小さいですよ、お姉ちゃん「お姉ちゃんが個性事故でちっさくなったって本当ですか!?」
「本当ですから入室は静かにしてくださいホークス」
目良さんから『仕事中に朧さんが個性事故で小さくなったんですが、君来れます?』って電話で言われた時は「はぁ!!!!!!!!????????」って事務所で叫んだ。ツクヨミやSKさんたちがめちゃくちゃびっくりしてた。本当にごめんなさい。
とにかく俺は公安にすっ飛んだ。小さいお姉ちゃんを可愛がる……コホン、お姉ちゃんの安否を確認するために。
「ほ、ほんとに小さくなっとる…」
4、5歳くらいか?短い手足にモチモチとした頬、くりんとした目…その色は俺と同じ色で、綺麗な髪の毛の色は黒……うん、小さいお姉ちゃんだ。
「かっ…可愛い〜〜〜〜〜〜ちっちゃいお姉ちゃんばり可愛か〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
「あ、ホークスその朧さん…」
俺は思わずお姉ちゃんを抱き上げた。いやこれはマジで可愛い。
「……けいご、おろして?」
「朧さん、中身は小さくなってないですよ?」
「…あっ、はーい……今下ろしまーす…」
小さい子から顰めっ面されるのなかなか心にくるなぁ……。あれ?目から水が……。
「…ふくのちょいすにあくいをかんじる」
誰だよ犬耳パーカー用意したの。ご丁寧に尻尾も付いてるし。あと短パン。膝小僧出るんだけど?
「可愛い……お姉ちゃん可愛い…」
「おうこら…しゃしんとるな、ぐてい」
「その格好で愚弟とか言われても全然可愛い…」
ダメだ日本語が通じてない。誰か話の通じる人…。
「めらさん…べつのふくないですか…?」
「ありますけど…猫耳パーカーとうさ耳パーカーどれがいいですか?」
「なんでそんなぱーかーしかないんですか!?」
「マスミさんに聞いてください」
「もどったらしばく」
僕は激怒した。必ずやあの同僚に一発喰らわせてやる…!!拳を握って決意すると、ドアがバンッ!!と開かれた。何事!?
「朧が小さくなったと聞いて」
「……(メ゚皿゚)」
「俺言っとらんよ?怒っとるお姉ちゃんも可愛か…」
「…!!こんなに可愛いとは聞いてないぞ…!ホークス。撮った写真を私に送ってくれ」
「いいですよ〜」
誰だよ維さんにチクった奴……。月夜ばかりと思うなよ……!!必ず見つけ出してぶん殴ってやるからな…!!
「…可愛いな……抱っこしてあげようか?」
「あ、ジーニストさんそういうのはお姉ちゃん嫌がって「…おねがいします」お姉ちゃん!?俺の時は下ろしてって言ったやん!!」
「いや…つなぐさんは…とくべつというか……」
「贔屓や贔屓や!!ジーニストさん俺も抱っこさせて「断る」二人とも酷い!!!!」
ワッ…!!と手で顔を覆う啓悟。それ嘘泣きだよね?……嘘泣きだよね?ちょっと不安になってきた。
「…つなぐさん。ちょっとかがんでください。……あ、それぐらいで。…………よしよし」
「ヴッッッッッ!!!お姉ちゃん可愛い…」
「えっこわ……」
頭撫でて慰めたら、心臓抑えて蹲ったよこの子…。怖……。
「あー…とりあえず後は二人に任せます。朧さん、戻るまで特別休暇ということで」
「いつもどるんですかこれ…」
「不明です。では」
目良さんはそう言って出て行った。無情な…泣いちゃうぞ…?
