「ねぇ、レオー。もう帰ろうよー」
「まだ、ダーメ! こっちのぬいぐるみ取ってから!」
「えー、そっち俺のぬいぐるみでしょ? 別にいらないよ。レオのぬいぐるみだけあれば」
「そういうわけにもいかねーの!」
小さな貨幣投入口に百円玉を次々と入れる。
俺は眼の前にあるクレーンゲームから十五分は動けないでいた。それもそのはずで、三千円ほど注ぎ込んでもなかなか凪が取れない。凪を模したぬいぐるみが。ちなみに自分のぬいぐるみは既に取れている。さっき凪が取ってくれた。数百円で。それなのに。
「あーーー、クソッ! ぜんっぜん取れねぇ!!」
「俺がやろうか?」
「それもダメ!」
凪のぬいぐるみは俺の手で取りたい。ガチャガチャとレバーやボタンを操作しながら、凪ぬいを掴む。だが、すぐにアームから落ちて、ころんと転がった。しかも奥の方に。
2802