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    白 米

    @oh_05riceball

    限界オタクの妄言

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    白 米

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    Twitterに載せたものを本当にほんの少しだけ修正しました。すごくくどい描写になってしまったので、Twitterに載せはしましたがボツです……。

    #エイムズ兄弟
    #レイフィン
    rayFin
    #兄弟逆転if

    幸せの形晴れ渡った空の下に広がる神覚者授与式会場。観客席を埋めつくした者達の喧騒が、きらびやかで厳かな雰囲気に包まれている。
    「それでは今年度の神覚者授与式を執り行います」
    司会がそう宣言すると、一瞬、観衆のざわめきが収まった。興奮と期待が混ざりあう空気の中、一人の初老の男が歩み出る。魔法局副局長、ブレス・ミニスターだ。ここにいる全員が、その男の告げる言葉を今か今かと待ちわびていた。
    「今年度の神覚者は試験と課外活動の結果から、統合的に評価し厳正に審査した。その結果……」
    皆が固唾を飲み見守る。会場が息苦しいほどに静かになった。

    「レイン・エイムズを選出する!」

    一瞬のどよめきのあと、わっと歓声が轟く。
    「おい、史上最年少じゃないか……!」
    「これは歴史に残るぞ」

    「レイン・エイムズ、前へ」
    拍手の嵐の中、靴音を立てながら一段一段噛み締めるようしてに登る。やっとだ。やっと、この時がきた。オレはこの世界を変えるため、兄さんのような優しい人が救われる世界を作るために神覚者を目指した。

    「神に選ばれし者の証として『戦の神杖』の称号を与える。そして今後、魔法局に入局し魔法道具管理局局長を担ってもらうこととする。また、神覚者の特権として……」
    男の言葉を聞きながら、拳を強く握り、昂りを抑えた。これから大変だろう。学業と神覚者としての仕事の両立の多忙さは、想像が及びもつかない。だがそれでいいのだ。『世界を変える』なんてことは生半可な覚悟ではできない。オレは覚悟を決めた。特権も名誉も何もいらない。そんなもののためになったのでは無い。悪い奴も面倒な事も全部オレに任せればいい。──兄さんは優しい世界で綺麗なものだけ見ていればいいんだ。



    授与式が終わり一度寮に戻った。自室の前に行くと、オレが戻るのを待っていたようだ、見慣れた面子が祝福の言葉を投げかける。
    「レインくんおめでとう。これお祝いのシュークリーム」
    「ふん、努力は認める。来年こそは俺がなってやる」
    「おいスカシピアス!祝いの言葉くらい素直に言えよ……てか来年なるの俺だし」
    「お前も大概だろ」
    相変わらずうるさい奴らだ。だが、好奇の目に晒された後では、それが心地よかった。会場の騒々しさとは違う、安心した空気のせいか、張り詰めていた気が少し緩まる。
    「レインくん、おめでとうございます。……あと」
    ランスとドットを押し退け、部屋の扉を開けながらレモンが言った。

    「──レインくんに会いたい、という人が来ているのですが……」

    その姿を見て、思わず目を見開いた。
    「──兄貴……」

    「私たちはこれでお暇しますね。ほらマッシュくんたち!行きますよ」
    そう言って彼らは去っていった。部屋にはオレと兄さんの二人だけになる。部屋は静まり返っていた。
    どうして。何をしにきたのだろうか。驚きのあまり、声がでない。オレが何かを言う前に、先に兄さんが口を開いた。
    「レイン、おめでとう。神覚者になったんだね。レインはすごく強いもの。誇らしいことだよ。よく頑張ったね」
    「……あ、ありがとう」

    「オレは兄さんのために、兄さんが幸せに過ごせる世界にするために、神覚者になったんだ」そう、言おうと思った。
    「──オレは……」
    すんでのところで言葉を止めた。……そんな大層なことを言う資格はあるのだろうか。まだ何も成し遂げていないオレが?「兄さんのために」なんて。