部屋に残されたのは小さい僕と、僕を抱っこしてる維さんと、まだ蹲ってる啓悟。というか早く立ちなよ…いつまで床にいるの…。
啓悟、と声をかけようとしたその時、グゥゥ…という音が静かな部屋に響いた。
「……おなかすきました(´・ω・`)」
「お腹鳴ってしょぼんってしてるお姉ちゃんクソ可愛い…!!」
「つなぐさん、ごはんたべにいきましょう。けいごはおいていきましょう」
「そうだな。安全を期して公安の食堂にしておこうか」
「ちょ…置いてかんで…!」
「朧さん、お疲れ様です!」
「おつかれさま」
「朧お疲れ〜大変だな。仕事は任せろよ〜」
「おつかれさまです。もうしわけありません。ごめいわくおかけします」
「…みんなお姉ちゃんが個性事故合ったこと知っとると?」
「こせいじことか、けがとかしたら、すぐれんらくはいるようになってるよ」
開いた穴をカバーできるようにしないと、大変なことになったりするからね…。
「朧さ〜ん!」
「おつかれさま(●・ω・)/ 」
「キャァァァァ可愛いぃぃぃぃ!!!!」
(ビクッ!Σ(・ω・;|||)
て、手を振られたから振り返しただけなのに…なぜ?
「君、いきなり大きな声を出さないでくれ。朧が驚いただろう」
「あっ…ご、ごめんなさい!ベストジーニストさんに抱っこされてる朧さんが可愛くてつい…」
「い、いえ……ぼくもけいそつでしたので…」
維さんが庇ってくれたけど…そうか…抱っこされてるのが原因か……降りようか………あ、ダメだ。がっちり抱き抱えられてて降りれない。
すいませんでした!!と、頭を下げる職員。また手を振ったら同じことになるからペコッと頭を下げて、食堂へ向かう。後ろで「倒れたぞ!」「こっちもです!!」「た、担架ー!」って騒いでるけど気にしないことにしよう…。
「…けいご、とるのやめ「嫌です」……あっそ」
「ホークス、後で送ってくれ」
「シュア!ベストジーニストさん!」
「きみはいつからさいどきっくになった?」
この弟は…と頭を抱えると、シャッター音が悪化した。怖い。
ようやく食堂に着いた。こんなに道のりが長いと思ったのは初めてだよ…。
「お姉ちゃん何食べる?お子様ランチ?」
「おこるよ?」
「怒ったお姉ちゃんも可愛いかけんよかよ?」
「むー……けいごきらいo( ̄ ^  ̄ o) プイ」
「きっ……!!怒ってもいいけん嫌いはやめてぇぇぇ!!!!」
「………………うっそー(。-∀-) ニヒ♪」
「よ、よかった……」
「(可愛い…)で、何にする?」
「んー…『本日のパスタ』で」
「わかった」
公安の食堂は食券式なので、維さんにボタンを押してもらう。今の僕じゃ届かないしね。今日のパスタは…カルボナーラだ。食堂のパスタ美味しいんだよね。レシピ教えてくれないかな…。
「こんにちは。おねがいします」
「あら!朧ちゃん大変だったわね〜!大丈夫?」
「いまのところ、だいじょうぶです。ほーくすとべすとじーにすとのたすけがあるので」
「あらっ!よかったわね!!朧ちゃんホークスとベストジーニスト大好きだものね!!」
「はい、こころづよいです。…えへへ(*´꒳`*)」
食堂のおばさんとよくそんな話してたからなぁ…ちょっと恥ずかしい…。
「ところで後ろのホークス大丈夫?」
「えっ?」
振り向くとまた啓悟が床に蹲っていた。目立つからやめな?
維さんに啓悟を起こすように頼もうとしたら、維さんは手で顔を覆って天を仰いでいた。
「な、なにごとですか…?」
「…これが……尊いというやつか…」
「………ジーニストさん…最近はエモいとも言いますよ…」
「………っ朧マジエモい…」
「やめてください」
維さんはエモいとか言わん…!啓悟も余計な事教えなくていいから…!
とりあえず食券をおばさんに渡す。後はこの二人をどうにかしないと…。
「ふたりとも…ここだとじゃまになるのではやくいどうを…」
「お姉ちゃんエモ…」
「………」(天仰ぎ)
「あ、だめだこりゃ」
誰か…誰かこの二人より頼りになる人はいないのか…!!
辺りを見渡すと、他の職員より頭一つ分…いや二つ分くらい出た人が目に入る。あ、あれは…!!
