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    Dom/Subビマサナ。Subビマ×Switchサナ
    今のところ全くビマサナしてないけどそのうちビマサナになる。なるはず。なるかもしれない。多分なると思う。

    #ビマサナ

     人間には男と女という性別の他に、ダイナミクスという力関係が存在するらしい。
     それは本能的なもので、強者であれば弱者を保護し、弱者であれば強者に全てを託し、互いに尽くすというもの。
     それに名前がついたのは俺が生きた時代よりも遥か先の時代でのことだそうだが、いざ思い返せば生前にも「そういえば……」となるようなことは多々あった。それは家族間のことであったり、使用人のことであったり、聖仙やらバラモンやらのことであったり――とにかく様々だ。
     だからまあ、サーヴァント――正確に言うとちょっと違うが――になった後、死後になって自分にもそのダイナミクスとやらが存在すると言われ、驚きはしたものの少し腑に落ちたのも確かなのである。


     同じ肉から分かたれた我らが長兄、ドゥリーヨダナがカルデアに召喚された際、同時に兄弟全てがダイナミクスの診断を受けた。勿論、末妹であるドゥフシャラーも同様だ。それから大体三日間、兄弟たちの話題と言えばそれ一色であった。
     全員どうしようもないロクデナシと評されつつも、やはり百人もいれば一人一人微妙に性格やら思考やらは異なるもので、開けっぴろげに自らのダイナミクスを明らかにする弟もいれば、さりげなく話題を逸らし頑なにそれを知られないようにしている弟もいた。
     かく言う俺は、特に自らのダイナミクスを隠すつもりはなく、かと言ってわざわざ言いふらす気も起きず、訊かれたら答える程度のものだった。だから話題を逸らしてこっちに矛先を向けて来たヴィカルナの「ドゥフシャーサナ兄さんはどうだったの?」という問いに「俺? Switch」と事も無げに言ったのだ。
     すると弟達は一斉に「嘘だ!」と沸いた。
    「マジかよ」「絶対Subだと思ってた」「あんなに兄上に褒められてトロ顔晒してたのに」「Domのよっきゅーってのはどこで発散してたんだよ」「あの骰子賭博でやけにノリノリだったのってそういうこと?」「あー、なる」「あれ欲求不満だったのか」「ドラウパディーちゃんかわいそ」「セクハラじゃん。いやそれ抜きでもセクハラだったわ」……いつも思うが、この弟達は次兄に対する尊敬の念が足りないんじゃないか? まあ今更だけどさ。
     俺そっち除けで勝手に俺の話題で盛り上がっている弟達を尻目にヴィカルナに目をやれば、珍しく神妙な顔でこちらを見ていた。仕方がないので「貸し一つな」と目で告げてやれば一瞬だけホッとしたような顔をして、いつもの表情筋をサボらせた仏頂面に戻る。それにこちらが少しばかり感じていたすわりの悪さも消えた。
     その後は騒いでいる弟達を眺めつつ、医療班から貰った『ダイナミクスのすすめ』という非常に簡素な装丁の冊子をめくっていた。『……DomとSubは欲求不満が続くと心身に異常をきたしてしまいます。そのため、欲求不満の予防、解消のためにDomとSubはパートナーとしてプレイを行うことがあります。このプレイというのにも注意が必要で……』わかりやすさの為か、挿絵混じりに簡単な説明が書かれたそれはどんなにじっくり読もうとしてもものの数分で読み終わってしまう。既にこの冊子を開くのは三回目だ。流石に飽きて、閉じた冊子を適当に放る。
     余りにも手持ち無沙汰になったので、未だに騒いでいる弟達の輪に加わることにした。話題は俺からパーンダヴァの奴らに移っていた。


    ―――――――――――――――――――


    「ビーマの野郎は絶対Subだろ!」
     数ヶ月前、ダイナミクスの話題で盛り上がった時に弟の一人がそう言って笑ったのがやけに頭に残っていた。

     最近どうもイラついて仕方がない。兄やカルナとアシュヴァッターマンに構ってもらっても気分は落ち着かず、更に今朝からは頭痛もすると来た。
     このままでは周りに当たり散らしてしまいそうになるからと、兄に頼んで霊基から出してもらったのだ。
     兄の中ではどうしても弟達や妹と一緒になってしまう。一昨日あたりから俺の様子に居心地悪そうにしていた弟が何人か――あいつらは公言してなかったが、十中八九、Subなんだろう――いたのもあって、俺達「弟」がざわついていると兄にも影響が出てしまうと思って、外へ出た。とにかく他に外に出てる弟が寄り付かないような所を探して歩いているうち、ふと前からやってくる人影に気がついた。――ビーマだ。

     ――ビーマの野郎は絶対Subだろ。

     こびり付いたその言葉が離れない。
     ビーマは白い宮廷衣装に身を包んでいた。キッチンでの仕事を終えた帰りなのだろう。森育ちのあの男がそれを好んで着る理由など一つしかない。
     それにしてもこの男、腐っても王子という自覚がないのか? わざわざ手ずから料理を作り、人に振る舞い、人が食すのを見て喜ぶ。それは使用人の仕事だろう。それに、その献身を捧げる対象はほぼ無差別と来た。俺でも兄貴にしかやらないぞ。ああこいつを見ていると腹が立って仕方がない。どうしてこいつは底なしの奉仕欲を振りまいてやがる。誰彼構わず振りまいて、振りまいた分に見合ったものは返ってくるわけがないのに。返ってきたってほんのちょっぴりだ。ヴリコーダラがそれで満足出来るわけがないだろう? いや待てよ何で俺はこんなにムカついているんだ? そりゃあこいつが兄貴の宿敵だからだ。それだけか? いや、それだけじゃ、くそ、頭、いて――「何してやがる」

