バレないようにしたつもりなのに やっぱ、敵わねぇな。俺は全力で足音を殺して全力で息も止めて、そんで絶対に起こさねぇように布団をめくったつもりだったのに。
円城寺さんがそっと寝返りを打った。そうだ、しかも死角から近付いたつもりだったんだぜ。
さすが円城寺さんだ。
「……タケル? おやすみ」
薄く目を開いて、円城寺さんは囁いた。円城寺さんの、柔らかくて低い声。それに柔らかい笑顔……その表情、好きだ。俺の方を向いている。
「なんで俺だってわかったんだ?」
「さあ……なんでだろうな?」
半分夢の中みてーな声で円城寺さんが答える。俺も小声で喋ってる。円城寺さんが完全に目、覚ましたわけじゃないのはわかってる。騒がしくして、これ以上睡眠の邪魔をしたくはない。
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