手作りハンバーグ攻防戦 口を真一文字に結んだ凛が黙々と包丁を動かしている。手元の玉ねぎが粉々に粉砕されていくのを戦々恐々と見つめていた俺が「なんか手伝う?」と声をかけても返事がない。それもそのはず、俺はどこかわからない凛の地雷を踏んでしまったらしい。朝早く出て、夕方帰ってきたらこうだった。『恋人』が夕飯を手作りしてくれているシチュエーションなんて喜ぶ以外の何物でもないはずなのに、主語が『様子のおかしい凛』になるだけで印象は正反対になる。
わからないのだから謝りようがない。とりあえず謝っとけ精神が逆効果だと言うことは長い付き合いから学んでいた。だけれど、とにかくこの沈黙に耐えられなくて、俺は恐る恐る口を開いた。
「あの、夕飯は?」
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