お久しぶりです、お姉ちゃん 目を開けると知らない天井だった、ってのは二回目かな…。
「次は何の部屋だよ…」
ベッドから降りて部屋を見渡す。ベッドとドアしかない狭い部屋。…どーせドアは開かないんだろうなぁ…。
まぁ念のためとドアノブを捻ると、ガチャと音が鳴り開いた。…………開くんかーい。まぁ開いた方がいいけどさぁ…。
そっと奥を確認すると、可愛いテーブル一つに椅子が三つ、部屋の真ん中に置いてあった。恐る恐る中に入ると、僕が出てきたドアとは別のドアが三つある他に、隅にちょっとしたキッチンがあり、コンロにはやかんが置いてある。……何だこれ。
「……一応、もっと確認しておくか」
火は…着く。水は…出る。戸棚の中には……お菓子とお茶やコーヒー類が、冷蔵庫にはジュースや牛乳などがあった。……お茶会でもしろと?訳がわからない。
むむむ…と考えていると、ドアノブがカチャッと音を立てる。っ誰かいる…!?咄嗟に身構えると中から出てきたのは、緑の髪の小さな女の子だった。
「あ、あいるちゃん……?」
「お姉さん!よかったぁ…気付いたら知らないところだったから不安だったの…お姉さんがいてよかったぁ…」
安心したように笑うあいるちゃんめっちゃ可愛い……じゃない。…どこのどちら様がこの個性かけたか知らないけどあいるちゃん巻き込んだの……ふーん殺す。……違うこれでもない落ち着け僕。でも犯人は殺す。……とりあえずここが何の部屋か把握してさっさと出ないと。
「僕がいた部屋はベッドしかなかったんだけど、あいるちゃんのいた部屋は何か変わったところはあった?」
「なかったと思うよ?もう一回見て、あれ?開かない?」
「…一回出たら戻れない方式?じゃあ重要なのはこの部屋って思っていいのかな…。とりあえず他のドアの確認を、っ!」
別のドアがゆっくり開く。ぴょこっと顔を出したのは猫耳の小さな女の子だった。えっ…マジで…?
「…アーティ?」
「あ、ホーくんのおねいちゃんと……だあれ?」
「…お姉さんこの子は…?」
「えっ待ってください僕もう理解が追いつかない。えーっと、えーっと……と、とりあえず…あいるちゃん、彼女はプロヒーローのアーティ、本名は猫部ちよこさんです。…で、アーティ、彼女はあいるちゃん、雄英生です…」
「プロヒーロー!!は、はじめまして…」
「はじめまして〜よろしくね〜」
「えーっと…アーティはベストジーニストの彼女で、あいるちゃんもベストジーニストの彼女…ん?」
「そ、そうなんですか!?」
「えっそーなの!?」
「僕にはそういう記憶が…。えっ?あいるちゃんとダブルデートみたいなことしたよね?アーティとオフィスでお昼寝しましたよね?」
僕も維さんと付き合ってる……ん?待て本当におかしい。このままだと維さんが三股してる最低野郎になってしまう。
頭を抱えていると、ピーンポーンパーンポーン、とチャイム音が部屋に響き渡る。何だよ今それどこじゃ…。
『おはようございます。こんにちは。こんばんは。個性をかけた者です』
「よし殺す」
「おねいちゃん落ち着こうねぇ」
突然聞こえた天の声に一気に殺意が湧くのをアーティに止められる。
『この部屋の脱出条件を説明…の前に皆様の説明をさせていただきます。まず、皆様はこの世界の人間ではありません。並行世界から連れて来られました』
「「「…えっ?」」」
並行世界…?
『並行世界……パラレルワールド、とは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。Wikipediaより抜粋』
「ウィキ情報なんだ…」
『とある世界から分岐し、並行して、あいるちゃんの世界、ちよこちゃんの世界、朧さんの世界が存在しています。…そして皆様はその世界でベストジーニスト、袴田維と付き合っているという共通点を持っています』
「それが何?というかそういう設定なら僕だけ世界行き来してるよね?」
あいるちゃんとお茶したし、アーティとはお昼寝した記憶が確かにある。あれを幻というにはリアルすぎるぞ…?
