土に染みた血の跡、掘り返された畑と周囲にまき散らされた野菜屑、建物の外壁に残された爪痕。まだ発生から幾何も経っていない生々しい惨状に、思わず顔を顰めた。
カブルーが自然迷宮から出てきたという魔物に襲われた村を訪問することになったのは、偶然のことだ。
隣国へ公務の一環で訪れた際、会合の途中で首長へ連絡が入ったことで場は緊迫した。
幸いにも魔物は討伐され死者は出なかったというが、早急に迷宮の閉鎖について検討しなければならないだろう。
カブルーはこの状況では今回の議題に対する結論は先延ばしになるだろう、と考え帰路の道筋について考えていた。
今回襲われた村は行き道に通った場所の近くにある。安全を取って帰りはその道を避けた方がいいだろう。
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