来ている以上問うても旅人にはどうしようもない。
     まあ、目的地に着くまでの時間だしな、と疑問を頭の隅に追いやってから、どこか期待に目を輝かせている青年に向かって旅人はゆるやかに言葉を発し始めるのだった。
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    Replies from the creator

    Asahikawa_kamo

    DONE
    第四本目 加賀美ハヤト 「ホテルの最上階」 昔、まだライバーになる前の話をひとつ、話させてください。
     仕事の出張の折に、とある地方のビジネスホテルへ滞在したことがありまして。一泊二日程度の短いものだったんですが、いかんせん地方ということもあってホテルが少なかったようで、少し駅から離れたところに取っていただいたんですね。総務の方がせめてと最上階の部屋を抑えてくださって、チェックインしてエレベーターを降りると部屋が一部屋しかなかったんです。
     実際広くて綺麗ないいホテルでしたよ。眺めも良くて、よく手入れが行き届いているなと感じました。……ただ、少し不自然なところがいくつかありまして。
     まずひとつすぐに思ったのは、廊下の広さと部屋の広がり方がおかしいと感じたんです。私が当時泊まった部屋はエレベーターを出て真横に伸びた廊下の右突き当たりにありました。部屋の扉を開くと目の前に部屋があるわけですが、扉がある壁が扉に対して平行に伸びてるんですよね。四角形の面にある、と言えばいいでしょうか。扉の横の空間がへこんでいて、そこにまた部屋があるなら構造上理解出来るんですが、最上階はテラスなどもなかったので、不思議な形をしているなと思ったんです。
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