     いつの間にか、ビーマは俺の目の前までやって来ていた。眉間のシワが深く刻まれている。
     俺はと言えば、急に酷くなった頭痛に堪えていて、それに応える余裕もなかった。
     俺をじっと睨みつけるビーマは更にシワを深くして、何かに耐えるようにゆっくりと口を開いた。

    「……てめぇ、あのトンチキ王子と一緒にまた何か企んでやがんのか?」
    「ハッ、だったらどうするんだよ」

     俺の言葉に、奴はまるで無理に動かしているような固い表情で続ける。

    「……そりゃあ止めるに決まってんだろ。マスターや他の人間に被害が出ても困るからな」
    「おいおい、兄上が関係ない人間を巻き込むと思ってるのか?」
    「お前らがしたことを思い出してみろ。十分巻き込んでただろうが」
    「もしかして宮殿燃やした時のことか? ありゃ不可抗力だろ」

     そう言ってビーマを睨みつける。微かにあいつが身動ぎしたように見えて、それにどんどん腹が立って来ていた。

    「それともあの間抜けなユディシュティラの野郎が賭博で国も民も何もかも賭けちまった時か? あの時のお前らは傑作だったなあ! 特にあの女まで賭けたのは――」
    「てめぇ!」

     苛立ちに任せて口はどんどん回る。俺の言葉に激昂したビーマが胸ぐらを掴みかけようとした時のことだった。

    「ハッ! 待ても出来ねぇのかよ牛野郎!」

     ビタリと、奴の動きが止まる。

    「何もしてない相手も潰す、それが正しき英雄達パーンダヴァの姿か? ユディシュティラが聞いたら悲、し、む――」

     ふと目をやると、俺に腕を伸ばしかけた、余りにも不自然な体勢でビーマは止まっていた。

    「は?」

     俺も、ビーマも、何が起きたのか分からずに呆然とする。暫くそうやって互いに停止した後、ビーマがぶるぶると震え出した。

    「え? は? おい、どうした――」
    「……――ぇのかよ」
    「は?」

    「……待て、してるだろ……。褒め、ねぇのかよ……」

     何を言っているんだこいつは?
     
     褒める? 「待て」してる? 一体何をほざいているのか。

     ――ビーマの野郎は絶対Subだろ。

     頭にこびり付いていた、弟のその言葉が甦る。
     まさか、本当に? そんな、嘘だ、ありえない!

     我が兄ドゥリーヨダナの宿敵が、Subであるなど誰が認めようか!

    「……なぁ」

     荒れ狂う俺の脳の中、不安げな奴の声が届いた。
     知らず手で覆っていた顔を上げ、声の元を見る。

     奴が、あのビーマセーナが。迷子になった子供のように、叱られる前の幼子のように、普段であれば真っ直ぐにこちらを見据える瞳を揺らしている。
     不安気で、健気で、いたいけで。そんな姿が、なんだか弟達と重なってしまった。

     ゆっくりと、少しずつ、微かに震える右手を奴の頭に伸ばす。普段であれば指先を噛みちぎられるに違いないと暴食ぶりを馬鹿にして、決して触れようともしないであろう頬に触れる。
     その続きを促すように、奴が――ビーマが頭を少し下げる。
     恐る恐る動かしていた指先から、やがて掌全体でゆるりとビーマの頬を撫でる。親指が眦に届いたその時、ビーマは静かに目を閉じた。

     体の震えはとうに止まっている。

     半歩、ビーマに近づいた。だってその方が頭を撫でやすい。伸ばした手は耳をくすぐり、たやすく頭頂部にまで届いた。――ああ、やっぱり近づいた方が撫でやすいな。
     奔放に跳ねているのを頑張って整えたのだろう髪を、崩してしまわぬように優しく、それでも掌の温もりが伝わるような力加減で撫でていく。二回、三回……もう何回か撫でた時、その言葉が口からこぼれていた。

    「ああ、偉いな」

     ぴくりと、身動ぎしたビーマが顔を上げる。その顔は普段見るような剣呑さは嘘のように緩んでいて、心地よさそうに微笑んでいて。その満たされたような様子に、こちらも胸に何か満ちるような気がして、ああそう言えば、酷かった頭痛はいつの間にか――「ドゥフシャーサナー!」
    「ドゥフシャーサナーぁ! ドゥフシャーサナ兄さぁーん! どぉーこぉー!」

     静かな廊下に弟の声が響く。あれはヴィラジャスの声だ。一体何の用だろうか――そうやって、別のことに意識をやったその瞬間。今の状況の珍妙さにようやく気がついた。
     風切り音が鳴りそうな程の速度で伸ばしていた手を引き、半歩下がる。これで元通りだ。ビーマの野郎が何処か名残惜しそうな顔をしているのは視界には入らなかった。入れなかった。
     奴の気の抜けた間抜け面に軽く鼻を鳴らし、踵を返して声のした方に向かう。体は朝の重さが嘘のように軽かった。気分もかなり落ち着いている。それどころかまるで兄に褒められた時のような上向いた感じだ。それは先程の、奴とのアレのせいであると認めるしかない。本当に、本当の本当の本当に! 認めたくないことであるが!

     ……あんな、ビーマなんかと、何の間違いかプレイ紛いのことをしてしまうなんて。しかもそれが、あんな少しのことでも滅茶苦茶に効くぐらいに奴と相性が良いとわかってしまっただなんて!

     全くもって、認めたくないものだ!
     
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