「エンデヴァー!」
咄嗟に呼びかけ大きく手を振る。後ろで「手降るお姉ちゃんくっそカワ…!!」とか聞こえたけど知らない。何なら他の職員も胸を抑えて倒れてる人いるけどそれも知らない。周りの職員がどうにかして。
エンデヴァーはこちらに気付いてくれた。人をかき分けてこちらに向かってくる。救世主来た!!これで勝てる!!
「朧か?なんだその姿は」
「こせいじこでちいさくなりました。それより、このふたりをここからいどうさせてください。じゃまになるので」
「…こいつらは何をしている」
「さぁ…はなしかけてもきこえてないみたいで…」
「全く……朧、離れていろ」
維さんの腕の中から降ろしてくれた。何をする気だろう…とエンデヴァーを見上げる。く、首が痛い。
エンデヴァーは拳を握ると、維さんのお腹にズンッと一発いれた。腹パン!?いやそこまでしなくても!?
「うぐっ!!…ゲホッ………エンデヴァー…貴様…」
「意識が戻ったか」
「戻ったか、ではない。もう少し丁寧なやり方があっただろう。デニムをいきなり洗濯機に入れるような雑なことを…ゲボッ」
「つ、つなぐさん!だいじょうぶですか!?」
「ああ…なんとかな……心配をかけてすまない…」
僕の頭を撫でてくれる維さん。安心させようとしているのだろうけど、今は全然効果がないのですが!?ひぇぇ…維さんが…維さんが腹パンされて…どうしようどうしよう…僕に何か……あっ!!
「つなぐさん!」
「どうした?私は大丈夫だ「い、いたいのいたいのとんでいけー!」ウグッッッッ!!」
「わー!!!!ぎゃくこうか!?なんで!?ヽ(゚Д゚;;ヽ)ァタフタ(ノ;;゚Д゚)ノ」
「……何をしとるんだお前たちは…」
「ぼ、ぼくもなにがなんだか……ど、どうしよう…つなぐさんが…」
「……だ、大丈夫だ…ちょっと心肺停止しかけただけだ…」
「それだいじょうぶじゃないやつ!!」
あわわわ…どうしようどうしよう…と右往左往していると、維さんが僕を抱きしめて背中をさすってくれた。
「大丈夫だ。朧のおかげですっかり痛くなくなった」
「ほ、ほんとうですか…?(´;ω;`)」
「(可愛い)本当だ。心配するな」
よ、よかった…ひとまず安心…………………ん?僕が心配されている?立場が逆では…?というかさっきから冷静な判断ができていないような気がする。これ精神も小さくなってるんじゃ…。あ、そういえば
「けいごは…?」
「ホークスならあそこでエンデヴァーの手刀を受けている」
「け、けいごー!!!!」
力ずくで解決するのはやめてくださいエンデヴァー!気持ちはわからなくはないけど!
「ごはんをたべにきただけなのに…つかれた…」
「ぐったりしとるお姉ちゃんも可愛い…じゃなくて、いやーエンデヴァーさんお手数おかけしました!」
「全くだ。揃いも揃って情けない」
「面目ない。ただもう少しマシな解決方法はなかったのか?」
「文句を言うな。あれが一番手っ取り早かった」
「たしかにはやいですけど…。そういえば、エンデヴァーはなぜこうあんに?」
「書類の確認があってな…。済んだから食堂で昼食をとろうと思ったらあの騒動だ」
「それはたいへんもうしわけない…。あ、ちゅうもんはもうされましたか?」
「ああ、済んだ。お前は?あの騒動の中できたのか?」
「かろうじてしょっけんをわたすことができました。だいじょうぶです」
「…ちょっと待って!?なんかスルーしとったけど何でお姉ちゃんエンデヴァーさんの膝の上乗っとるん!?」
維さんと啓悟の向かいにエンデヴァーが座り、そのエンデヴァーの上に僕が乗ってる。意外と快適…。ありがとうございますエンデヴァー…。
「いやなんか…ここがいちばんあんぜんかなって…」
「No.2の膝の上も安全ばい!?」
「No.3の膝の上も安全だと思うが?」
「みのきけんをかんじるので。あといぬだけになんばー『わん』がいい」
フードをかぶって犬の真似をしたら、二人は固まった。あ、あれ?面白くないですか?