    あれはいつだったか。高等部に上がって少し経った頃だ。段々と兄さんと接する機会が減っていった。忙しいから、とかそういうわけではないことはすぐに気がついてしまった。あぁ、オレは避けられているんだ。もう兄さんにとってオレは必要では無いのかもしれない。それに、神覚者を目指すのだから、身内である兄さんにも危険が及ぶかもしれない。そんな言い訳をした。その日からだ。オレたちが関わらなくなったのは。



    「きっと、レインは僕がいなくても生きていける。幸せになれるよ。あんな素敵な友達も居て、強くって。それに優しいんだから」
    そう言って笑った。
    やめてくれ。そんなこと言わないでくれ。オレは兄さんがいるから幸せなんだ。兄さんがいれば、兄さんが幸せなら、他に何もいらない。
    「兄貴、オレはっ……!」
    ……なんて言えばいい?オレはどうしたらいい?「オレがあなたを幸せにする」なんて、言えない。まだ、言ってはいけない。

    「じゃあもう行くね。きっとこれから忙しくなるでしょ?それに、友達もお祝いに来てくれると思うから邪魔になるだろうし。」
    ドアノブに手をかけた。行ってしまう。そう思った瞬間、反射的にローブの袖口を握りしめて引き止めた。なんだか、もう二度と会えない、そんな気がしたのだ。今ここで言わなければ、一生その機会はない。そんな予感が。
    「……レイン?」
    「オレは、強くなんてない。まだ全然だめだ。これじゃ、こんなんじゃ、兄さんのことなんて守れない」
    「どうしたの?」
    兄さんは少し驚いた様子でこちらを振り返った。
    顔を見れなくて、下を向いたまま言った。言葉一つ紡ぐ度に息が詰まる。まるで首を絞められたようだ。声が上手くでない。じわじわと目に涙が溜まる。視界が波のように揺らいだ。──だめだ。
    「……オレは、兄さんがいたから幸せだったんだ。昔も、今だって。『僕がいなくても』なんて、言わないで」
    一粒、涙が零れ落ちる。堪えていたものが溢れ出すように、もう止まらなかった。静かな部屋に自分の嗚咽だけが響いていた。
    「レイン」
    幼い頃、泣いていた自分を慰めてくれたときと同じ優しい声。
    「ごめんね。僕は……」

    「僕はレインの傍には居られないよ」

    困った様に笑う。そんな顔させたかった訳じゃないのに。
    「なん、で」
    「出来の悪い僕なんかと一緒にいたらレインの顔に泥を塗ることになっちゃうよ。レインがせっかく努力してここまで頑張ってきたのに、そんなのもったいない。僕はレインの傍にいる資格なんてない──」

    「うるさい」
    兄さんはオレの気持ちを何もわかっていない。でもオレもきっと、兄さんの気持ちなんて分かっていないだろう。でも、それでもこれだけは言わないと。
    「オレは兄さんと幸せになりたいんだなんで分かってくれないんだよ……。兄さんが笑って過ごせる世界を作るから、必ず。だから……」

    「傍にいてくれよ……」

    堰を切ったよう言葉が溢れ出した。あぁ、言わなければ良かった。また、困らせてしまう。そう思いながら俯いて立ち尽くした。
    ふと、兄さんがこちらへ歩み寄り、オレを抱きしめた。宥めるように優しく背中を撫でられる。そして兄さんはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
    「僕が、レインの傍にいてもいいの……?」
    「あぁ」
    「レインが何か言われちゃうかもしれないよ」「そんな奴ら、二度と口をきけないようにしてやる」
    「あはは。ちょっと、神覚者様でしょ?だめだよ、そんなこと」
    ゆっくりと顔をあげて、兄さんのことを見た。息を飲んだ。笑っていたんだ。その大きな目を潤ませながら。兄さんの目から、ゆっくりと頬を伝い、涙が落ちていく。
    綺麗だった。笑った顔も、泣いている顔も。そのどれもが一等特別で、尊いものだ。
    「今まで寂しい思いさせてごめんね。でも、もう少し頼ってもいいんだよ。一人で背負い込まないでほしいな。……兄弟なんだからさ」
    「あぁ、わかった」

    今度はオレの方から抱きしめた。壊れ物を扱うように、丁寧に。もう二度と、離さないように。



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