『朧さんが私の個性「並行世界」にかかったからです。あなたが個性にかかり、あいるちゃんの世界であいるちゃんと、ちよこちゃんの世界でちよこちゃんと親密になったことで、縁ができたのです。ちなみに関係がおかしくならないようにちょこちょこっと手を加えてます』
「つまり今回のこれは僕のせいってことか………自害しよ」
「おねいちゃん、めっ!!痛いことしちゃ、めっ!!」
「お姉さん大丈夫だから!!落ち着こ?ねっ?」
アーティとあいるちゃんに腕をガシッと掴まれる。……僕のせい…ヒーローやヒーロー生を守るのが僕の務めなのに…僕のせい……ハハ…死にたい…。
『共通点と縁…これらによりこの度、お三方をこの部屋に引っ張り込むことが可能になりました。朧さんにはご協力頂き感謝します。ありがとうございました。……感謝の気持ちを込めまして、この部屋の脱出条件は「朧さんが質問100個答えないと脱出不可」といたしました。ささやかではありますがお楽しみください』
「……そんなの二人は楽しくない「楽しそう!」えっ?「おねいちゃんのこといっぱいわかるの…?」……お二人とも…?」
何でそんなにノリ気なの…??
『お飲み物や軽食を用意しています。ごゆっくりお過ごしください。それでは』
謎の天からの声が消えた瞬間、ドサッと正方形の箱が落ちてきた。……『質問箱』?
「……この中の質問を引いて答えろと?」
「はいはいはい!ぼく引きたい!」
「わ、私も!」
「アッハイ…………とりあえず、お茶でも淹れようか……二人とも何がいい?」
「お姉さんのおまかせで!」
「ぼくもー!」
「うーん…じゃあミルクティーにしようか…二人ともはちみつは平気?」
「「へいきー!!」」
「かっわい……じゃない、少々お待ちください」
……はちみつミルクティー作ろ…うんと美味しいの…。……アーティのはぬるめの方がいいのかな…?
「はい、あいるちゃん」
「お姉さんありがとう!」
「どうぞ、アーティ」
アーティの前にカップを置くが、彼女はジドッ…と僕を見る。…あれ?僕何かやらかした?
「……むー…何でぼくだけヒーロー名なの…?ぼくもお名前で呼ばれたい…」
「えっ、あー……ごめんなさい失念してました。ではちよこさんと「『ちよちゃん』がいい。あと敬語もや」……ちよちゃんごめんね?」
「いいよ!あいるちゃんもぼくのこと『ちよちゃん』って呼んで?」
「うん!ちよちゃん!よろしくね!」
「あーーーー可愛い世界……」
涙出るよ尊すぎて…。……ち、ちよちゃん、か…ちょっと照れるな…。
「お菓子もあったから食べながらやろうか。誰から引く?」
「あいるちゃんからどーぞ!」
「いいの?じゃあ私から……んー…これ!」
質問箱の中から折り畳まれた紙を取り出し、開けていく。
【質問 お名前はなんですか?】
あ「えっそこから…?」
朧「僕てっきりドギツイ質問がくるかと…名前は鷹見朧です。画数が多いのが悩み…」
ち「何画あるの?」
朧「51画。あと姓名判断あんまり結果よろしくないんだよねぇ…」
ちなみに袴田姓になってもよろしくないんだよね…とメモ用紙に正の字を書きながらぼんやり思う。…ま、まだ袴田姓になるとは……………………いやなるだろうな…維さんのことだから…。
朧「…これでまず一個。この程度ならすぐ終わるかな?じゃあ次ちよちゃんどーぞ」
ち「はーい!んしょ……これにする!」
【質問 性別は?】
朧「女です。よく男に間違えられるけど」
ち「おねいちゃんカッコいいもんねぇ」
あ「うんうん!私服もカッコよかった!!」
朧「二人ともありがとう。……僕としてはもっとこう…出るとこ出て欲しかったんだけどねぇ…」
胸とか胸とか胸とか……うぅ…あいるちゃんもちよちゃんもちっちゃ可愛いのに出るとこ出て羨ましい…。
ち「おねいちゃんはもっと規則正しい生活しないとダメよ?ちゃんと寝て?」
朧「善処します…。…二個目っと。次あいるちゃん引いて?」
あ「お姉さんはいいの?」
朧「いいよいいよ。二人で引いちゃって」
あ「んー…じゃあ引くね?……これ!」
【質問 趣味は?】
朧「質問内容がお見合いか?」
あ「確かに…w」
ち「おねいちゃん、ご趣味は〜?」