もう一度「わん」と犬の真似をしたけど二人はピクリともしなかった。ダメか…僕ギャグのセンスないのかな…。
ちょっとしょんぼりしているとエンデヴァーが頭を撫でてくれた。もしかして慰めてくれてます?
「朧、昼食が来たからもうやめておけ。あとフードも取れ」
「はーい。あ、エンデヴァー、ぼくここにいたらたべづらくないですか?」
「…問題ない。お前は膝から降りたら届くのか?届かないならここにいろ」
「とどかなのでおせわになります」
当たり前だけど、子供用の椅子なんて無いからね…!エンデヴァーの膝の上で食べさせていただこう…!なぜか羨ましそうな二人は無視しよう…僕はお腹が空いたんだ…!
「いただきます。…んーおいしー!」
「可愛い…もうお姉ちゃんが何やっとても可愛か…」
「それもうききあきた…ふたりはごはんたべないの?」
「この光景で胸がいっぱいで…」
「さっきの腹パンがまだ効いていてな」
「も、もういっかいとんでけーします…?」
「いや、(今度こそ心肺停止しそうだから)いい。大丈夫だ」
「待ってくださいとんでけーって何ですか俺やってもらってない」
「あとでねー。いまはごはん」
なんか無性にお腹すいてるんだよね…。ついがっついてしまう。普段なら半分くらい食べたところでキツくなってくるのに、今日は余裕だ。むしろもう少し食べれそうかも…。うーん若いって素晴らしい…。
「ところで朧はいつ元に戻るんだ?」
「それがふめいでして…しばらくこのじょうたいかもしれませんし、ねたらもどるかもしれませんし…」
「もししばらくこの状態なら私が面倒みてあげよう」
「いやいやジーニストさん!ここは弟の俺が面倒みるので大丈夫です!」
「県外のお前が?非合理的だ。ここは私が適任だろう」
「お姉ちゃん向こうに連れてけば問題ないと思いますけどぉ?」
わぁ…不毛な言い争いが始まってる…。別に僕は誰でもいいんだけどなぁ……。あ、食べ終わっちゃった。
「ごちそうさまでしたー」
「…朧、口を拭け」
「はーい」
「……先ほどから思っていたが、精神年齢も幼くなっていないか?」
「それ、ぼくもおもってました。ほんのうてきになってるきがします」
「記憶は大人、精神は子供……可愛くない子供だな」
「しつれいな!ぼくかわいいでしょ!?もういっかいいぬのまねします!?」
「せんでいい。見た目ではなく中身だ。子供のなりで大人と対等に話ができる子供など可愛げがない、という話だ」
「それはたしかに…。え、こどもになりきったほうがいいですか?『おとーさん♡』とかいいましょうか?」
「止めろ…寒気がする」
ちょっと想像してみた。エンデヴァーに「おとーさん♡」って言う僕………………うっわ鳥肌立った。
「ごめんなさいぼくもさむけがしました」
「…絶対言うなよ」
「しんでもいいません…」
「もうお姉ちゃんに決めてもらいましょう!」
「そうだな、その方が公正だ」
「まだいいあらそってたんですか…だれでもいいのに…」
「いーや!これは重要ばい!お姉ちゃん決めて!」
どっちがいい!?と詰め寄る二人。あつが…すごい…。
えー…どっちの世話になるか…?本当にどっちでもいいんだけど……。
「……じゃあエンデヴァーで」
「おい巻き込むな」
「なぜだ朧!?私では駄目なのか!?」
「つなぐさんのおおごえはじめてきいた……いや、へいおんにせいかつしたいので…しゃしんとかとらないひとがいいなぁと…」
「なぜだ…可愛い朧を記録に残したいだけなのに…」
「じゃあしばらく俺もエンデヴァーさんの家に寝泊まりさせて「けいごはできんね?」なんでよ!?」
「おい朧、俺を巻き込むな。この二人から選べ」
「えー…だめですか?」
エンデヴァーに拒否されては仕方ない……。維さんと啓悟、どちらにしようか……。