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    yuno_tofu

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    yuno_tofu

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    結望とシェイムさんがお出かけする話を見たいなと思いつつ書いた、一方その頃の弥琴とアヤの話。

    チョコより甘いある日の昼下がり。
    出掛けてしまったシェイムと結望ちゃんの帰りを待ちながらのんびり仕事をしようかとしていた私の元へ、二人目の来訪者…もといゆのが訪れた。

    「…おや。珍しいね、君が連絡無しに玄関ではなく庭から来るだなんて…」

    「まー…ちょっと時短です。えっと、お邪魔します」

    「はい、いらっしゃい。それで?どうしたんだい、そんなに焦って。今日はリア君と出掛けていて忙しいと聞いていたけれど…」

    「あぁ、それ嘘です」

    「……はい?」

    あまりにも清々しい顔で自白する弟子に困惑するのも無理はないだろう。なんせシェイムが出掛けたのは異世界で菓子の材料を買いたいがゆのと都合が合わなかったらしい結望ちゃんを心配して同伴している(というか私が同伴してあげるよう頼んだ)からだ。なのに事の発端であるゆのは特に気にすることなく私の隣に座って。

    「ラギさん、バレンタインって知ってます?」

    「ばれんたいん…?」

    「すっごく簡単に言うと、好きな男性にチョコをあげる日です」

    「………なるほど、そういう事か」

    ようやく合点がいき、思わず苦笑いを浮かべる。
    確かに結望ちゃんは「ちょこ」とやらを買いたいとも、それは婿殿にあげる為の物なので本人に買い出しに付き合って欲しいとは言えなかったとも言っていた。そこに嘘は無い。ただ一つ嘘だったのは結望ちゃんとゆのが結託していたこと。…つまりは私がシェイムの為にこっそり「ちょこ」を作る時間を二人で協力し用意してくれたらしい。

    「それで急いでいたのか」

    「はい。シェイムさんいつ帰ってくるか分かんないし…。あとラギさん洋菓子嫌いでしょ?だから作るのも嫌かなぁって。そもそも異世界の文化だし…興味無いかもと思って」

    「確かに洋菓子を食べるのは苦手だけれど作るくらい問題無いさ。異世界の文化というのも…そもそもシェイムが異世界から来ているからねぇ。どうせばれんたいんとやらのことは知っているだろう」

    「じゃぁ…一緒に作ります?」

    折角の弟子と友の孫娘からの誘いだ。それにシェイムが喜んでくれるかもと思うと興味が沸く。ということで迷わず頷き掛けた…が。

    「そうだね、折角なら……あぁいや、しかし」

    「ん?」

    「…君は私が料理下手なのを知っているだろう」

    そもそも私に面と向かって「ラギさんって…料理苦手なんですね」と最初に言って来たのはゆのだ。まぁその後色々教えてくれたお陰でそれなりに米は炊けるようになったし、最初に比べれば全体的に多少改善されただろうけれど。

    「あー…まぁ大丈夫ですよ。ラギさんには簡単なやつ作って貰うし結望ちゃんと私と、あとレーちゃんにも見張っ……協力して貰うんで」

    「今、見張ると言わなかったかい?」

    「…だってラギさん、急にその場のノリと思いつきで変なことするもん。基本真面目だし不器用って程でも無いのに。突然、変なことを」

    力強く言われ、思わず黙りながら目をそらす。確かに何度か…というか、何度もそういうことをしてその度に怒られていた。けれどゆのだって調味料は計量しなかったり他の物で代用したりするのに…どうしてあんなにも結果が変わるのか…。

    「ま、出来がどうであれシェイムさんは喜んで食べるだろうけど」

    「極力…美味しいと言って貰えるよう頑張る、よ…」

    「そうして下さーい。んで失敗したら…いっそラギさんにリボンでも巻きましょうか」

    「うん…?」

    「チョコじゃなくて自分を贈る的な?」

    「…そ、それはつまり私がちょこの代わりになるんじゃ」

    「ん?あー……ラギさんにチョコ塗る?」

    「勘弁しておくれ…」

    「シェイムさんのことだしどっちにしろだと思うけど…」

    「え」

    「まぁとりあえずチョコ作りの準備はこっちでしてるんで…明日の昼に茶屋で大丈夫です?」

    「あ、あぁ…。問題ない、よ」

    「んじゃ、頑張ってシェイムさん留守番させて来て下さいね」

    そう言うとゆのは時計を確認してからさっさと立ち上がり、小さく手を振ってまた庭から帰って行った。
    恐らくそう時間も掛からないうちにシェイムと結望ちゃんも帰ってくるだろう。

    「……はぁ」

    柄にもなくそわそわしてしまうのは、きっと今まで心底愛した者が居なかったからだ。なんとも浮かれている気分で落ち着かない。けれどシェイムの喜ぶ顔を思い浮かべれば早く明日になって欲しいという気持ちが勝って、やはりどうしようもなく愛しているのだなと自覚すると再び顔に熱が戻ってきた。

    ……果たして弟子達が作ってくれたこの機会サプライズを私は守れるのだろうか。いや、留守番の説得をすることに比べればまだなんとかなる…かもしれない。そう思いながら、片手で顔を扇いで冷ましつう二人の帰りを待った。
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