愛憎と救済のぺトリコール序章
――戻っておいで、レイン。
帰らねぇよ
――全てが詰まった黄昏の庭園へ。
全てを失ったクソな邸宅になんて。
――醜悪と慈愛を教えてくれたあの庭へ。
裏切りと残酷を刻みやがったあの場所に。
――暗闇の間から覗く仄かな灯のある花園へ。
冷たい雨が絶え間なく降り注ぐ荒地に。
――血塗れた戦場から、早く帰って来て。
俺を認めてくれた場所から、絶対に離れない。
私 は 貴 方 を 待 っ て い る 。
俺 は お 前 を ぶ っ こ ろ す 。
嫉妬と愛憎が滲む館で、神覚者を襲った悲劇。
「うーん。それは自己満足だと思いますが?」
そして、一人の青年による救済の物語。
1
話に入る前に、レイン・エイムズの過去を語らなければならない。彼は生まれながらで痣が二本と、優秀な魔法使いとして生まれた。二年後に弟も誕生し、明るい未来が待っていたのも束の間、両親が突然この世界を去る。悲劇の幕開けだった。身分が全てのこの世界で、後ろ盾がない自分たちには存在価値などなかった。名誉や美徳がある貴族とは対象に、孤児は自堕落、暴力的、不衛生にも劣る存在として認識された。
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