朧「ちよちゃん…w…趣味は……読書?ベタだけど」
あ「一緒に本屋さん行ったね」
ち「ご本?ぼくも行きたい!」
朧「今度みんなで行こうね。……ちよちゃん本どんなの読むの?」
ち「んとねー恐竜が出てくるやつ!」
朧「ペンネームがちよけらとぷすなだけあるねぇ…。可愛いなぁ…」
あ「ちよけら…?」
ち「ぼくねぇ…アーティスト活動もしてるの。その時のペンネームなんだぁ」
あ「ちよちゃんすごーい!!」
ち「えへへ…///」
ああ〜〜〜〜〜尊い世界や……。拝んどこ…。
朧「……三個目っと」
ち「次ぼくー!えいっ……これ!」
【質問 好きな食べ物は?】
朧「……………維さんが作ったやつならなんでも///」
……二人ともニコニコ笑顔で僕を見ないで…余計照れるから…。
あ「やっぱり他の世界のつなぐくんも料理上手なんだね〜」
ち「ね〜つなぐくんのご飯美味しいもんねぇ」
朧「美味しいよねぇ…お陰で順調に胃が大きくなってきたよ…」
あ「お姉さんもっと食べてね?」
ち「今度ぼくおべんと作ってくるから食べよ?三人で。嫌いなものある?」
朧「ありがと…。何でも食べるから大丈夫。…あ、でもちょっと匂いがキツい食材は苦手かな…ニラとか春菊とか…。頑張れば食べるけど」
ち「えらいえらい…」
ちよちゃんに頭を撫でられた…。嬉しい…。
朧「…四個目。はい、あいるちゃん」
あ「はーい。……これ!」
【質問 性格をひと言で言うと】
朧「んー………………………………真面目?」
あ「はい!優しい!」
ち「はいはい!頑張り屋さん!でも頑張りすぎ!」
朧「ひ、ひと言で、だから……でもありがと」
こ、これ…なかなか恥ずかしいなぁ……。……いつか二人もやって欲しい……いや、辱めたい訳ではないよ?二人のこと知りたいなぁってくらいで…。
朧「ご、五個目おしまい!ちよちゃん引いて!?」
ち「うん!……これにする!」
【質問 最近どのようなことで笑いましたか?】
朧「最近……維さんと啓悟のやりとり見て笑ったかな…」
ち「どんなやりとりしてたの?」
朧「維さんが『維兄さんと呼んでいいぞ?…やっぱり止めろ鳥肌立った』って言って、啓悟が『ぜっっっっっっっっっっっったい呼ばん!!!!!』って…まぁお酒の席の話だけどね?」
あ「何でそんなにやりとりしたの?」
朧「………………あいるちゃんとちよちゃんは知らなくていいことだよ」
あ・ち「「????」」
ごめんねぇ…流石にあの動画の上映会のことは言えないわ…。
朧「次行こう次。あいるちゃん引いて?」
あ「う、うん……じゃあこれ」
【質問 自分を動物に例えると?】
朧「犬」
あ「似合う!!」
ち「似合うねぇ…黒くて大きいわんちゃんみたい」
あ「わかる!ボルゾイとか!」
ち「サルーキとかアイリッシュ・セターとかも似合うねぇ」
ちよちゃん詳しい…。
朧「………まぁ、やましい意味でもあるんだけどねぇ」
ち「?やましいって?」
朧「何でもないよ。はいちよちゃん」
ち「はーい。……これ!」
【質問 生まれ変わったら男と女どっち?】
朧「迷うなぁ………」
あ「迷うんだ…。お姉さんなら『維さんと付き合いたいから女』って言うと思った」
朧「…………………維さんなら、どっちでも愛してくれると思うから……///」
あ(ニコニコ)
ち(ニコニコ)
止めて…止めて照れるから……僕を見ないでくれ…。
朧「……でも二人もそう思わない?維さんなら男でも女でも愛してくれそうじゃない?」
あ・ち「「わかる」」
朧「でしょ?だから日常生活や仕事においてどっちがいいか何だけど…………うーん…女?かな…」
ち「何で?」
朧「…こうやって二人と女子会できるから」
あ「えへへ…///」
ち「女子会楽しいねぇ…///」
照れる二人可愛いなぁ……。………うん、次も女がいい。絶対女がいい。
朧「八個目っと…。あ、二人ともお茶のおかわり淹れようか?」
あ・ち「「お願いしまーす!!」」
朧「お菓子も補充しようねぇ…。二杯目は別の飲み物にする?ココアとか」
ち「ココア好き!」
あ「ココア飲みたい!」
朧「はいはーい。ちょっと待っててね」
ココアはよく練るのがポイントなんだよねぇ…。牛乳牛乳っと…。