雨(うわ、まじか……)
電車の窓に映った俺の顔が不機嫌なときの凛みたいになっていた。つまりは、ものすごく渋い顔。そこそこ混雑している車内は外の天気に気づいた瞬間、湿度を増した気がした。
最寄り駅まではあと2,3駅。だけれど降り始めた雨は勢いを増すばかりでやむ気配はない。あと1時間、いや30分でも待ってくれれば良かったのに。同じ電車にとんでもない雨男が乗ってるに違いない。
(凛……その辺にいたりしないかな)
確か夕方には帰ると言っていた。もし傘を持っていて同じタイミングで帰るのなら入れてもらおう。そんなことを考えながら通話アプリを開いて文字を打ち込む。『いまどこ?』———返事は期待していないのですぐに閉じて、窓の外に目を戻した。
1946