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    コンソメ

    @potesaramentai

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    コンソメ

    ☆こそフォロ

    美大パロ

    卒制が燃えた(仮)「何やねん、これは」

    ひよ里は消し炭の前で立ちすくんだ。ここ半年の作業の成果が、真っ黒焦げの残骸と化していたのである。
    これがただの課題であればまだなんとか正気を保てたのかもしれないが、燃えたのはよりにもよって大学4年間の集大成・卒業制作。
    ゼミの講師に助言を貰いながら試行錯誤の日々を重ねたこの半年。何度もやり直しをくらったデザインがやっと確定し、方眼紙に慎重に図面を描き、遠く離れた新宿東急ハンズや果ては新木場の木材売り場まで材料を調達し、来る日も来る日も工房に籠って木材をカットし、防塵マスクを被りベルトサンダーで木屑を撒き散らしながら形を整え、就職活動も後回しに寝る間も惜しんで打ち込んできた。

    その結果がこれである。

    図面上ではうまく稼働するかわからない部分は根気強く試作品を作り、やっとほどよい形を探り当てた。比較的余裕を持って進めることができ、あとはやすりがけと塗装だけという段階まで来ていたのに。

    どうか何かの間違いであってくれ。
    ①ウチの作品は誰かが別の場所に移動している
    ②代わりここには違うモノが置かれていて、この炭はその残骸なんやとあまりに望み薄な思考を巡らせていると、近くにいた同学科のクラスメイトが声をかけてくる。

    「昨日の夕方、一年生がすぐそこでバーベキューしてたんだって。それで、終わった後花火したらウォーカーに燃え移っちゃったみたいで……」

    聞けば下級生が悪ノリで放った大量のねずみ花火が原因らしい。幸い学部棟や工房にまで火が及ぶことはなかったようだが、屋外に放置されていたひよ里の作品がピンポイントで燃えてしまったのだと。
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    作者からのリプライ

    コンソメ

    かきかけ一織結婚式に思うところのあるひよ里の話
    オシャレは足下から猛暑を越えて気候も穏やかなものとなり、そろそろ秋へと差し掛かる九月下旬。空は晴れ晴れとして青かった。地上よりも少しだけその上空に近い赤屋根の上では荘厳な鐘の音がぐわんぐわんと鳴り響く。くぐもって煩いその音に、遠巻きに式の様子を見下ろしていたひよ里は顔を顰める。
    皆から祝福の花の雨を浴びせられ、時にはヤジを飛ばされている、この式の主役である一組の男女。純白のドレスに身を包んだ栗髪の女が頬を赤らめ必死に涙を堪えているのを、呆れたように、けれど愛おしそうに口元を緩めて宥めるタキシードの青年はかつてボコボコにしごき倒したオレンジ頭。アイツ、タキシード似合わへんな。

    花嫁はゆるく波打たせたボリュームのある髪を結い上げることなくそのままに、サイドの毛のみを華やかに編み込んだハーフアップにしていた。トレードマークである柔らかい色の綺麗な長い髪が、ドレスの白によく映えている。豊満な胸元を何やら細やかな刺繍が入っているのであろう布地が品よく隠し、けれど布に覆われてなおそのスタイルの良さは一目瞭然であった。女性らしさの象徴である膨らみのすぐ下はキュッと締まって、しかし腰から足下にかけてふんだんなレースがふわりと広がる。それはもう、完璧な曲線であった。体型に恵まれたこの女は白無垢よりも断然ドレスが似合うのだろうなと、そんな誰しもにわかりきっていることを思う。
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