縋る(脹虎/原作軸) 明日にでも死んでいいと思ってる。頭上でチカチカ、と灯りが点滅する中、未開封の惣菜パンを見つめながらボヤくと隣に座っていた脹相が悲しそうな、それでいて怒ったような、何とも形容し難い表情を浮かべた。
変な男だ。出会って間もないというのに引き留めようとしてくる。
「そんなこと、言うな」
「言うよ、俺は宿儺の器で、大勢の人間を殺したんだ」
「あれは悠仁の意思じゃないだろう」
「それでも…、抑えることが出来なかった」
脹相との戦いの後、気が付けば、見覚えのある場所が跡形も無く破壊されていた。夥しい血の跡。肉の塊。呻き声。奥深くに隠されていた記憶がカメラフィルムのように引っ張り出されていく。
俺が、殺ったんだーー多くの人間を手に掛けたのだと分かった瞬間、酸味だけの胃液が迫り上がってぶちまけた。
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