セキは今日だけで何度目になるのか分からない溜息をつく。長になって以来、否、ある意味ではこの世に生を受けて以来の難問に行き当たってしまった。
胡座をかいた腿の上に片肘をつき、手の甲に頬を乗せる。集落の中では薄々気づいていた者もいるようだが、セキとしてはあまりにも唐突であった。まさかこれまでずっと弟として接してきていたツバキが、自身と異なる性別――――つまりは女性であるとは微塵にも思っていなかった。
引っ込み思案であった頃からセキにだけは懐いていて、たとえ切り立った崖だろうと、普通に歩くのが困難な沼地だろうと、構わずついてきていた。自分では戦力にならないと分かっていながら、一日でも早く敬愛するアニキに追いつこうとしていたし、セキの方もそれを喜んでいた。
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